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非実在青少年は異世界で死霊術師を愛でる  作者: A・F・K
長いプロローグ・城脱出編
1/54

※1 超大作RPGの予感で終わる感

 ドサリと炎に巻かれた死体が倒れる。

 その衝撃によるものか、それともこちらに煙が来ないようおこされた風によるものか、持ち上がっていた死体の腕が肘のところで外れてしまったのが見えた。

 祝福の鐘の音が幾重にも重なり、目の前にいる少女の周囲を光り輝く粉が過剰なほどに舞う。

 光に包まれた彼女と、その後ろで床面に足を着けずに浮く俺との間では、『LVupしました』のログが大量に流れていっていた。

 近くにいた王子だかと宰相だかが彼女にかける賞賛の言葉も一緒にログに流れていくのを確認しながら、俺は意外なほど冷静な思考で現状を俯瞰して要約してみた。


 異世界召喚>>魅了アイテムでメロメロ>>二人召喚されたけど一人いらないから余興で有望な方に殺させよっか>>俺、焼死


 まあなんというか、あそこで焼けているのが俺である。

 いつの間にかここにいるのも俺である。


 手をかざして見てみる。

 半透明のそれの先には、レベルアップエフェクトが終わって佇む少女の後ろ姿が。その首には宝石がちりばめられた、タイトなネックレスというよりは首輪に近い形状の金属製品が炎の灯りを反射して輝いていた。


 どうやら俺は死んで、この娘にプレイヤーキャラクターを変更したらしかった。




 こんなことになるまで俺は鈴木潤一(スズキウルイ)という、山菜ぽい名前のそこそこの進学校に通い始めた、ちょっとメガネが似合うだけの普通ではないかもしれないリア充(自己申告)であった。

 リア充といえば少々語弊があるかもしれないが、リアル彼女がいた試しはない。

 もちろん彼氏もなので、童貞且つ処女である。

 実に清い体であったが今では乳首も竿も菊も真っ黒である。

 困ったことに清いままナンパ度とビッチ度が上がってしまったことで、さらにリア充指数が上昇していそうだ。このまま明日も学校に行けばキャーキャー言われること必至であろう。


 そんな俺は高校の入学式に出席して、式の終了と共に教室へ移動するため階段を上がっていたのだが、少し前を上がっていた小柄な女子生徒が足を滑らせたのか踏み外したのか、勢いよく落ちてきたのを慌てて受け止めたのが運の尽きだった。

 そして気付く。俺達の足下に広がる魔法陣ぽいもの。

 ビックリして反射的にそこから飛び退こうとしたが時すでに遅し。

 自分の体と腕の中の少女以外の全てが黒ベタ×差の絶対値で色調反転させられ。

 たぶん時間を止められ。

 きっと世界を止められ。

 身動き一つ出来なくなっていた。


 気がする。


 なんかそんな演出だったと思うのだが、如何せんあまりの驚きに呆けている間に意識を失っていて、気付けば召喚の間っぽいところで女の子と一緒になんだか偉そうなファンタジー風お洋服(べべ)のエルフ耳美形大団体に囲まれていた。

 もうそのときには俺の体(・・・)と女の子には首輪が嵌められていて、聞いた覚えがない言語で仲良くご歓談される内容は俺と俺の体の間、視界の端のログスペースにずらずらとリアルタイムに翻訳更新されていた。

 状況を整理しようと召喚されてすぐから更新されていたらしきログを頭から追う内に彼らの話は進み、俺の体と女の子がニコニコと知らん言語で受け答えをして、なんか如何にもな魔法の杖を持たされてその場で決闘。

 衆目の下、俺は真っ黒な敏感エリアを強制露出と相成ったわけである。


 俺としてはログで追う内に理解できた、俺に勝ち目がなくてまず確実に負けてしまうことも、ましてやなんらかの偶然でもって女の子を倒してしまうことも、否定したかったしご遠慮願いたかった。

 だが、まったくもってどうにもならなかった。

 俺と彼女はこの世界からすると破格の量の魔力なるものと、他にはない特殊能力的なものを二つもって召喚されるように設定されていたらしいのだが、この世界にはそんな始めからすごいヤツでも好きに出来ちゃうご都合主義アイテム、魅了の首輪が存在していたのだ。俺の体と女の子の首に巻かれていたアレである。

 被召喚者は世界になじむまで気絶か意識混濁しているものらしく、そこへ魅了の首輪の簡単確実のハメコンボというわけだ。

 アレは着けた相手に対して悪感情が湧かなくなり、逆に全ての感情を好感情へと変換しまうという、なんともはや薄い本作成にやさしい代物であるとのことだ。

 さっきまでの俺の体にも、今の俺の視界内にある状態変化アイコンの中にも魅了状態があるのは、そういうことだろう。


 この世界にいるか知らんが、俺だったら絶対にその首輪をオークに渡してこのエルフ耳達に男女問わず着けさせる。それで俺と同じように乳首を真っ黒にさせてあげたい所存だ。


 なんにせよ、俺の体は能力的な問題もあってあっさり死んだ。

 だが、なるほど、俺に勝ち目がなかった理由の一つである、レベルアップしないと魔力その他もろもろが弱いままという、『RPGシステム』とでも言うべきこの能力は、こうしてちょっと予想外の効果を発揮した。

 前作主人公降板による主人公の交代。

 もしくはMMOなら間違ってメインキャラロストしちゃったからセカンドの倉庫キャラに変更、育成みたいな?

 マジ運営も融通きかせろ下さいお願いしたかったけど倉庫ちゃんは女の子だったから同一装備なのにグラカワイイですこのままでイイヤー。は多分よくあること。

 このエルフ耳達も、二人以上が同時に召喚された場合は一人が死ぬと生きている方に能力の一部が譲渡される、とか言って決闘を始めさせていた。確実に男が負けるでしょうなぁとか言ってた。

 そうだというのに俺の体は頬を紅潮させてキショイ笑顔で決闘命令を受け入れていたのだから、首輪の効果しゅんごい。


 まあ、つまるところ、ここにいる俺は俺の体が持っていた能力ということになるのだと思われる。

 要は自立型のスタ○ドですよ奥さん。


 知らん言葉を理解して喋っていたアレが本当に俺なのか甚だ疑問ではあるが、俺の体が彼らに説明していた能力詳細内には、自分自身をプレイヤー視点で操作すること()出来る能力であるという部分が含まれていた。

 も、ということは本来は主観視点の体感ゲー的な内容だったのかもしれないが、気付いたときから魅了状態の体とは切り離された思考形態であったし、俺がログを介さなければわからない言葉を最初から使っていたあの存在が俺と完全に同一とは考えづらい。


 首輪がなければ思考が同期されていたのだろうか。それとも……。

 ……アイデンティティーに関する問答は、今はやめておこう。

 この背後霊状態の俺が、俺の体や今女の子に着けられている首輪の効果対象外だとわかっていればいい。

 受け答えしていた俺の体の中身がどういう状態であったのか、今となっては知りようもないだろうし。


 当面の問題はこの後どうするかである。

 こんな怪しいのが半透明で浮かんでいるのに最初から誰も俺に気付いていないようだし、今の状態をゲームのプレイヤーキャラクター変更と位置づけしたが、俺の体も、この女の子のことも、俺には動かすことが出来ない。

 もしかしたら出来るのかもしれないがやり方がわからないし、魅了状態を示すアイコンがある限り無理くさい気がする。

 このログや各種ステータスの配置、画面構成など、俺がハマっていたMMORPGによく似ているのだ。

 そのゲームにおいて魅了の状態異常は、プレイヤーからの操作を一切受け付けなくなり、代わりに敵NPCの思考ルーチンで行動するようになるというものだった。

 それと全く同じかどうかはわからないが、今のところの状況は近い。

 幾つかある攻撃対象指定アイコンや技スキルや魔法スキルなどを発動させるアイコンは軒並み使用不可を示す灰色だ。

 もちろんのこと、今の俺の半透明の体は、首輪にも少女にも床面にも触れることは出来ずに通り抜ける。

 声を出しても反応がないあたり、物理的干渉はほぼ不可能。

 女の子の後ろから動くことは出来るが、どうやら体が女の子のいる方向を向いていなければいけないようで、どこまで離れられるかわからないが、少々不便である。


 とりあえず回り込んで女の子の顔をよく見てみる。


 ふむ。入学したてだってのもあるが、やはりまったく知らない子だ。

 なんかボサボサと毛羽立った長いごんぶと三つ編みのせいで後ろ姿がすごい芋っぽかったのだが、ぱっちりとした二重のつり目美少女である。

 少々野性味があるマロ気味太眉とか、いいじゃないの。睫毛天然でばっさばさだし。

 体の方が帰宅部の俺でも受け止められるくらいロリなのが不満だが、顔立ちは好みだ。

 化粧っ気のなさが逆にグッド。

 笑顔が可愛いこと受け合い。


 決闘で生き残ったのがこの娘で良かった。


 周りのエルフ耳美形達もこの子を王子の子産み腹にするとか話し合ってるし、超美形な王子もノリノリのようだ。

 高い魔力を継承させるためにとかなんとか。

 代々聖王家は神子と交わりうんたらかんたら。

 召喚設定も王子の好みになるようにうんぬんかんぬん。

 今回は穢れがあるので赤子は他国へとかどうとか。


 なるほど王子はオープンなロリコンな上に貧乳至上主義の様子。

 ロリの場合でも巨乳派の俺はただの巻き込まれなのね。

 俺まで王子の好みで喚ばれたとかだった可能性は考えないでおこう。


 そしてこのままいくと、この少女は王子の子を孕むためににゃんにゃんさせられちゃうと。


 これはくっそおもしろくない。


 全ての感情を好感情へと変換して言うことを聞かせられるくらいなのだから、この子はこのままなら進んで王子に身を捧げる。

 今も王子にキラキラした視線を向けているし、命令された俺の体が笑顔で死戦に挑んだほどなのだから、命を投げ打つことが出来るほどの好感情なのだろう。

 喜んでどんなプレイも受け入れると思われる。

 首輪がなかったとしても王子はキラキライケメンなのでむしろ自分から食いに行く可能性もあるやもしれぬ。

 俺の個人的趣味としては王子が中身もイケメンで少女もいい子だったら、二人のらぶらぶにゃんにゃんと幸せな未来をがっつり鑑賞させてもらっていたこと受け合いだ。

 いろいろな意味でいい参考になる。

 だけど首輪のない彼女自身の本心はわからないし、少なくとも俺の感性的にはこの王子達は完全アウトの反吐が出るような邪悪である。

 これ、明らかに営利誘拐だし。

 人の意志はいいように改変するし。

 俺のことなんも知らんくせして殺させるし。

 話しぶりからするに何十年か単位で何度もやってるようなのもいただけない。

 正義を語るつもりはないが、ゲスに俺がいいようにされたままなのは腹立たしいものがある。


 もっと正直に言えば、エロを見ているときは救われてなければいけないのが男の心情というもの。


 こう、後顧の憂いが無いような感じが欲しい。

 だって狭い我が家に帰ると姉ちゃん達の誰かは絶対家にいるんだもん……、という憂いもあるけど、それではなく、魅了の首輪なんか使ってないで捨て身のラヴで勝負しろよこちとらリアル恋人いない歴十五年の健全漫画好き童貞で処女だぞ恋愛に夢見させろやオラァ。

 なのである。

 レイプNTRネタは二次元なら玄人だけど、リアル素人高校生には上級過ぎてついていけませんよ。


 誰にも聞こえていないのをいいことにそんなことを呟いていたら、消火された俺の死体に女の子が近づき手をかざしていた。

 『死霊術・死霊兵創造 発動』のログが流れる。

 途端、紫に輝く魔法陣が彼女と嫌な臭いのしそうな黒い固まりの上に生まれた。

 魔法陣が消えると死体は白い光に包まれ、小指の爪ほどの大きさの多量の骨片となった。

 かと思えば、今度は骨片が浮き上がり合体。

 瞬く間に二歩足で自立する骨格標本となる。

 そして『死霊兵スズキ が誕生しました』のログ。

 なぜかやたらと流麗な動きでもって演舞を披露し始めた。

 ……やだこれ地元の神楽舞じゃないですかすごい。

 どうやら女の子の持つ能力の一つ、死霊術の実験らしい。


 彼女は俺とは違い、最初から非常に強く大きな魔力を持っていた。

 だから俺も渡された、魔力に応じて炎を生む魔法の杖と同じ杖を彼女が使った際、俺は俺が生み出した小さな火ごと彼女の炎に呑み込まれた。


 基礎となるスペックが圧倒的に違いすぎたのだ。

 俺の能力が成長しきっていればその限りではなかっただろうが、如何せん召喚されたてのレベル1。

 このレベルがどのような基準で、この世界の人間達がどの程度なのかはわからないが、互いを比べたとして俺の体の強さは大したものではないことぐらい予想できる。

 なのに彼女は最初からこの世界でも上位に位置する力を持っているとなれば、結果はご覧のとおりであるというわけだ。


 王子達の指示を受けた少女によって骨格標本がいくつかの動作確認を行い、それが終わると一度骨片に戻ってから球状に固まり、少女の両腕の中に収まる。


 その間のエルフ耳達の視線は汚らわしいものを見るそれであった。

 聖王家がどうとか悪魔の呪いがどうとか、他にも宗教が絡んでいそうな会話があったので、やはり死霊術みたいなものは禁忌に類する扱いのようだと理解できる。


 とはいえそれも決闘前の王様と王子の発言によってだいぶ薄らいだというか、下卑たものになったというか。


 王様曰く、我らが神の御威光に照らされたこの大地にも、影が生まれた地がある。

 影には障りが生じ、穢れが溜まり、悪魔が呪いを落としていく。

 そのような地にも我らが神は光を与えよう。

 だそうな。


 詳しいことはわかりようがないが、悪魔の呪いとやらが死霊を指すのであろうことは予想がつく。

 端的に言ってマッチポンプに使えるということだろう。

 というか王子、そんな穢れた魔法を使う少女を抱くことにノリノリとかアレか、自分の価値観的に禁忌となるものを抱くのがいいとかそういう屈折系も混じってるというか、そっちメインなのか。

 周りもそれを気にしてないあたり、どんだけ業が深い連中の集まりなんだ、これ。


 だがそのお陰で彼女の命は現在のところ保証されているのだからよしとしよう。

 この少女の場合、死霊術を使わず普通の魔法だけでも強力なうえ、他にも特殊能力をもっている。

 エルフ耳達にとってそちらは扱いに困る能力だったみたいだが、俺的には悪くない。


 それに先ほどの死霊兵創造はうれしい可能性を示してくれた。

 彼女のレベルアップによって出来ることも増えている。


 用意された部屋へと案内されている少女の、ステータス項目にある名前欄。

 ヤマダ タマヤ と記されたその横にちょこんとついているPTリーダーを示す黄色い丸を、俺はわくわくしながらタッチするのだった。



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