第3話 うむ、早くも俺は、”積んだ”という状態らしいな…。
今回もちっと長いです…
いや、自分が知らないだけで、案外2500字くらいは普通だったりするんですかね…汗
第三話です。
レンガ造りの家が立ち並んだ、寂れている小さな、それでいて暖かみのありそうな街。それが俺のこの街の第一印象だった。
−−−この街が俺の新たなスタートラインなんだ−−−
異世界とか言う言葉に負けてしまわないよう、己の心を震い立たせる。
「俺の異世界生活は、これからだ!」
−−−2時間後。
「へへ、アンちゃん。ちょっと金貸してくんねぇか」
チンピラが周りに3人。
嘘だろ〜〜〜(泣)
街にようやっと着いた俺は、至急解決せねばならない問題と対峙していた。
そう、”水”である。正直4時間近く歩いて来たため喉がカラッカラだった。
…まぁ、街にいる今その問題はなんなく解決できるのだが。それにしても、
「周りの店の看板…日本語でも英語でもないけど、なんか読めるんだが…」
辺りの店には、少なくとも地球では見たことのない文字で書かれた看板だらけだった。異世界という物が現実味を帯びてきて困る。だが、読める。そこら辺はあのクソ女神が気を利かせてくれたのだろうか。
それにしても、この街がライカの街で本当に合ってるのだろうか。地図と方位磁針はきちんと使ったつもりだが、イマイチ釈然としない。街名が書いてある看板を探してしばらく歩いていると、この街の中でも1、2を争う大きな建物を見つけた。あれは−−−”職業安定所”?
「−−−んくッ」
笑いを飲み込んだら変な音が出た。くそっ、街中で笑わせやがって。異世界にもハロワはあんのかよ…。何でハロワが街で一番に大きいんだよ…。
入り口に目を向けると結構若い人達の出入りが多いことに気づく。ふーん、あんな若い人達に職が無いとは、この街の経済はあまり安定してないらしい。まぁ、それは置いといて、何よりも水だ。
「あのー、すいません」
散歩だろうか、街を暇そうに歩いている高齢の男性に後ろから声をかける。
「お兄さん、どうされたのかね?」
振り向いたお爺さんはどことなく姿勢のシャキッとした、鋭い目をした人だった。
「あの、この近くにカフェなんてありませんか?」
「かふえ?」
聞いたことのないものだったのだろうか、力の抜けた表情になる。素っ頓狂な返事を返されるとは思わなかった。ああ、それともカフェなんて言葉、お爺さんはあまり使わないのだろうか。
「あーっと…、コーヒーが飲みたいなぁと思いまして。この近くにそういったお店はありませんか?」
「ほう、ソレだったら酒場に行くとええ。この街の酒場のコーヒーは絶品じゃ!」
ダメだ、この爺さん使えねぇ。俺が酒場なんて行ったら入り口で追い出されるに決まってんだろうが。どうやら聞く相手をミスったようだ。
「大変参考になりました。ありがとうございます」
「気にするでない。そうそう、ワシの名前はピクソンじゃ。マスターに近いうちに飲みに行く、と伝えておいてくれるかの」
「ええ、間違いなく(無理でしょうけど)!」
ピクソンさんにお礼を言って別れる。いや、根は優しい人なんだろうな…。ちょっと馬鹿だけど。
先程のミスを踏まえて、今度は若い子連れの女性に声をかけてみる。
「すいません、コーヒーが飲める所を探しているんですが…」
「ああ、酒場を探しているのね。それだったらこの道をしばらく真っ直ぐ進んで右手にあるのがそうよ」
…ああ、分かった。これはアレだ。俺が未成年だと認識されていないようだ。いや、別に俺が老けているとか言うわけでは決してない。…そうじゃないんだよ?
この街には地球で言う、欧米系の顔立ちの人が多く見受けられる。顔立ちがアジア系の俺の年齢が把握できていないのかもしれない。
「はぁ、すいません。実は僕、こう見えて18歳なんですが…」
「?そうね?そのくらいに見えるけど?」
困り顔の奥さん。いやいや、未成年に酒進めんなよ…。
「ママー、この人お酒飲めないから言い訳してるんだよ!」
「え?」
連れられていた子供が突然、そんなことを言い出した。はぁ、確かに飲めないけど言い訳とまでは…。
「何言ってるの、15歳になったら皆、お酒を飲むものなのよ。この間、お兄ちゃんも飲んでいたでしょう?」
−−−強烈な違和感。
あ…れ…。そうか…。そう言えばここって地球とちゃうやないの…。さっきのお爺さんもこの人も、皆正しいことを言っていたのか。
「…ありがとうございます。とてもとても参考になりました…」
奥さんにお礼を言って、言われた通りに道を真っ直ぐ歩きながら考える。
−−−そうか、ここって日本じゃないのか。地球にだってお酒やタバコに年齢制限がない国なんて沢山あるのに。いかに自分の常識が脆いものであるかが分かった。
しばらくすると右手の店の看板に”酒屋”の文字が。うわぁ…、合法だと分かっていても、入るのって緊張するものなんだな…。
♪カラン コロン♪
「いらっしゃい、お好きな席にどうぞ」
扉を開けると、意外や意外。寂れた外装とかけ離れた、イギリスにありそうな感じのお洒落なバーの内装をしていた。歳は−−−40程だろうか、柔らかい雰囲気のマスターに出迎えられる。
「ホットコーヒーを一つ」
「かしこまりました」
窓際のカウンター席に着き、マスターに注文を入れる。
俺はボーッと外を眺めながら、これからの生活について考えていた。
第1に、大前提として、魔王ってどこにいるのだろう。いや待て、仮に見つけたとして倒す手立てがあるのだろうか。人間を上回る種族、”魔族”の元締めだぞ。恐らくだが、山○組の元締めよりは強いと考えられる。
山○組の元締め>俺→魔王>山○組の元締め。
∴魔王>俺
…おおぅ、サルでも理解できる三段論法の完成である。実際は>のマークが10個や20個程付くのだろうが。…それはまぁ、いづれ考えるとしよう。こうやって問題を先延ばしする力を考慮すると、ワンチャン俺にも日本の政治家くらいのポテンシャルは秘めてるのかもしれない。いや、多分無い。絶対無いな。
−−−はぁ…、思わず現実逃避しちゃったよ。話を戻そう。
第2に、寝床がない。まぁ、2晩くらいは野宿で凌ぐ覚悟はしておこう。家があるって凄いことだったんだなぁ…。
第3に、仕事が無い。これから食い繋いでいかなきゃいけないし、俺の手持ちを無駄に使うことも許されない。
…恐らくだが、制服にピーコート、この服装からして、俺の格好は死んだ日のままであると推測できる。何故かケータイが方位磁針に、財布に入っていたはずのPASMOが地図に変わっていたのはよく分からないが。とすると、財布の中に5000円程度は入っているだろう。これからの一日の消費を考えると後どの程度は−−−うん?5000”円”?
−−−あっ、しまっt−−−
「お待たせ致しました。当店自慢のブレンドコーヒーでございます」
「わ、わぁー…、とってもおいしそーだなー…」
−−−俺、この世界のお金、持ってないじゃん…。orz
ここまで女っ気−−−ZERO−−−♪
次回辺りには出せるといいな…(トオイメ)