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※18 出るもの出して寝ればすっきるする系



(まあそんなオチじゃないかなとは思ってましたし、解決方法も考えついてはいるんですから、いいじゃないですか。

 ――あーもう、泣かない泣かない。そんなですと、丸見えのお尻から全部描いてしまいますよ)


 ゼンラーorzポーズで打ちひしがれ涙を流すタマに慰めの追い打ちログを流すと、彼女は片手で尻を隠そうとした。

 が、体を支えていた方の腕に力が入らないのか動作だけで終わってしまい、肘から折れるようにゴロリと体を横にして倒れてしまった。

 結局そのまま白く丸い尻は隠さず、えぐえぐべそべそと泣きながら白く丸い骨塊となった死霊兵スズキをかき抱く。


「――……解決、方、法、あっても……、どうびゃっ、て、見つ、げれば、いいの……? 本当に、この、世界、に……あるかどうがっ、わ゛がらなびのび――」


 ぼろぼろぼろぼろと止め処なく溢れ出る涙を拭いもせずタマは泣き続け、俺はそれ以上の慰めも希望的観測も言うのは躊躇われて、結局彼女が疲れて寝るまで見ていることしかできなかった。


 『仙術・地魂天魄現世乃尸解』は覚えることが出来た。


 だから、一応念の為に鈴木潤一という存在を生き返らせることが出来るかどうか、途中まで魔法を試行することで確認しようとしたのだ。


 死霊兵鎧を解除して、死霊兵スズキの、鈴木潤一の骨だけの状態にして、魔法の対象に出来るかどうか確認しようとしたのだ。


 そして彼女は気付いてしまった。本能に近いところに刻み込まれた異能の使い方と同じように、理解してしまったのだ。


 俺は彼女から聞いただけだが、単純な話、蘇生のために必要な死体の量が足りないのだそうだ。


 必要となるのは、魂と、生き返したい元の生物が持っていた肉体のおよそ二パーセントほどの質量。部位は問わないらしい。

 正直ほっとしているが、どうやら魂に関しては足りなどという感覚や表示は出ていないらしかった。


 後は遺体の質量、二パーセントだけ。


 数字で見れば大した量ではない。

 俺が筋肉も脂肪もないやせ形だったせいもあり、重量にしておよそ1キロとちょっとあればいい計算になる。


 一見、タマが抱きかかえる骨塊があればそのぐらいはありそうな気がしてくる。というか人体を支える根幹である骨であればそれぐらいの重量はあって然るべきな気がする。


 だがあまり知られていないが人骨というのは結構軽いもので、水分を完全に抜くと大体1キロちょっとしか残らないのだ。

 数字だけ見れば、あれ思ったより少ないけどギリいけんじゃね? と思うだろう。

 しかし死霊兵となるとき、鈴木潤一は肉体のほとんどを死霊兵とするために純粋な骨だけの状態にされた。

 肉体の燃えカスである灰や水分はどこかに飛んでいっており、もうどこに存在するのか全くわからない状況だ。

 さらにさらにで、実は死霊兵スズキは光の投げ槍を持った神子との戦いで『防御術・身挺庇護』を使い、骨片の半分近くを吹き飛ばされ、バッドステータスとして欠損の項目が生じたままとなっている。

 欠損。つまりパーツが、骨が本来より足りない状態なのである。


 あのとき最大HPが半分近くになったことから考察して、おそらく総重量のおよそ五〇パーセントを失ったと予想できた。


 こうなると逆に思ってしまう。


 あれ、これもう無理じゃね? と。


 ところがどっこい、あのとき光の槍で飛ばされた骨は消失していない。かもしれないのだ。


 光の槍による追撃を恐れて逃げることを優先したため回収していなかったが、あのとき周辺には骨片が散らばっていたし、弾け飛んだものが壁にめり込んでもいた。つまり吹き飛んだだけで消滅したわけではなかったのである。直撃した部分に関してはダメかもしれないが、爆発によって吹き飛ばされた部分に関しては、回収することが出来ればもしかするかもしれない。


 だとしても城はあの魔法陣による異常事態で消失しただろうし、やっぱ無理じゃね? とも思うが、同時にこうも言えるのだ。


 俺たちが転移したのだから、同じようにあの城の構造物や内容物などもどこかに転移しているのではないだろうか? と。


(まあ、希望的観測ですけど)


 かなり恣意的で都合の良い、本当に希望的な仮定ではある。


 だが、もうそれしかない希望だった。


 祝福系の戦闘不能回復魔法では死者蘇生が叶わないことはとっくのとうに確認済みだ。

 元となったゲームでは一〇本全てのスキルツリーそれぞれにHP回復手段が存在していたが、戦闘不能をその場で回復出来る魔法は祝福系統、もしくはそこからの複合などにしか実装されていなかった。もちろん死者蘇生などはどこにもない。

 さらにこれは『描画』で俺が鈴木潤一の肉体を描いて作成しても同じで、『描画』の制限を考慮して骨塊が纏う魔力を使い描いても、作り出した生きていない肉体は鈴木潤一という元生物とは認識されず、新しく生み出された肉の塊でしかないことも確認済みだ。


 だから散った骨片に賭けるしかないのが現状なのである。


 彼女が絶望するのも無理ないだろう。

 蘇生が可能だと知っていたからここまでこられたのを、いざ可能となったら現在はほぼ不可能になってしまったのだと知ったのだから。


 とはいえ、


「んー――……。踏ん切りついた。

 駄々をこねていても始まらないし、ウルくんの骨を探そうと思う。

 当面の方針としては森の中の調査と探索をしつつ人里に出て、協力者の確保と情報収集と考えているが、どうだろうか?」


 三時間ほど寝てから起きたタマは開口一番でそう宣言した。


 この通り彼女は切り替え早いし、執念深いというかやると言ったら最後までやる人っぽいから、あんまり心配はしてなかったんだよね。


 どれだけ才能があっても、一般人がドン引きするような根性がないと他者に認められるような創作物を作れはしない。なにかの後追いコピー作品ですら、商業で軌道に乗せる量と質を創作するには多大な時間と労力を要する。

 彼女はすでにその経験がある。

 そういった人間は諦めが悪いものだ。例え諦めても別の道筋をたて、目標へと手を伸ばす。そういうものだ。


(いくらなんでもタマさんの身一つで探すのは難しいですからねぇ、どんなかたちにせよ協力者は必要でしょう。効率の良い調査方法とかも考えないといけません)


「うん。さっそくだが、外に出て行動を開始しようか。

 ここでは折角覚えた『遠隔術・魔力走査』を使用できないし、他にいくつか試したいこともある」


 言うなり、抱きしめていた死霊兵の再鎧化を開始した。とはいえ作業は一瞬である。

 いつも通り『死霊術・死霊兵改造』のログが流れると、大きな紫の魔法陣と小さな灰色の魔法陣が生じて黒い渦がタマの目の前に現れ、その中心から骨塊にするために外していた髑髏虫の外骨格や筋繊維がぞろぞろと出て来たと思ったら光って合体、出来上がりである。

 この黒い渦はゲーム中にも存在していた、俗に言うインベントリ、もしくはアイテムボックスの上位互換。時空ツリーを進行させたことで得た『時空・異空間収納』である。


 ゲーム中ではプレイヤーキャラクター全員が最初からインベントリ機能を持った魔法の鞄と呼ばれる道具袋を持っている設定だった。

 もちろん、タマは持っていない。

 これはよくある質量や重量を無視した青ダヌキの上位次元ポケットに似ていたが、持てるアイテムのスタック数には上限が存在しており、上限を増やすこともできたが大量の高額アイテムやゲーム内通貨が必要となる設定で、上昇量も微々たるものだったことから懐に余裕のある高位プレイヤー以外は初期カバンの状態のままであることも多かった。

 それはこの『時空・異空間収納』を、時空ツリーの比較的初期に使用可能となるからでもあった。


 これを取得するだけでコマンドウィンドウにインベントリの項目以外に異空間収納の項目が増え、初期カバンと同じ要領と容量で扱うことが出来るようになるのだ。

 当然のこと、俺も最初からこれはタマには覚えてもらうつもりのスキルであった。ただタマには『押し入れ』が存在していてここに物を置いておくことが出来たので、すぐすぐ必要というわけでもなかったため、取得がこの段階でとなったのである。

 ゲーム中でもこの魔法スキルは数少ないホーム内でも使用できる魔法であり、それは死霊術以外の魔法がほとんど使えないこの『押し入れ』でも同様であった。多少ゲームとは仕様が違っていたが問題なく利用可能だったため、彼女はこの中に死霊兵鎧のパーツを収納しておいたのだ。

 まあ単純に筋繊維とか血とか、そんな物を置いておく場所に困ったからとも言えたが。

 浴室やバスタブに入れておく事も出来たが、それもあまり気持ちのいいものでもなかったのでこうしたとも言える。


 ちなみにこれほど使い勝手の良いスキルが存在するのに時空ツリーが大器晩成型と言われていた理由は、この手の便利機能は早い段階で取得可能なのに対し、直接戦闘に関わる攻撃や防御への手段が後半になるまで手に入らないか、あっても非常に弱かったためである。そして逆に後半に取得出来る一部の魔法が攻防共に非常に強力だったのだ。この『時空・異空間収納』も魔法の鞄同様にツリー進行で成長強化可能であったが、成長させても上昇も同じく微々たる物でしかなかった。だから皆がみな最初にこれら便利スキルだけを取得して当たり前で、同時にそれ以上に進める者は多くなかった。まあ他にも色々と理由はあったがそれは置いておくとして。


 外に出てさっそく彼女は『遠隔術・魔力走査』を発動させたようだ。

 ログに流れるとともに彼女のMPが1消費され、俺の『描画』に極々薄く彼女の黒紫の魔力が放たれたのが見えた。

 その魔力は一〇〇メートルほど進んで止まりタマを中心としたドームを一瞬だけ形成すると、すぐにタマとの繋がりと『描画』上での色を失って透明な魔力になり、周囲に溶けるように消えてしまった。

 ゲームだと大きな平面マップが画面に表示されて敵位置等が光点となって現れていたが、『遠隔術・広域知覚』のレーダー同様にこの世界仕様になっているらしい。

 ドームが消えると同時、俺の目の前に半透明な球状立体マップが生じた。ぐるんぐるん回して見る事が出来るようだ。非常に細かく、地中も確認出来るようですごい高性能だがそれ以上に情報量が多すぎて非常に分かりづらい。

 コスト発生やあくまで探査した瞬間の図という点などいくつかの面以外は『遠隔術・広域知覚』の上位互換性能だが、探査範囲や情報量など密度が濃すぎるのだ。


 この落ちてるドングリの中身がイモムシだ。


 と、そんなことを考えながら球状マップで遊んでいたらタマが振り返って俺を見た。

 少し離れたところにいたのだが、その視線は完全に俺の顔をとらえている。


(ん? どうしました?)


 問うより早く、またタマが『遠隔術・魔力走査』を発動させる。


「今、視線の先にウルくんの目がある?」


(え? ええ、ちょうど視線が合ってますね)


 また『遠隔術・魔力走査』は発動した。

 いや、何度も何度も、連続して発動し続ける。


(その反応からして、もしかして俺の位置が完全にわかる感じです?)


 破顔し、溢れるしずくも気にせずタマは頷く。


「――ああ、ああわかる。しっかりとウルくんの位置がわかる。

 やはりこの感覚がウルくんの位置だったのだな」


 泣きそうなくらい嬉しいのはわかったからちょっと控えましょうね。すごい勢いでログが『遠隔術・魔力走査 発動』で埋め尽くされ流されていくんですけど。秒間一〇〇〇回に近い単位で使用とか超スピードとかそんなちゃちな高橋名人じゃねー。


 聞けば、どうやら『描画』の筆による魔力の歪み以外にも、それとは別の歪みとも呼べないような非常に小さな違和感はずっとあったらしい。ただあまりにもなんとなくすぎて意識していても確信がもてないような、そんなレベルの話だったそうだ。

 だが彼女は俺という不可視の存在が光や魔力を感知し音を捉えているという点から、極わずかにでもそういった力学的な波長(エネルギー)を反射か吸収をしている可能性があると考えていた。

 だからもしかしたらその違和感の位置こそが俺の感覚器官である頭部の位置ではないかと予測していたらしい。度々『押し入れ』内で目があったりしていたのはそういう理由だったのだ。

 そして今回『遠隔術・魔力走査』を使用することで得られた情報の中から、他とは違う魔力の微細な動きを捉え、それが俺の位置だと特定するに至った、と。


 というか、この半径一〇〇メートルの球状範囲の魔力変動を情報整理して理解するとか、いくらステータス補正があるとはいえタマさんの脳内はどういう構造をしているのだろうか? いきなり頭がボンとかしないよね?


「大丈夫だ。さすがに元のまま秒間一〇〇〇使用だと少々辛いが……ほら、見てくれ。走査範囲も調整出来るようになってきた。

 半径一〇〇から広げるのは仕様の問題なのか出来ないようだが、狭くする分には簡単だな。さらに消費MPは下限なのか下げることが出来ないが、反比例で狭くした範囲の情報量を上げる事が出来る。情報の内容も取捨選択でさらに精査できるぞ。

 連続使用しても秒間三回程度なら消費MPを自然回復MPが上回るから、ノーコストだ」


 うん。本人が大丈夫で楽しそうだからいいか。

 ログ設定をいじって『遠隔術・魔力走査』を使用しても表示されなくしたし、この内容であれば戦闘でも役に立つだろう。予想以上にいいスキルだったようだ。


 こうして意気揚々と次の目的である落ちたドラゴンの回収に向かったわけだが、予想通りその死体の側には髑髏虫の大集団がいた。なんかこいつらってアリっぽいから、大型動物の死骸があったら回収しそうな気がしてたんだよね。他に動物見ないし。


 今回も千匹以上の集団だったが、最初から俺も参加して超多重『水冷・氷結華』を使いドラゴン保全を優先。その氷の薔薇ごと異空間収納で回収。残った髑髏虫を殲滅した。


 無茶苦茶なサイズの薔薇だったが、案外どうにかなるものである。

 仕様改変された異空間収納の内容が術者の魔力で包んだ物を一つとして認識して取り込むことから、出来るかもしれない程度の認識だったんだけどね。

 収納制限に関しては魔力で包むことさえ出来れば入れる物の大きさや重量は関係なく、その魔力に包まれた塊の数で制限があるようだ。現状だと最大で三十までしか入れることが出来ない。

 出し入れもこの魔力の塊単位で行うため、そういう意味では扱いづらい。まとめて入れる分にはいいが、小出しには向かないからだ。

 あとは魔力で包んでも内部から他の魔力で抵抗があると収納できないらしいので、生物は生きたまま収納は出来そうになかった。逆をいえば『描画』でもほぼ捉えられない程度の魔力しか持たない微生物や、大型でも仮死状態のものならいけるだろう。


 髑髏虫を殲滅し終えると、今度は引き返して放置していたもう一つの薔薇の回収に向かった。

 ドラゴンと戦っていた、あの黒い少女を収めた薔薇である。


 そう。これから彼女の遺体を使い、『仙術・地魂天魄現世乃尸解』の実験を行うのだ。




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