水たまり
夏。突発で降った雨がいまさっきあがったばかりだ。さきほどまでのストレスたっぷりの曇りも、泣きはらしたのか今ではまた夏らしい気持ちのいい空に戻っている。
残念なことに私は空のストレス発散をもろに受けて何から何までびしょ濡れだ。八つ当たりされた気分。
とぼとぼ歩いているとアスファルトの上に巨大な水たまりを見つけた。泥で濁ることなく、鏡のような水たまり。
心機一転の空の青さも、水分を大量に吸収して髪から雫を垂らす私もよく映ってた。水たまりの向こう側にも自分がいるのではないかと思うくらいに。
水たまりに飛び込めば、私はするりと抜けて、水たまりの向こう側の自分と交代し、鏡の向こうの世界に行く。
向こうの世界では、どうなってるのだろうか。
右と左が逆なのは確かだ。でもそれ以上は?
おそらく、それ以外は変わらない。右手と左手が同期して、実質的には映ってるものが現実の私と何も変わらないから鏡なんだ。
ロマンが無いけど、関係性を考えてみればそんなものだ。
それでもちょっと飛び込んでみたくなって、でも思いっきりは怖いから、水たまりの淵の水の浅い部分を踏んで進む。
波紋が寄って、鏡ですらなくなった。
そりゃそうだ。
鏡の向こうの世界なんて無く、空はストレスが溜まったのではなく入道雲ができて普通に雨が降って、雨の結果、アスファルトの上だから泥も無く綺麗に水たまりになっただけ。
当然だった。
「あーあー。つまんねーなー。」
どうせずぶ濡れだからとやけになって、最後に思いっきり水たまりの中心に両足で飛び込んであがいた。




