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 永遠が欲しいと願っていた女が死んだ。

 それは、俺が愛したひとだった。

 忘れ去られかけてはいるものの、神として名を連ねている俺が出来ることは、彼女の最期を見届けることだけ。

 この時ほど、己の無力さを恨んだことはない。

 

 神とて万能ではない。


 そう言ったのは俺より高位の神だっただろうか?

 それとも、彼女と同じ人間だっただろうか?


「どちらも、だったな」


 誰に言うでもなく、ただ人界を見下ろす。

 彼女がいなくなっても、世界は変わらずに回る。

 求められているかどうかなど関係なく、風を送れば、どこかから楽しげな音が聞こえた。


 何度でも見つけてやる。その手を掴んでやる。俺が俺である限り


 そう言って人間のする「指切り」という形で、約束した。

 否、神である俺は誓った。

 あいつがいつ再び人間として生を受けるかなど知らない。

 もしかしたら、もう二度と人間としては生を受けないかもしれない。

 けれど、控えめに結ばれた指の温もりを思い出すと、「諦める」ということは出来なかった。


「お前も諦めの悪い」


 彼女がいなくなってから、数百年。

 誰かがそう言って笑った。

 嘲笑ではない。

 心配してくれているのだ。

 時が進めば進むほど、人の心は新しい物に流れ、俺達を忘れていった。

 このままでは、いずれ俺達は消えてしまう。

 そうなる前に、高位の神々に救いを求め、天へと昇るのが「己」を永らえさせる唯一の術。

 だが、そうすれば、人界に降りることはおろか、人界を眺めることも出来はしない。


「約束したんでな」


 いつも通りの言葉を返し、人界に目をやる。

 残された時間はあとどれくらいだろうか。


 この身が消える前に、一目なりともお前に会いたい。


 

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