第一章のエピローグで第二章のプロローグ
ログが流れると同時、銀色を秘めて輝く紫の魔法陣が大小無数に展開し、球状に少女の肉体を包み込んだ。
徐々に魔法陣が蠢く球体の内が白い光に満ちていき、側にあった一つの魂と数えることも馬鹿らしくなるような量の魂の塊が取り込まれると、光はさらにさらにと強さを増し、最後に弾け飛ぶ。
そうして魔法陣球体から飛び出してきたのは、滑らかな濃褐色の肌と緑銀に輝く短い髪を持った少女だ。
その姿に先ほどまであった腹部の欠損や、大小様々な傷はどこにもない。
すらりと長い手足と、上を向きながらも張り出た胸部。うっすらと脂肪がのった筋肉の形を覗かせる細くくびれた腹部に、柔らかい丸みを保ちながらも鍛え抜かれているとわかる臀部。
いささか筋肉質ではあるがそこに無骨さや太さはなく、むしろ無駄を削ぎ落とした造形美や機能美に近い細さが見受けられた。
少女としての柔らかく繊細な造形。
狩人としての厳めしく骨太な機能。
その二つを両立させるための究極の妥協点へ挑む様子は、なにも四肢の状態からだけの印象ではない。
真実にも最もその挑戦を印象づけているのは、傷が癒えた少女の顔こそだ。
眉の上と肩口で直線に切りそろえられた、あり得ないような緑銀色の髪。
髪の柵から突き出てやや下を向く、肌と同色のとんがり耳。
なにより、表情のない能面じみたその顔の造作には、人工物めいた美しさが存在していた。
好みの枠を超えた、普及物の為の人工的な美だ。
万人から好かれるために統計を取りその全ての中間を選んだような、作為的な美貌。
それでいて、自然物たろうという柔らかな曲線を描く、頬や唇、まぶたなどのふくらみ。
神の領域たる被造物の先ではない、人が手にした不気味の谷の向こう側、その一端を垣間見るような造形であった。
だがしかし、表情が無いという点が何割増しかで人工物の造形美を強調していたが、その目だけは違っていた。
眉は動かない。
ほとんどの表情筋も動いている気配はない。
だが瞬きのためにまぶたが上下するだけの状態でしかし、ライトグリーンに輝く右の瞳から溢れ出る喜色は不思議と鮮明であり、一種異様なほどに少女が機械ではないことを物語っていた。
そしてそれはさらなる異彩を放つ左の目も、別の意味で同じであった。
右の目と同じか、もしかすればそれ以上の喜色――否、恋慕の情ともいえるものを湛えている左の目。
その左目の本来白いはずの部分は黒く染まり、右と同じであれば緑の虹彩を持つはずの瞳は無数に分裂し、複眼と化して虹色に輝いていた。
異形の左目は確かにタマではなく、ウルを見ていた。




