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Rose Red ~赤薔薇の瞳~  作者: 蒼川 沙夜
課外授業編
1/20

プロローグ

「無理!! やっぱ納得いかない!!」


少女の悲鳴にも似た、甲高い声が部屋中に響く。

「お、落ち着くんだメル……」

そう言った人物は、目の前の少女の気迫に圧され気味に言った。年の頃は20代半ばごろ、カナリア色の長い髪を一つに束ねている。

服は真っ白で聖職者のようだ。

女性のような顔立ちをしているが男性で、ここ「聖アールシェイド学園」の最高責任者である。

そして、目の前の少女は灰色のワンピースのような服を着ており、腹部の辺りには大きな十字が描かれている。

これはここの制服だ。

つまり彼女はここの生徒である。

少女は白と紫の縞々の柄をした丸っこい髪飾りでローズピンクの髪を二つに結っているのが特徴的で、瞳の色は男性と同じで青紫色。


現在彼女は立派な作業机に足を掛けて、男性を締め上げている。傍から見たら、少女が最高責任者…つまり校長に掴みかかっている姿は大問題だろう。

しかし、理由がある。


「落ち着けないわよ!!!」

「だから、ゆっくり、落ち着いて話を…ぐるじぃっ、める、じまっでる!! おにいぢゃんじんじゃうがら!!」

襟元を掴みかかられて喉が締まり、おまけにガックガックと揺さぶられている。

慌てて傍で控えていた人物が止めに入る。

「メル様! いえ、メルさん! 落ち着いてください!!」

歳は男性と同じくらいか。眼鏡をかけた女性だ。

ブロンドの長い髪を一つにまとめ上げている。

そして、軍服のような青い制服を身につけている。腰にはレイピア。

「離して、セシリアさん!!」

少女・メルはセシリアと呼んだ女性に瞬時に引きはがされ、その腕の中でもがく。

「だ、だめです! それ以上はフレド様の首が締まってしまいます! どうか、落ち着いてください!!」

「むきぃ~~~っ」

メルは歯を剥きだして甲高く唸る。

「そ、そんなに怒るとは思わなかったよ…」

ゲホゴホ言いながら、男性…フレドは言った。

妹に若干引き気味である。思わず後ずさる。

「怒るわよ!! なんで兄様が勝手に私のパートナーを決めるのよ!!」

メルは吠えた。

それが逆ギレだとわかっていても。

「って言っても、もうほとんど選べる人材は残ってないだろう? それに、彼に対して不満があるとは思えないけど…」

「ええ、能力的にはね!! でも、そういうんじゃないでしょ!! 一生を決めるかもしれない大事なことなのに、私に決定権はないわけ!?」

「って言ってもな~」

約束は約束だし…ぼそりと呟きながらフレドは頬をポリポリと掻く。

「フレド様、メルティア様…お願いですからもう少し声のトーンを落としてください…」

セシリアが懇願するが、二人は…特にメルの方は聞いていなかった。

「もぉぉぉ!!! 兄様のバカバカバカッ」

少女がそう言った瞬間だった。

セシリアがハッと短く息を飲む。

鋭い視線で扉を睨むと、


「誰!?」


誰かの気配を感じ取り、息もつかせぬ速さで扉を開け放った。

風が吹き抜けたかのように、一瞬の出来事だった。

開け放たれた扉の先にいたのはメルと同い年くらいの少年で、ここの制服を着ている。

背中には大剣、右目には黒い大きな眼帯をつけている。

その少年が、唖然とした表情でそこにいるメンツを見た。


「…“にいさま”…? …“メルティア様”…!?」


少年は真っ青な顔をしながら、消え入りそうな声で呟いた。

今、彼はとんでもない事実を知ってしまったのだ。

残りの三人も彼の一言で真っ青になっている。

知られてはならない事実を知られてしまったからだ。



メル=リーマス、聖アールシェイド学園魔祓い師科6年生。

本名はメルティア=アールシェイド。兄はフレディオ=アールシェイド。ここの校長である。

二人はこの国の法王の子で、メルはその素性を隠しながら学校に通っている。


これからメルと、その素性を知ってしまったこの少年との物語が始まる。

まだプロローグですが、ご閲覧ありがとうございます。

あらすじにも記入がありますが、こちらの作品は自作HPで掲載していたものをリメイクしております。


これからどんどん物語が動いていく予定ですので、どうぞ暖かく見守って頂けると幸いです。

ちなみに、いずれ甘甘展開にしていく予定ですので、乞うご期待(笑)

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