プロローグのエピローグで第一章のプロローグ
(『押し入れ』は問題なく発動したようですね)
「ああ、これで当面の安全は確保できたわけだ。
……それじゃあウルくん、さっきの続き、いややり直しとしよう。ログだけじゃなくてしっかり君の声で聞いてみたいんだ」
(ちょっと無理ですね。男の純情は高いんです)
「もうほとんどウルくんに支払い済みの純血じゃ買えないのかい? ここまで見ておいてまだ買わないなんて言わないよね?」
(重くて下ネタばかり言う人はちょっと)
「もうこれからずっと二人一緒だ。この重さには馴れてもらわないとね。
それにあれだけ人の体の感想を述べておいて、さらに事実上のストーカーであるウルくんでは説得力がない言葉だと思うよ」
(俺の変態は一〇八式までありますんで、その程度でわかった気になられるのはちょっと)
「その全てを知りたいな。私では受け止めきれないのもあるかもしれないが、知ることだけは出来る」
(恥ずかしいセリフ素面では吐いちゃうような人はちょっと)
「ちょっとと言い続けて誤魔化すのも大概恥ずかしいけどね。
でもそんなウルくんも憎からず思えてしまうのは、私も参ってきているということか。
実は「ちょっと」だけだと否定ではないあたり、ウルくんが嘘を好かない人柄なんじゃないか、なんて思ってしまえるほど幸せ思考になっているんだ」
(……あの、本気なんですか? 本気で俺のこと、生き返らせる気でいるんですか? そんなことが可能だと――)
「可否はどうでもいいんだ。今やウルくんは私の家族だ。
帰れるかわからないが、少なくともこのまま向こうに帰ったら一緒ではいられなくなる。この世界だからこそウルくんは死してなお共に在れているんだと思う。
だから帰るなら、絶対にウルくんは生き返らせる」
(だからって、一体どうやって死んだ人間を生き返らせるなんて真似を……)
「それはねウルくん、私の『死霊術』の……、ん? もしかしてこの世界の理や異能で生き返らせたら、向こうに帰った途端術が解ける可能性もあるのか?
向こうでも魔法の概念が実現化出来る補償はない。魔法で生きている状態にするのだとしたら、魔法がない世界では……。
いやそれはダメだ。それじゃ意味がない。
……もう帰るのは止めにした方が無難か?」
(あの、なんかスゴイ不穏な方向へ思考が飛んでませんか?)
「大丈夫だ。問題ない。
予定変更だ。向こうに帰るのは手段が見つかっても、安全確認が出来るまで当分はしない方向でいこうと思う。
家族が心配しているだろうから、手紙などを送ることが出来ればいいのだが」
(いやいやいや、手段見つかったらタマさんは帰った方がいいでしょ? 別にタマさんの家族仲悪いわけじゃないんでしょ?
俺はもうこんなですので、こっちの家族の事は気にしなくてもいいですよ。学校で消えた瞬間を他の生徒も見ているだろうし、今ごろうちの姉達なら異世界召喚ktkrとか騒いでてもおかしくない人達です。俺がこういった状況で生き残れるタイプだとも思っていないでしょうから、タマさんだけ帰っても責めたりしませんて)
「いや駄目だ。帰る場合は絶対に生きて一緒にしか認めない。
なに、私の方は大丈夫だ。消息不明となれば悲しむだろうが、もし手紙でも送れるようになって一筆認めれば納得するだろう。
だが帰る方法はまったく目処がたっていない、あってもいつになるかわからない。であれば、今は帰還を焦るだけ無駄だと考えただけだ。
なによりも、ウルくんという相思相愛の恋人を危険にはさらせないからね。一緒に帰れるようになるまでは、私はあなたと共にいる」
(いや、もう好きだってのは認めますけど、なんかやたらストレートでナチュラルに恋人になってますね)
「気付いたんだよ。手紙、つまり文字のやり取りでも人は恋人同士になれるってことに。
ログだけでも十分気持ちは伝え合ってると見なせるよね? それどころか今認めたよね?」
(……俺、色々早まったかなあ?)