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第14話_1尾目_熱帯魚ブリーダーになるために必要なこと1

~熱帯魚ブリーダーになるために必要なこと1~



七月第二週の月曜日。時計の針は夜の二〇時を回っていた。

桜島さんはリビングの机で一時間くらい前から、レシートと通帳を広げて、電卓を片手に帳簿の計算をしている。



その様子は、一ヶ月二万円で生活することに生命をかけている節約好きな主婦みたいに見えてしまう。……。うん、将来的に桜島さんにお財布を握られるのは仕方ないにしても、ぴりぴりした桜島さんは苦手だから、生活費は多めに渡せるようになりたいな。――とか現実逃避をしてみる。



こんなことになったきっかけは、水槽部屋で繁殖させたアルビノアマガエルや鯉ベタ達がインターネットオークションや指宿店長の伝手で大量に売れたこと。

「そろそろ帳簿をつけないと、ドンブリ勘定のままじゃいけないわ。開業届を出した四月から、これまでの収支をきちんと計算するの。そして二人で利益を山分けしましょ?」



そう言って楽しそうな表情で桜島さんは作業を始めたのだけれど――青色申告に必要な「複式簿記」というモノは、桜島さんいわく「なかなか手ごわい魔物」らしい。事実、少し前からコーヒーに手を伸ばす回数が増えているし、軽くイライラしているみたいだし、集中力が切れているご様子。



「桜島さん、もう少しで晩ご飯ができますよ?」

かろうじて集中を維持している桜島さんには悪いけれど、夕食が出来たら作業を一時中断して欲しいから声をかける。若干、不服そうな表情で桜島さんが僕を睨んだ。



「……ちょっと待ってよ、あと少しで終わるから」



桜島さんに「計算が出来ないからといって、僕に八つ当たりするのはダメですよ」となるべく優しくなるように視線を返したのに、すぐに桜島さんの唇が尖った。それを指摘すると、もっと不機嫌になりそうだったから、あえて気付かなかったことにするけれど。



「今から、スーパーで奮発して購入した鹿児島黒牛のステーキ肉を焼きますので、ちゃちゃっと片付けて下さい。せっかくの高いお肉ですし、桜島さんも温かいうちに食べたいですよね?」



鹿児島黒牛とステーキという魅惑的な単語に反応しながら、桜島さんが戸惑うような表情を浮かべる。

「う~、鼎が言うように『ちゃちゃっ』といっていないから、私は困っているの!」

いつの間にか、ぷちアヒルが親玉アヒルに成長していた。でも多分、本人も自覚していて、わざとしているのだろう。桜島さんの目元が、さっきと比べて、少しだけ甘えているように見えるから。



「桜島さん、これで二度目になりますけれど、青色申告用の会計ソフトを買ってパソコンで処理したらどうですか? 別に手書きにこだわらなくても良いと思うんですけれど」



僕の言葉に桜島さんが、ボールペンを持った手を止めて、真剣な表情で視線を向けてくる。

「ん。確かにパソコンの会計ソフトを使って数字を入力したら集計を自動でしてくれるから楽だと私も思うけれど、複式簿記の仕組みを知っていないと流れが理解できたとは言えないと思うのよ。私は、将来のためにも、お金の流れを自分で把握しておきたいの♪」



どこか得意げな顔で桜島さんは言い切ったけれど、僕には桜島さんの言葉が嘘だと分かってしまう。

「建前はそうですが、本音は『会計ソフト代をケチりたいだけ』ですよね?」

確認するような僕の言葉に、桜島さんが苦笑する。

「あはっ、バレた?」

悪戯っぽい笑顔。思わず突っ込みを入れてしまう。



「臨時収入とはいえ、かなりの金額になったのですから会計ソフトくらい買いましょうよ。値段は詳しくは知りませんが、三万円前後で買えるんじゃないんですか?」



僕の言葉に、桜島さんが首を横に振る。

「そんなの嫌よ。努力すれば自分で出来る処理なのに、安易な手段に流れたらいけないわ♪」

「そういうところは桜島さんらしいですけれど、結果的に時間短縮にもなりますから、会計ソフトを導入した方が費用対効果という意味でも、効率という意味でも良いのでは――」

僕の言葉を、桜島さんが人差し指で小さく×を作って遮る。そして悪い顔を作った桜島さんが、もったいぶるように言葉をためてから、ゆっくりと口を開く。



「鼎の『取り分』から差し引いて良いなら、会計ソフトを買ってみても『やぶさかではない』けれど?」



少し上から目線の態度。両手を組んで、胸を反らして悪い笑顔を作っている。女王様っぽいけれど……これは、突っ込み待ちなのだろうか? いや、桜島さんの好きなゲームの登場キャラに「取り分」とか「やぶさかではない」とかいう口癖をもった女盗賊キャラがいたっけ? でも、よく分からないから、あえてスルーしよう。



「桜島さん、ここは会計ソフト代も事業経費にしましょうよ。問題無く経費に計上できるはずですし」

「そんなの知らないっ♪ 鼎に買ってもらいたいな~」

おすまし顔になる桜島さん。僕が逡巡した時の反応が面白かったのか、僕の対応が良かったのか、若干、口元が綻んでいた。



頭の中で、今回の僕の報酬をざっくりと計算する。桜島さんの代理でインターネットオークションの取引をしたから知っているのだけれど、単純な売上だけで考えると今回の入金額は僕の三ヶ月分のバイト代を軽く超えている。その何パーセントが僕の取り分になるのかは分からないけれど、数万円単位なのは間違いないだろう。



会計ソフトくらい僕の報酬から買ってあげても良いのだけれど……ここはあえて桜島さんをじらす方が、後々ソフトを買った時に「使い方が分からない」とか「飽きた」とか言って投げ出さずに使ってくれそうだ。

うん、話を誤魔化そう。

「とか言っているうちに、お肉が焼き上がりましたよ。冷める前に晩ご飯にしましょうか」



「あっ、ちょ、ちょっと待って! すぐ片付けるから!」

お皿を持って移動しようとした僕を見て、桜島さんがクリップで留めたレシートの束をクリアファイルに差し込んで、慌てた表情でパタンと閉じた。その様子が宿題を途中で放り出して遊びに行く小学生みたいに見えてしまって、どこか微笑ましいなと感じたのは、桜島さんには絶対に内緒だ。子ども扱いするなって怒られるから。



  ◇



ご飯を食べ始めると、桜島さんが嬉しそうな顔をしているのに気が付いた。目線が合うと、桜島さんの口元が緩む。鹿児島黒牛のステーキ肉のおかげだろうか?

「ふっふっふ~♪」

不敵な笑みを浮かべて、桜島さんが自慢げな表情を作る。

「桜島さん、どうかしましたか?」

「ん? バレた?」

わざとらしく言う桜島さん。思わず苦笑いが出てしまった。



「ええ、今の桜島さん、とても嬉しそうな顔をしていますし、『聞いてくれ』って表情もしている気がするので」

「うふっ、鼎には隠し事は出来ないわねっ♪」

桜島さんはにこっと笑うと、真面目な顔を作って言葉を続ける。



「さっきまで収支の計算をしていたのだけれど――結果から言うわ。今回の売買の利益が三〇万円を超えたの! 二人で山分けするから、一人の取り分が一五万円を超えるわよ!」

自信満々の桜島さん。通帳の入金額を知っているから、大体予想はついていたけれど……ちょっと確認してみたいことがあった。



「桜島さん、電気代や水道代を経費に入れても、その金額になるんですか?」

「もち♪ インターネットオークションと、グリーンファンタジストに卸して販売した生体の売り上げが合わせて五〇万円オーバー。そこから種親の仕入れ代金や飼育機材の費用、四月からの電気代や水道代、そして細々とした飼育機材の購入費を差し引いて――」

再び悪い笑みがこぼれた桜島さん。一瞬、桜島さんの瞳にお金のマークが浮かんだのが見えたような気がしたけれど、多分、僕の気のせいだろう。うん、そういうことにしておきたい。



でも、気になったことを聞いてみることにした。

「そう言えば、ちゃんと部屋代は経費に入れましたか? 家賃を家事按分――使用割合に応じて経費に計上――すれば、部屋代も経費に入れられるって聞きましたけれど」

僕の言葉に桜島さんの表情が一瞬で歪む。



「家事按分のこと、忘れてた……」



「ってことは、ここまでの計算で家賃は経費に入れていないということですね?」

「うん。入れないとダメかな?」

「入れた方が、家賃の一部を経費として処理できるので、メリットが多いですよ? 経費に入れれば、僕と桜島さんが自己負担するお金が少なくなりますし、税金も安くなりますし」



「そっか。それじゃ、入れることにするわ」

あっさりと言って、桜島さんがゆっくりと指を折り始める。

「鼎の部屋の家賃は六万円でしょ? 2LDKのうち、一部屋使うのだから経費に計上できるのは三分の一にした二万円。それが四月からの分だから合計八万円。今までの数字から差し引くと……取り分が二人で二二万円しか残らないかぁ~」



「いやいや、桜島さん、二二万円でも十分な金額ですよ。実質、部屋代や水道光熱費の一部が経費になるのですし、僕と桜島さんの一ヶ月のアルバイト代よりも多いじゃないですか――って、ふと思ったんですが、水道光熱費も家事按分する計算をしていますよね?」

「……ほぇ? 何それ、美味しいの?」

にこっと笑って桜島さんが首を傾げる。



「いやいや、誤魔化すのはダメですよ、そのわざとらしい仕草は何ですか」

「可愛いかな?」

可愛いけれど、少しあざとい、とも言える。



「……」



「鼎、その何か言いたげな顔は、どういうこと?」

「いや、何でもないです」



「突っ込みが無いと恥ずかしくなるから、ちゃんと反応してよね!?」



「自覚があるなら、止めときましょうよ」

「うぅっ……はっ、話を戻すわ。水道光熱費もきちんと家事按分すれば良いんでしょ?」

「はい。水道光熱費を全額経費に回したら、後々、税務署に調査に入られた時に困ったことになりますから」

僕の言葉に、桜島さんが首を傾げたまま唇を尖らせる。



「私は忘れていただけよ? 悪意はないわ」

多分、本当に忘れていたのだろう。水道光熱費を使用割合に応じて計上すれば利益を膨らませることが出来るのだから、それを桜島さんがわざわざ見逃すとは考えづらい。



「ねぇ、鼎。水道光熱費も部屋代みたいに使用面積で家事按分すれば良いの? それとも、個別に計上するために何か良い方法があるのかな?」



「水槽部屋はエアコンをつけっぱなしにしたり、自動給排水装置を付けたりしているので、使用した分の正確な電気料金や水道料金を割り出せれば節税になるとは思います。でも、税務署に説明しやすいのは、家賃と一緒で建物の使用面積で割る方法だと思います。実際、この計算方法だと本来の水道光熱費よりも低い金額になると思いますから、税務署から文句を言われることは無いと思いますし」

本当は使用するコンセントの数で電気代を計算したり、ガス代を除外したりする方法もあるのだけれど、ここでは口に出さないことにした。だって計算がめんどくさくなるだけだから。



「そっか。それじゃ水道光熱費は、建物の使用面積に応じて三分の一だけ経費に計上することにするわ。で、それを調整したら、二人分の取り分は――」



そんなに多いとは言えないけれど、大学生の僕らにとっては、ちょっと心が躍る金額だった。



  ◇



ご飯を食べ終えて、食器を片づけて、リビングで少しまったりとする。

いつもならゆっくりとした時間なのに、スマホでインターネットオークションをチェックしていた桜島さんが椅子からいきなり立ち上がって、ソファーに座っていた僕の隣に腰掛けてきた。



勢いが付き過ぎて、桜島さんの幻想時空間が、ぽわんと上下に大きく揺れたのが視界に入ってしまったけれど、桜島さんはそんなことは全然気にしていない様子。



「鼎っ、ちょっとコレ見てよ」

桜島さんが指さす先には、鯉ベタの――正確にはプラカットという品種の――成体が一匹八〇〇円という安さで大量に出品されている画面だった。僕らが出している鯉ベタは幼魚三匹でBランクの五〇〇〇円からSランクの一万円の価格設定。とてもこの価格が相手じゃ太刀打ちできない。



悔しいことに、ライバルさんの鯉ベタのクォリティーは悪くない。下手したら、僕らの出品しているAランクのベタよりも良い柄の画像がちらほら目に入る。



「どうやら、外国で大量養殖されたプラカットらしいの」

商品説明欄を読んでいた桜島さんが悔しそうに呟いて、僕に対して言い含めるように説明を始める。



「東南アジアでは大量にプラカットを養殖しているから、この出品者は、それの中からコイベタに近い柄のモノを安く仕入れてきているんだと思う。多分だけれど、今まではハネモノにしていたような個体を商品に回して、嘘みたいに安い価格で勝負しに来ているんだと思うわ」



その顔を例えるなら――いや、例えようのないくらい苦々しい顔だ。桜島さんが、こんな顔をするなんて初めて見たかもしれない。

僕の内心の驚きをよそに、元気の無い声で桜島さんが言葉を続ける。

「このままじゃ、コイベタの市場が完全に値崩れを起こすわ。というか、現時点ですでに値が崩れてしまって、潜在的なお客さんが流れてしまっているっぽいの。うちの商品への入札がパタリと消えたから」



「グッピーみたいに『国産ブリード』をうたって付加価値を付けるのは無理ですか?」

「ベタの本場は東南アジアだし、国産でもコイベタは血統が固定されていない以上、国産をうたっても高い付加価値は望めないんじゃ無いかしら?」

桜島さんと視線がぶつかる。

真剣な表情の桜島さんも、打開策を必死に考えている様子だ。



「それにしても、一匹八〇〇円は安すぎですよね。現時点で並のショーベタと変わらない値段は、あり得ないと思いますから」

「それなら、いくらぐらいが妥当だと鼎は思うの?」

ちょっと喰い気味に桜島さんが言った。



「僕の勝手な予想ですが、おそらく鯉ベタの成魚の相場は将来的に一二〇〇円から三〇〇〇円の範囲で固定されるんじゃないかなと予測します。もちろん一部の綺麗な柄の鯉ベタは高値で取引されると思いますが、現状で柄が固定されていない以上、そういう個体が出てくるのは完全に運で決まると思いますし」

「その根拠は?」

「ショーベタがそうなっていったという前例があるからです。もちろん高値が付くのは綺麗な個体に限りますが」



僕の勝手な予想に、桜島さんが小さくため息をついて肩を落とす。

「いつか来る、いつか来るとは思っていたけれど、こんなに早く値崩れが起こるとは思ってもいなかったよ。……。はぁ、相場が下がっちゃったんだよなぁ……」

もう一度、小さくため息をついてから桜島さんが言葉を続ける。

「でも、大丈夫。私達の取扱商品には、アルビーとビノさまの子ども達が残り五〇匹くらいいるから。しかも、おたまじゃくしから子ガエルの状態に変態済みだから、一匹一万円前後で売れるし、何とかなるわよね?」



空元気を振り絞るような桜島さんに、ちょっと躊躇したけれど、現実的な言葉を口にする。

「そうとも言えません。僕らがネットオークションで売っている商品は、鯉ベタとアルビノアマガエルと増えすぎた水草の三種類だけです。しかも、この一ヶ月でアルビノアマガエルの子ども達は二〇匹くらい捌けましたから、この調子で売れるとするなら三ヶ月もしないうちに『僕らの主力商品が消える』ことになります。それはイコール、ブリーダーとしての収入源が消えるとも言えます」



僕がその言葉を口にした瞬間、それまで一時的に元気が戻っていた桜島さんが、顔を両手で覆いながら、ぐったりとのけ反った。

「ううっ、本当は私も自分で気付いているよ。単刀直入に言うなら……このままじゃ、コイベタもアルビノアマガエルの養殖も終っちゃう。ブリードを始める時に『リスク軽減のために複数の商品に投資する』ってきちんと決めていたのに、商品数を広げる前に値崩れが起きちゃうなんて、私達ついていないよ」



ついていない、の一言で済ませて良い問題かどうかは、置いておく。今は、現実的な打開策が必要だから。

「今回の僕らの場合、投資金額を抑えるために、慎重に取扱商品を一つずつ増やしていこうという計画を取ったのが裏目に出ましたね」

「そう、だよねえ……。でも、一度にたくさんの商品に手を広げて、大きな損失を出すのは絶対に避けたかったのも事実なのよね……」



桜島さんが、前屈みになってうなだれる。何か元気付ける言葉を探そうとして――いや、必死に探したのに、頭の中に浮かんでくる言葉は現実的な考えばかりだった。



今のままじゃ僕らはブリーダーとして失敗する。鯉ベタは相場の下落で労力に対して利益が薄いからメイン商品に持ってくるのは得策じゃないし、アルビノアマガエルは在庫数の枯渇で商品欄から消えてしまう。その時が来るまでに何か新しい商品を用意しないと、僕らの水槽部屋を使ったブリーダー計画は頓挫してしまう。



「ねぇ、次のメイン商品になるモノを鼎も一緒に考えてよ? 高級メダカみたいに、高価格でニーズのある商品が市場にはあるのだから、私達にも何か手があるはずだよね?」

確かめるような桜島さんの視線。ここで安易な言葉を掛けることは簡単なのかもしれない。でも、僕はあえて「きつい言葉」を使うことにした。



なるべく平静な声になるように気をつけて、桜島さんに言葉を掛ける。

「生半可な考えだと厳しいと思います。桜島さんも知っている通り、インターネットオークションの生き物は値崩れが連鎖的に起こる領域に達しています。鯉ベタも、高級メダカも、紅白エビも、オオクワガタも、外国産の甲虫も……例を挙げるときりがないくらい、一時的なブームで価格が高沸して、アマチュアブリーダーが殖やした個体が市場にあふれて、結果として価格が下がるという流れを引き起こしています。もちろん、初期のブームの波に乗れれば稼げそうですが、今、価格が高い生き物を後続で養殖し始めても、市場に卸せる頃には値段がぐっと下がって割に合わない状態になる危険性が高いです」



僕がその言葉を口にした瞬間、それまでも暗い顔だった桜島さんが、小さくため息をついた。

「ううっ、単刀直入に言うなら、このまま何も手を打てない状態が続くのなら、私達のブリーダー計画は終わりだよぉ……」

呟くような小さな声。弱気になってしまった桜島さんをどうやって元気付けようか――と思ったのは僕の間違いだったとすぐに気付いた。桜島さんが真剣な瞳で僕を見てきたから。



「でも、ここで終わるなんて私は嫌よ!」



桜島さんと目線がガッチリと重なる。「ピンチをチャンスに変える」と語っている瞳は、桜島さんらしい。



同時に、気が付けば厳しい意見や否定的な言葉ばかりを口にしていた僕を桜島さんが頼りにしてくれていることが伝わってきたから、嬉しくも感じたし、しっかりしないといけないなと感じた。



――よし、頑張るぞ。



(第14話_2尾目_熱帯魚ブリーダーになるために必要なこと2へ続く)

※(2015/12/17)本文が長かったため、話を二話に分割しました。内容的には変わっていません。

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