雛ちゃんだって構ってほしいんです!
今回は「明日も同じ話をしよう」にでてくる円の姪っ子ちゃんが主人公です。
因みに、円が拓人と同棲する前のお話です。
「ねぇお母さーん、遊んでー。」
「んー?今、咲ちゃんのおむつかえてるからまってね。」
お母さんはせっかくのお正月なのに、妹の咲ちゃんのお世話ばっかり。
咲ちゃんは、ハイハイが得意だけどまだ赤ちゃん。
お世話が必要なのも、お世話が大変なのも私だって知ってるの。
だから、遊んで欲しかったけど1人でお人形と遊んで待ってる。
「テディは、よく食べますねぇ。ハチミツが好きなのね…」
「テディ」と名付けたお気に入りのミルクティー色のくまのぬいぐるみとおままごとを始めてからはや30分。
ひとりで遊ぶの飽きちゃった。
お母さん、もう咲ちゃんのお世話終わったかな?
「ねぇお母さーん。遊んでー。」
「んー?今、咲ちゃんを寝かしつけてるから後でね。それか、円ちゃんに遊んでもらって。」
いつもいつも咲ちゃんのお世話ばっかり。
お正月くらい、私と遊んでくれててもいいじゃん!
「雛ちゃんは、お母さんに遊んでもらいたいの!咲ちゃんばっかりずるい!お母さんも咲ちゃんも大っ嫌い!」
私の声に反応して、ウトウトしていた咲ちゃんが泣き出す。
だけどそんなの知ったこっちゃない。
「雛ちゃん!」
お母さんが叫ぶのを無視して私は部屋を飛び出した。
台所でおせちの準備をしている円ちゃんを見つけた。
円ちゃんはお母さんの妹で10歳も歳が離れてるの。
「拓人さん」って人と高校生の頃から付き合ってるみたい。
あとね、雛ちゃんといっぱい遊んでくれる優しいお姉ちゃんなの!
鍋を混ぜてる円ちゃんのスカートの裾を引っ張る。
「雛ちゃんどうしたの?可愛いお顔が涙でぐしゃぐしゃだよ?」
そう言いながら円ちゃんは私の顔を拭いて、抱っこしてくれた。
「…何まぜまぜしてるの?」
お鍋に入っている黄色いものを指さす。
「これ?雛ちゃんさつまいも好き?」
コクリとうなづく。
「じゃあ、1口食べてみる?お母さんにはナイショだよ?」
そう言って、鍋の中の黄色いもの掬って1口くれた。
「美味しい…」
美味しくって頬が緩む。
「これなあに?」
「これは栗きんとんだよ。」
「…栗きんとんなのにくり入ってないよ?」
円ちゃんは、「栗は後で入れるんだよ〜」と言って栗の甘露煮の瓶を振ってみせた。
栗きんとんを作り終えると、リビングでバラエティを観ていたおばあちゃんにおせち作りをバトンタッチした。
ソファに座るとすっかり元気になった私に円ちゃんは優しくて質問した。
「雛ちゃん、さっきはどうして泣いてたの?」
「だってね…」
私は、お母さんが咲ちゃんのお世話ばっかりで遊んでくれなかったこと、叫んでき部屋から逃げ出したことをぽつりぽつりと話した。
「そっか。雛ちゃんは寂しかったんだね。でも、お母さんは雛ちゃんと遊びたくなくて意地悪言ってるのかな?」
私は首を横に振る。
「じゃあ、お母さんにどうした方がいいかな?」
と優しく聞いてきた。
「ごめんなさいする…」
「雛ちゃんはお姉さんだね。」
と優しく頭を撫でてくれた。
部屋に戻って
「ごめんなさい…」
と謝る。
「咲ちゃんのお世話ばっかりで、あんまり遊んであげられなくてごめんね。」
と言って抱きしめてきた。
円ちゃんが「良かったね」と口パクで言ってきた。
「ありがとう」と口パクで返した。
「雛ちゃん、お母さんとおばあちゃんと円ちゃんがおせち作るの手伝おっか。」
「うん!」
私、今年はもっといいお姉ちゃんになります!