ろく巡り 〜双子の吟遊詩人〜
わたくし達は観客、そして傍観者。
ゲストとして、出演しましたの。
ああ、そうでした。
わたくしはライリア。
わたくしはレイリア。
もう、彼女の耳に夜想曲は流れないでしょう。
わたくし達が「そこ」にいないから。
あの子はわたくし達が消えた事に気付いたのかな?
大方、仕方ないと思ってそうなの……。
仕方ない、仕方ない♪
わたくし達の役目は禁譜を謳う事。
そして……『彼女を導く事』。
なのでわたくしの、わたくし達の役目は終わったのです〜。
「ご苦労様。ライリア、レイリア」
「「はぁ〜い! 頑張りましたよぉ〜」
「……もう、逝ってしまうのですね」
「はい、けれど」
「わたくし達は、」
「「貴女様を怨んでおりませんから!」」
わたくし達は笑いました。
あ、れ……、何かがこぼれて……。
「……ごめんなさい」
「「どうして謝るのですか〜?」」
「貴方達、泣いているのよ」
——え? ……まだ、未練があったんだ……。
「あの人の事、よね……。
あの日、わたくしを庇って」
「いいえ、」
「もう、」
「「いいのですよ、貴女様に非はなかったのですから〜」」
「本当に、ごめんなさい……」
あ! ヤバいです、泣く一歩手前なのです〜。
「だ、、大丈夫なのですよ〜?」
「わたくし達は後悔していませんのっ」
「寧ろ、感謝しています〜」
「「彼と最期の時間を過ごさせてくれた事を」」
「ライリア、レイリア……」
「「さっ、わたくし達はこれで……」」
「ええ、そうね。
あまり引き止めるのは良くないもの」
これ以上ここに居ては、又未練ができてしまうかもしれないから。
ね、レイリア。ね、ライリア。
「……又、来世で会いましょう」
「「ええ」」
「又、」「会いましょう?」
わたくし達が本当の最後にやりのこした事……。
! ありました〜。
「その前に」「彼女を見てきます〜」
「……いってらっしゃい」
わたくし達は、彼女の部屋に居ます。
「……彼は、忘れてしまったのね」
ええ、きっと彼は忘れてしまいましたの。
「ユメ、を」
え?
「彼の……幸せな夢は、歪でした。
……シアワセを望んだという事は、今まで不幸だという事かしら?」
違うわ、きっと彼は……。
「ごめんなさい、だから……帰ってきて、『——』」
貴方が、涙を流す必要なんて無いんだよ?
これ以上は駄目。心を鎮めて?
「いや、だよぉ……、一人は、もう……。
ゴホッゴホッ」
ああ、……。
彼女が壊れてしまう。
「力を、使い、過ぎた……様、ね」
そうよ、だから……。
「でも、知らなければならない。
——彼女、を」
まだやるというの!?
そんな事をすれば……。
「っ、キャアアア!!
『——』……。
忘れちゃ、いけな……」
彼はまだ、忘れてないよ?
そう言えないこの体はとても歯がゆいわ。
貴女は絶対に彼女を忘れないからね?
「私は、何も望まないの。
だから、帰ってきて?
ソ…………」
バタリ、という音がしたかと思うと、彼女はもう居ない。
ああ、次の扉を開けたのかしら?
そうね、きっと扉を開けたのだわ。
——さようなら、『永久の姫』君ー—
さ、逝きましょう?
そうね、彼の後を追わないとっ!
——本当に、さようなら。
姫君と……——
「双子の夢は、もう終わり。
安息の地で……眠る」