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※12 下心をこめて


 ゲーム中でも敵だけではなくプレイヤーキャラクターも魔力感知は使うことが出来た。


 ただそれは少々変則的で、多少特殊なツリー進行を行わないと使い物にならない代物ではあったが。


(魔力感知ですか)


「今のところ、なんとなくだが近くの魔力はわかるんだ。気配のように本当になんとなくの感覚だがね。

 しかしあの髑髏虫やエルフ耳のように離れたところにある魔力はさっぱりわからない。

 スキルツリーでなくて構わないどころかそれ以外の案があれば一番良いのだが、何かしら案はあるかい?」


(その前に、なんで魔力感知が欲しいんですか? それこそ今のところ必要のないものだと思うのですが)


 レベルを上げるための髑髏虫は入れ食い。そして『描画』で魔力が見える俺がいるのだ。緊急性どころか必要性も皆無だろう。


「我が儘を言っている自覚はあるが必要なんだ。

 どこにいても、ウルくんを感じたい」


 しばしの間、言っている意味がわからなかった。


(……えっと、魔力感知と俺にどんな関係が?)


「ウルくんが魔法を使う際、魔力にわずかに歪みが生じる。近くであればそれがなんとなく感じられる。だが遠くなると私にはさっぱりだ。気合いだけではどうしようもない状態になっている。

 これは聞いた話から予測するに『描画』で筆を動かした際にその場所や人、私の魔力を消費することが原因だろう。

 この世界基準の魔力感知があれば、私はウルくんの存在をもっと実感できると思うんだ。

 ――あ、ウルくんが疎ましくなって遠くにいることを確認するためとかそういうのではないぞっ、むしろ近くにいて欲しくてずっと自分一人で戦っているんだっ」


 後半いきなり慌てるなし。

 なんかごっつい自爆してませんかこの娘。言ってから、あ、えっと、これは、とか言いながら顔真っ赤なんですけど。

 どっちとも意味を取れるから反応に困る。


(わざとらしい発言乙です)


「え、あ、ぅ、うん」


 おう、すっごい悄気返った。

 え、どうしよう、これってマジあれなんだろうか。度々マンガやラノベで使われるそういう分類のシチュエーションなんだろうか。

 こんなテンプレがリアルに存在するとは思わなかった。彼女は日本式サブカルに明るそうだし、素直クールとまでいかなくても冷静で正直な性分ぽかったから全部わかってやっているのだと思っていたのだけど。

 もしかして素でやらかした感じなのだろうか。案外にここに来てからのような極限状態だと逆に大丈夫だけど、日常でテンパるとだめな人なのかもしれない。ちょい赤面性なとこもあるからなぁ。


 なんとなく嬉しくなってくるが、とりあえずこのままいっても話が逸れるだけだし、元に戻そう。


(メールや通話履歴は仕事関係外だったら見られても構わない性分なので、拘束はお好きにどうぞ。なので位置情報くらい好きなだけ確認して下さい。

 それで、タマさんが魔力感知を覚えたい理由はわかりましたが、でもやっぱりその理由だと必要性ないですよね?)


 俺、スマホの方に連絡入れる友人少ないすよ。いやいや、普段使いのスマホの方だけですって。ホント。ライン? 家族グループがあれば十分ですね。スカイプは仕事専用だけにしたいんで却下です。誤爆で仕事絵を他のところに送ってしまう恐ろしさよ、キエサレ。


「う、うん。やはり必要性はないよな。わかった、諦める」


 すっぽんぽん正座のまま、美味しくなさそうにドングリ小判を咀嚼し飲み込むタマさん。


 何だろうこの感じ。妙にしおらしい彼女を見て何かがムクムクしてきて仕方がないんですけど。

 心を静めるためにそんなタマさんを描きつつ、ログを流す。


(『RPGシステム』的には遠隔術ツリーを一つ進めるだけで『遠隔術・広域知覚』のスキルが得られます。ぶっちゃけレーダーですね。

 これは所謂付属スキルと呼ばれるもので、ツリーを一つでも進めれば誰でも使えるようになるものです。

 常時発動(パッシブ)型で、効果内容は周囲一体の敵味方含めた位置情報です。ツリーを進めることによって範囲や情報量が強化されます)


 俺が各種ツリーを少しでも進めようと考えていた理由の一つがこれだ。

 全ツリー共通でそれぞれ一つずつ、ツリー最初のスキル取得がキーとなって付属されてくるパッシブ型の有益なスキルが存在するのだ。

 付属スキルとプレイヤーは呼んでいたこれらのスキルは手に入れただけだとそこまで効果はないのだが、そのツリーを全体の一割進めるごとにスキル強化がなされ、徐々に強力なものとなっていくのが特徴であった。

 ちなみに祝福ツリーの付属は『祝福・自動回復』であり、初期は実に微々たる効果しかなく気休めにもならないが、祝福ツリーを全取得した現在のタマだと目に見えてHPが回復する。先の戦闘では全くダメージを負っていなかったので、未だ日の目を見ていないが。


(さらに時空ツリーの中頃に『時空・魔力測定』があります。

 これもパッシブ型のスキルで、覚えることでゲーム中の『調べる』動作などに対象のMP量が大まかに相対表示されるものです。

 ゲーム中では遠隔術を一割以上進めて『遠隔術・広域知覚』を二段階目にして『時空・魔力測定』を覚えると、複合スキルの『遠隔術・魔力走査』を覚えることが出来ました。

 これの効果は任意発動(アクティブ)時にその瞬間の超広域の地形図表示と魔力持ちの位置表示です)


 パッシブではありませんし、こっちで覚えた場合どうなるかわかりませんが。と締めくくる。


 話を聞き終えログを見直したタマが、下唇を押し上げて口をへの字にする。が、口角が上がり気味なため不出来なアヒル口となった。

 今の情報だけでは悲しむべきか喜ぶべきかわからないのかもしれない。


「……それはつまり時空ツリーを予定通り進めて、さらに遠隔術ツリーを一つ取得してしまえば、私にも魔力感知が備わるということか?」


(その後に複合スキルを覚えれば。ですよ)


「効果範囲の広域、超広域とは具体的にどれくらいかわかるかな? あと『遠隔術・魔力走査』を覚えるまでに必要になるスキルポイントは?」


(ゲーム中であればですが、『遠隔術・広域知覚』は最初期の第一段階でおよそ半径二メートル程度を表示した円形レーダーが画面端に現れる形でした。第二段階で二メートル半ですね。

 対して『遠隔術・魔力走査』は最初期でも半径一〇〇メートルほどの地形図を画面中央に表示し、その中にあった魔力の反応を光点で教えてくれるものでした。

 ただしさっきも言ったとおり『遠隔術・広域知覚』は常に更新され表示され続けるパッシブでしたが、『遠隔術・魔力走査』は自ら使わないと効果がないアクティブで、効果も使った瞬間の情報表示です。画面中央を占めてしまうこともあって、とてもじゃないですが戦いながら使えるような代物ではありませんでした。例え覚えたとしても、戦闘中に俺の位置を知るために魔力の歪みなんてあやふやな物を探すのは止しておいた方が良いでしょうね。表示されない可能性もありますし。

 ただ非戦闘時、瞬時に一帯の地形や敵位置などを把握できるのは非常に便利です。

 スキルポイントに関しては、タマさんのレベルをカンストするまで上げることを前提にすれば、余剰分の中でも極々少量と言えます)


「ここまで話すということは、ウルくんとしてはこれの取得は反対ではないということか?」


(先ほどタマさんの理由に対して必要性はないと言いましたが、俺としては別な理由で必要だと思っていたのでいつかは覚えてもらうつもりでした)


 タマの眉が顰められる。


「私一人でも魔力感知が出来るようにか?」


(その通りです)


 不測の事態というのは往々にしてあるものだ。いつもは問題なく使えていた物がなにかの拍子に使い物にならなくなることなどしょっちゅうであるし、ことが生存のための殺し合い真っ最中の問題だ。出来る限り備えるのは当然である。


 嗚呼、納品データが詰まったPCが吹っ飛ぶ嘆きよ。

 当然バックアップはとってありましたけどね。でもPC新調して仕事再開するまでに時間がかかり、その後の調整ラッシュには本当に死にそうになった。


 そしてその備える当然の中には、俺の存在も含まれている。


 召喚時のあの光景から考えると、俺がいつどうなるかわからないからだ。


 タマが自ら進んでやっているとはいえ、一人で戦うことを認めているのもそういった理由からである。


 まあ俺がいなくなったりしたら『RPGシステム』がどうなるのかわからないし、意味のないことかもしれないけどね。その点でいくと彼女が自前の技術として武術の心得があって本当によかったと思う。


 タマもその辺りの俺の考えがある程度わかっているらしく面白くなさそうな顔をしていたが、彼女には異論もなければ実質的な損もないのだ。


「……そうか、ありがとう。

 その通りに進めて欲しい。時空ツリーを進めるより先に遠隔術ツリーを一つ進めておいて『遠隔術・広域知覚』の感触も確かめておこう」


(じゃ、さっそく)


 ポチッとな。と遠隔術ツリーを進める。

 このツリーの一番最初は『遠隔術・鵜の目』というもので、一定時間遠距離攻撃類への命中ボーナス付与という説明文となっている。が、実際は使用すると効果時間中はSES(集中力)値が固定値微上昇するという内容のため、現在のタマにとっては恩恵が微妙であるが、ゲーム序盤では近接攻撃の命中率や、魔法の成功指標であるレジスト率に影響を及ぼす重要なスキルの一つであった。


 ツリーを進めたことでタマには新たに『遠隔術・鵜の目』と『遠隔術・広域知覚』が追加された。

 すぐさま効果は現れ、俺の視界端にも小さな球状レーダーが表示される。


 え、球状? 立体なん? ゲームじゃDBレーダーみたいな円形平面だったじゃない。


 どうやら俺のこうだったらいいなゲームシステムの追加分があったらしい。

 確かに街中とかで複数階層になってる場所だと平面に光点が重複してわけわからんことになっていたから、こうだったらいいのになで妄想したことがある内容である。


 予定とは少々違うが問題はない。むしろ多分便利になっているからいいことだ。


 そう思ったところで、タマが首を傾げていることに気付いた。


(どうしました?)


「いや、ウルくん、ツリーは進めないのかい?」


(え? 遠隔術進めましたよ)


 タマが顎に手をやり、いかにも考えていますといった具合の仕草で疑問を語る。


「……進めたら『遠隔術・広域知覚』が自動的に追加されるんだよね?」


 あ、察し。


(……えーっと、俺の方にはレーダーがあるのですが、まさかタマさんにはないのでしょうか?)


 こくりと彼女は頷いた。


 えー、マジかよー。



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