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ユメソラ  作者: 里依紗
5/10

よん廻り 〜15度目の望月〜

 今日は『望月の日』だと聞きました。

 『望月の日』はとても素敵な月の日らしいのです。

 そして、今日はわたくしが産まれてから15度目の望月です。

 今日はきっと、彼が来るでしょう。

 ……こんな日なのですから。

「初めまして、『開かずの姫君』。

俺は……」

「ティージュ」

 あ、やってしまいました。

「は?」

 彼も思わず素が出たようですね。

「……いえ、貴方の名前は?」

「ルカ、ルカ=エステメルデです。

貴女様の名は?」

「『開かずの姫』です。

そう呼べばよろしいのです」

 必ず、彼に名を呼ばせてはいけない。

 名は縛りなのだから。

「……是非とも、名をお聞かせいただきたいです」

「いえ、貴方は絶対に名を聞けない。

任務も成功できない」

 これは巡る時の中で導かれた答え。

 合っていればいいのですけれども……。

「何故……」

 合っているのですね。

 ああ、良かったです……。

「用件はそれだけなのですか?」

「……名を、教えて下さい」

「申し訳ありません。

伊達に何十年も閉じ込められておりませんから、分かるのです」

「なにを、ですか……?」

「呪術師に名を教えるのは馬鹿のすることですから」

 扉越しに、彼が息をのんで舌打ちをしたのが聞こえた。

「けれど、どうしてもというのならば……」

 ワザと、わたくしは一拍空けて言います。

「——彼女を、アルトリージェを殺しなさい」

 彼はそれを聞くと、すぐに去っていきました。

 ……多分。

 なにぶん、外が見えないので。

 彼が十分遠のいたと思ってから、わたくしは確信を持って告げます。

「『貴方は彼女を殺せない。

だって彼女は現界条件を満たしていない。

いても、貴方は彼女を殺せない』」

 辺りは、シーンとしていました。

「ねぇ、そうでしょう?」

 わたくしは誰に語りかける理由ワケでも無く言い……


 次の扉を開けた。




「——次は何が変わるの。

待っているわ、悠久の時の中で……。

早く、来て。


『アルトリージェ』……」


——四 ツ 目 ノ 欠 片—— 

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