はち廻り 〜ユメとソラ〜
今回、ミルテアは居ないでしょう。
いえ、今後出て来る事も無いと思います。
最後の盤では、もしかすれば……。
嗚呼、今回は彼の話を致しましょう。
「今日は『神月の日』だなー」
「ちょっと、あんたも用意しなさい!」
あらあら、神月の日の準備に大忙しみたいです。
神月の日は、年末なのですよー。
「分かってるよ!」
「何。今年も落ち込んでるの?
……見つかるわよ、妹さん」
彼は又、見つかりもしない人物を捜すのです。
意味が無いと分かっている筈ですのに……。
「うん、そうだな!!
よし、僕も用意しよっと」
「あ、そういえば……」
「ん? どうかしたか?」
「アタシ、今日は『開かずの姫』様のところへ行かなきゃなんないから」
ええっ!? そんなこと、聞いていません。
宰相め……謀りましたね。
「『開かずの姫』って、あの……?」
「ええ、そうよ。
巷の噂では、扉を開けた途端、呪い殺される……とか」
わ、わたくしは呪術師でもありませんし、そんなこと……。
っつぅ……『力』を使いすぎましたか。
2人、が……ぼやけて……。
——『ソ……』——
「ん? 呼んだか?」
「え、アタシは呼んでないわよ!?」
「空耳、か……?」
彼らに声は、届か、な……。
……もう少し、見ていたかったです。
今度はどんな扉でしょうか?
紡がれる夢の幻想世界。
「……ここ、は……?」
そこには蒼い『ソラ』。
「又、でられたの……?」
見渡せば、分かってしまった。
「『ソラ』じゃ、ない……」
そこは『私』が望んだ『ソラ』ではなく、夢の『ソラ』。
「ねぇ、どうしてこんなに歪に……」
私は嘆いた。
何に対して? ——歪な願いに対して。
「あっ! どうしたの、君?」
振り向いた先には先ほどまで観察対象としていた彼、がいた。
「……噓吐き」
うっかり呟いてしまった言葉。
どうやら、彼には聞こえなかったようです。
「ん? どうした?」
「いいえ、何でも……」
『わたくし』は俯いてしまっいました。
記憶喪失だというと、彼はわたくしに住む場所を提供してくれて……。
彼は純粋です。
故に歪な事に気付かない。
ここは、盗賊の街ヴィンネル。
彼は、その街の頭。
それが、彼の望んでいた事。
いえ、大丈夫。もうすぐ彼女の現界条件が満たされる筈だから。
いまは、この時間を楽しんで、……あら? あそこに彼が居る。
後ろに、魔力の様に怪しく輝く……っ!!
「危ない!」
わたくしは走り出し、彼の後ろに出た。
それと同時に視界は真っ赤に染まる。
……これで良かったのかな?
わたくしの存在理由は何だろう?
フェードアウトしていくこの世界。
もう、ワタクシ、ハ。イナイ……。
「——彼女はもうすぐ現界条件を満たす。
それがいつかは断言できないけれど。
もうすぐ、……もうすぐ。
運命の星が近づくまで、後少し……」
——わ た く し と 、 カ レ——




