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眠りなさい

作者: 葵枝燕

 こんにちは、葵枝燕でございます。

 今回の作品は、ホラー風味となっております。本当は、公式企画[夏のホラー2016]に出そうと思っていたのですが、字数が全然足りませんでした。「それならば短編集でどうにか!」と思い直しましたが、それでも字数が足りませんでした。よって、短編として出すことといたします。

 少しでも、こわがってもらえるといいな……。

 それでは、どうぞご覧くださいませ。

「眠れないのね」

と、彼女が言った。左手の小指にだけ、細かいラメの入ったフレンチマニキュアをしている。他の爪は無防備なままだった。が、それでも充分に綺麗な爪だった。

「何か、悩みでもあるのかしら」

 独白のように彼女が言う。その口調は、私に向かって問うているわけではないようだった。ただ当たり前の事実を、淡々と口に出しているに過ぎない。

「後悔、しているのね」

 そうなのだろうか。私は、何かを悔いているのだろうか。

 眠れないのは、その所為(せい)か。

「後悔なんて、するだけ無駄」

 彼女が、淡々と言葉を紡ぐ。

「一度きりだから、やりたいようにやる」

 彼女の爪のマニキュアが光る。

「――あなたが、そう言ったのよ」

 どこか恨みのこもった声で、彼女は言う。私を見る彼女の(そう)(ぼう)は、深い黒だった。そこには何もない。声と裏腹に、恨みなど欠片も見られなかったのだ。

 なのに、私は恐怖した。彼女を恐ろしいと、強く感じた。

「だから」

 恨みの中に、悲哀が滲む。

「私を殺したのでしょう?」

 疑問形だったが、そこにはそれを確信している響きがあった。

「あなたはただ、楽しみたかった」

「違う!!」

 やっと発した言葉。そして、やっと思い出したこと。

 あれは、一体いつのことだっただろうか。

「そうね。本当は、私を見ていたかったのよね」

 恨みが薄れ、悲哀が濃くなる。

「でも、苦しかったのよ」

 暑い陽射しに肌を焼かれている気がした。すぐに、有り得ないと思った。今は、夜のはずなのに。太陽なんて、あるはずがないのに。

 これは、幻? それとも、あのときの記憶?

「終わらせてあげるわ」

 彼女が、私を抱き上げる。ひんやりと冷たく、少しだけ濡れていた。

「眠りなさい」

 彼女に抱かれていると、なぜだか眠くなってきた。今まで、どうやっても眠れなかったのに。

「永遠に、ね」

 え? エイエン……?

 問い返すことも、完全に理解することも、何一つできなかった。

 ただ、身体中が濡れて、息ができない場所に沈められたことだけは理解した。

 必死に身を(よじ)った。けれど、彼女の手から逃れることはできなかった。


* * * * *


 翌朝。その家に住む人々が見たのは、庭にある池の(かたわ)らでずぶ濡れになって死んでいる飼い猫の姿だった。そして、猫の顔近くには、一匹の金魚の死骸があった。その金魚には、左の胸びれの隅に白い縁取りがあった。

 短編『眠りなさい』、読んでいただきありがとうございました。

 さて、と。さっそく、設定などについて語っていこうと思います。

 登場人物(?)は、「彼女」=金魚(全体的に赤色で、左の胸びれに一部白い縁取りがある)、「私」=猫――です。

 数日前に「彼女」を殺めてしまった「私」が、人間になってやってきた「彼女」に命を奪われてしまう――そんな感じですね、ざっくりいえば。

 でも、「私」は殺したくて「彼女」を殺したわけではないのです。あまりにも「彼女」が美しかったので、近くで見ていたかったのですね。結果、水槽から出された「彼女」は命を落とします。そして「彼女」は、故意にやったことではないにしろ「私」を赦すことはできず、「私」の命を奪っていったのでした。

 「私」には、自分が「彼女」を殺したという確かな罪の意識はありません。それでも、「彼女」にしたことの重さは薄々感じていて、それが「私」を眠りから妨げていたのです。

 と、まあこんな感じの話です。かえってごちゃごちゃになってきたけれども……大まかにわかってくだされば、それでいいですかね。

 余談ですが、この話を書き始めたのは、私が左手の小指に細かいラメのフレンチマニキュアをしていたから、というのが一番の理由です。トップコートしてなかったので、いつの間にか削れていなくなってしまいましたが……。

 ぐだぐだと文を並べた感がすごくしますが、読者の皆々様が楽しんでいただけたなら、それで充分ですね。

 では、読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] な、なんと。 人間ではなかったとは……。
2019/02/06 16:58 退会済み
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