幼馴染三人の仲良しパーティと無能の俺
またまた、昨日の夜に思いついたので書いてみました。
「アルト!! そっちに行ったぞ!!」
「はい!! オルバ兄さん!!」
「アルト兄ちゃん!! 支援するわ!!」
今日も仲良し幼馴染三人パーティは、仲良くクエストをこなしている。俺はその光景をボーっと見ていた。
俺は、魔導士のマイン。小遣い稼ぎのつもりで冒険者になったはいいが、ギルマスに頼まれ、あの三馬鹿とパーティを組んでいる。
で、今はゴブリン退治に出ているのだが、俺をいないものとし、三人で今日も依頼をこなす。
「おーい。まだ終わんねぇのか―?」
あんな雑魚の魔物、ちょちょいッと焼けばすぐに殺せるだろうが……。何を手こずっているんだ。
俺が文句を言うと、一番下の妹のエクスが俺を睨んできやがる。
「うるさいわね!! 無能は黙って見てなさいよ!!」
チッ……。手伝おうとしてやったらこれだ。何か話しかけたらすぐに噛みついてきやがる。そんなに邪魔されたくなけりゃ、パーティを抜けさせてくれや。
俺は何度も、このパーティを抜けようとしたが、リーダーで戦士のオルバが俺を引き留めやがる。
なんでも、この国の冒険者ギルドでは、四人パーティでないと、宿屋でのパーティ割引などの特典を得られないからだそうだ。
俺はどんくさい三馬鹿を眺めながら眠たくなる。
暫くすると、ようやく三人が、ゴブリンを退治して帰って来た。
「待たせたな。無能」
「なんで、死んでないの?」
「少しは手伝おうと思わないのかい?」
帰ってきていきなり罵倒かよ。面倒くせぇな。
「うるせぇんだよ。ゴブリン程度で、どれだけ時間がかかってんだよ」
俺は、煙草に火を付けながらオルバを睨みつける。
「お前等、冒険者になってもう一年だろ? いつになったら新人を卒業できるんだ?」
俺が挑発すると三人は、俺を見下し睨みつける。
「お前は、ただ飯ぐらいのくせして……。お前はクビだ!!」
アルトが吠える。
「クビか? ありがてぇ。だがな、お前等これで何回目のクビだ? 俺をクビにしてすぐに泣きついてくる。お前等の頭の中には学習するという機能はついていないのか?」
「うるさいわね!! 無能の分際で!!」
さっきから、こいつらが俺の事を無能無能と言っているが、それは正しい。
俺には、神から与えられた才能とやらは存在しない。
この世界では、ガキの頃に、教会から、自分に合った才能を見出される。アルトは『剣技』、オルバは『防御』、エクスは『治癒』の才能があったらしい。
ちなみに俺は『無能』だった。要するに才能無しだ。とはいえ、無能が珍しいわけではないし、才能というのはスタートが違うだけで、ゴールはどちらにも存在しないのだ。
要するに、努力次第で才能をひっくり返す事なんてさほど珍しくもない。
俺も、自分自身の努力の結果、魔導士の最高峰『超魔導』の称号を得た。こいつらはその事を知らない。
「わかった、わかった。じゃあ、このパーティはここで解散だな。元気でやれよ」
俺はこいつらに背を向けその場を去ろうとしたとき、殺気を感じた。アルトだろう。
アルトの攻撃程度なら、斬られる寸前に少し左に避けるだけで避けられる。
アルトの剣は空を斬った。俺が避けた事でアルトは無様に転ぶ。その背を俺が踏みつける。
「お前等、喧嘩売ってんなら買ってやろうか?」
「待つんだ。マイン。落ち着こう」
また、オルバだ。こいつの頭は宿屋の割引にしか興味がないのか、こうやっていつも二人を止める。
「とりあえず、今日もクエストを終えたから宿屋で休もう」
オルバがそう言うと、アルトはにやけつき、エクスは頬を染めている。
まぁ、いつもの事だ。
「お前等は勝手に宿屋に帰ってろ。俺が冒険者ギルドに報告に行ってくる」
「宿屋に近付くんじゃねぇぞ!!」
アルトが俺に向かって叫んでいる。
「誰が近寄るかボケが」
俺はそう言って、町へと帰る。
冒険者ギルドに入ると、一気に注目される。
「おーおー。マインじゃねぇか。あいつらの子守はどうだ?」
ガラの悪いおっさんが俺に絡んでくる。こんな事はいつもの事だ。
「最悪だね。今も宿屋で三人で盛っている所だろ」
「かかか!! 超魔導のお前があんな雑魚のお守とはな。さっさと見捨てりゃいいのにな」
「ギルマスの命令だ。無下には出来んだろうが……」
俺は受付にゴブリン退治の報告に向かう。
「ミーシャちゃん。クエスト終了手続き頼むよ」
「あ! マインさん!!」
この受付の事は長い付き合いだ。俺が冒険者になりたての頃から、俺の担当をやってくれている。初めて会った時は、まだ十歳くらいだったのに大きくなったものだ。
「ミーシャちゃん。今、何歳だっけか?」
「女性に年齢を聞くなんて、マインさんは相変わらずデリカシーが無いですねぇ。二十二歳ですよ。マインさんと知り合って、もう十年ですね」
「そんなもんだな」
「で? いつ結婚します?」
「ははは。おっさんをからかっちゃいけないぞ」
ミーシャちゃんはクエスト終了の手続きをしながら、いつもの冗談を言い合う。
「…………なぁ…」
ミーシャちゃんは何かを呟いような気がした。
「ミーシャちゃん。どうした?」
「なんでもないですぅー」
そう言って、クエスト終了手続きを終わらせてくれた。
「明日も彼らについて行くんですか?」
「いや、明日はオフだ。おじさんはゆっくり寝かせてもらうよ」
「なら、私も明日休みを取って、遊びに行きますね」といつもの冗談が始まる。
「はいはい。待っているよ~」と、俺はそう言い、あいつらが盛っている宿屋へと向かう。
あいつらの部屋の扉をノックして「明日は俺がオフだから、お前等もゆっくりしておけよ」と言うが、返事はない。相変わらず盛った声が聞こえるだけだ。俺はアホらしくなり、宿屋を後にする。
俺は、自分の拠点にしている宿で、茶をすすっていた。オフの時は何も考えずに、ゆっくりするのが一番だ。
寛いでいると、俺の部屋の扉を激しくノックする奴がいる。無粋な奴だ。
「はいはい。今開ける」
ドアを開けると三馬鹿が立っていた。
「何か用か? 明日はオフだ。ゆっくりしたいのだが?」
「おいマイン。なんでお前が俺達のオフを決めているんだ?」
「そうよ。あんたは無能なんだから、私達の思い通りに動けばいいのよ」
「そうだね。僕がリーダーだ。君には失望したよ」
俺は三馬鹿の言い分を聞きながらため息を吐く。
「リーダーなら、クエストの報告なんかをお前がやれや。まともにリーダーとしての仕事もせずに、ただ三人で盛っているだけの色ボケに、ガタガタ抜かす資格はねぇよ」
俺がそう言うと、オルバは顔を真っ赤にして「もう君はクビだ!!」と憤りながら帰っていく。
「死ね!!」「次に会ったら殺すぞ!!」と残りの二人も俺に悪態をつきながら去っていく。
「お前ら雑魚に殺されるかよ……」
俺は冒険者ギルドに、パーティ離脱手続きを行いに行く。冒険者ギルドでは三馬鹿が受付嬢に怒鳴りつけている。
俺はミーシャちゃんの元に行き、離脱手続きをする。
「はい。これでアインさんはソロ冒険者として登録されました」
「ありがとう」
俺は手続きを終わらせた後、自分の宿屋へと戻ろうとする。が、三馬鹿に止められる。
「何か用か?」
「次にあったら殺すと言ったよなぁ?」
アルトが剣を構える。冒険者ギルド内では抜剣は違法だ。こいつはそんな事も知らんのか?
「あんたの視線がいつもいやらしくて嫌だったのよ」
お前みたいなビッチを、そんな目で見るかよ。おじさんにも選ぶ権利くらいあるわ。
「僕はリーダーなのに、いつも偉そうにしやがって」
リーダーなら、リーダーらしい仕事しろや。
「で? 冒険者ギルド戦うのか?」
「うるさい!! 無能のお前を懲らしめて、恥をかかせてやる!!」
俺は呆れた。こんな雑魚に負けるわけもないが、こいつらは冒険者ギルド内でやっちゃいけない事がある事くらいわかるだろうが……。
俺はため息を吐きつつ、ミーシャちゃんに目で合図する。ミーシャちゃんは俺の言いたい事を理解してくれたらしく、ギルマスの部屋へと入っていく。
アルトが俺に斬りかかる。が遅すぎるので、剣を奪って殴る。一発じゃ逆らうかもしれないから、一瞬で五・六発殴っておく。アルトは無様に気絶する。
エクスが、発狂して杖で殴りかかってくる。僧侶のお前が近接戦してどうする。
俺はエクスに拘束魔法を使い拘束する。離せと喚くので猿轡を付けておく。
最後のオルバは、二人がやられたことで怯えて逃げていく。マジか……。お前リーダーだろうが……。
エクスは泣きそうな面で、逃げるオルバをジッと見ている。が、オルバはギルマスによって捕らえられる。
「アイン。世話かけたな。こいつらにはしっかりお灸をすえておく」
「あぁ。頼むよ」
俺は、精神的に疲れたので、オフの続きを楽しむために宿へと帰った。
それから数カ月たった。
あの三人なのだが、アルトとエクスは心を入れ替えたらしく、コツコツとクエストをこなしているようだ。俺を見て怯えて逃げていくようにはなったが……。それでも、たまにパーティを組み一緒に仕事はしている。依然と比べ、いう事を聞くようになった事で、アルトは少しづつ強くなっているようだ。
残りの一人であるオルバは、あの場から逃げ出そうとした事で、二人から見限られ、今は物乞いになっていると聞いていたのだが、最近、貴族の家に盗みに入り、牢獄に入れられたと聞いた。何をしとるんだ……。
「さて、今日も嫌だろうが、俺とクエストだ。ちゃんという事を聞いて、ちゃんと仕事しろよ」
「「はい」」
今日も俺は、アルトとエクスの二人を連れてクエストへと出発する。
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他にも『クジ引きで選ばれた勇者』https://ncode.syosetu.com/n2043en/を連載しています。
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