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ユメソラ  作者: 里依紗
3/10

ふた廻り 〜同じ話、違う話〜

 水晶越しで見た彼は、輝いていました。

 それは彼が『ルール』の中に居る為なのかは分かりませんが。

 彼が望むのは『日常』。わたくしが望むのは『非日常』。

 2つは交わる事は無く、物語が進む。

「いったい、いつになれば……

これは、幾度目の夜想曲ノクターンでしょうか」

 ふいに、一度目に聞くはずなのに聞き慣れた夜想曲が聞こえました。

「わたくしは吟遊詩人。

一人の少年の願いを歌ってみせましょう」

 壁の向こうで誰かは歌います。

「一人の少年は『ユメ』を追いかけます。

少年の願いは歪で、唯純粋で。

純粋すぎる為に強く言えず、

歪過ぎる為に気付く事ができず。

狂ったユメを作り出しました。

少年は狂ったユメの中で一人、迷路の様に彷徨います。

ずっと、狂ったユメの中に……」

 この歌を聴くたびに、どうして気付けないのかと腹が立ちます。

 双子の吟遊詩人。

 たしか、彼女の方はレイリア=ベールレーズでしたっけ?

「以上、レイリア=ベールレーズでしたぁ〜」

 ただ、もう一人の方は知らないですが。



 また、あの夜想曲が聞こえました。

「これは何度聞けばいいのですか?」

 わたくしはもう一度、夜想曲を聴きました。

「わたくしは吟遊詩人。

一人の少女の願いを歌ってみせましょう」

 あら、今度は違うお話みたいです。

「一人の少女は『ソラ』を願う。

少女の願いは綺麗で、純粋で。

綺麗過ぎる為に叶わず、

純粋過ぎる為に抜け出せず。

少女はユメの中で踊り続ける。

少女は願い叶わぬ世界で二人、踊り続ける。

2人、叶わぬ世界の中で……」

 この、歌は……。

「さあ、アナタに届いたでしょうか?

以上、ライリア=ベールレーズでしたぁ〜」

 隣の部屋では拍手喝采のようでした。

 双子の、もう一人……。

 あの双子がどうして……、それならば、余計に!

「分かる歌と違う話、ですよー。

え? アンコールですか?

ん〜、あ!」

「あの歌を!!」

 あれ、二人は一緒に居るのですか?

「では、『ユメ』を願う少年と、」

「『ソラ』を願う少女の、」

「「協奏曲コンツェルトを!」」

 そして紡ぎだされる物語、ですか……?

「『ユメ』を願うはユメの少年」

「『ソラ』を願うは自由の少女」

「少年は歪な世界を望み、」

「少女は悲しい世界を望む」

「少年の願いは叶い、」

「少女の願いは叶わず」

「少年の対価は『家族』」

「少女の対価は『ソラ』」

「しかし、」

「少女に何も無かった訳ではない」

「少女は『ソラ』を対価に、」

「『未来』を手に入れる」

「少年が『本当』を思い出せるか?」

「少女が『ソラ』を見れるか?」

「巡る時の中で、」

「少女は待ち続ける」

「何を?」

「誰を?」

「変わるユメを」

「彼女の存在を」

「少年は一生、夢に囚われ続けるか?」

イエスともノーとも言えない」

「だって、それは……」

「「彼女の選択だから」」

 しん、と隣の部屋は静まる。

「どうして、ですか……。

どうして!!」

 わたくしは激怒を覚えました。

「さあ、御気に召しましたでしょうか?」

「これはある人に依頼でしか歌わなかったので、くれぐれも口外なされないよう」

「アルトリージェに祝福を!!」

 それでもう、双子の声は聞こえない。

 元々、双子は不安定要素。

 何時いつもの日。いつもの時間。

 夜想曲は流れない。

 だって双子が、

 居ないのだから……。


——二 つ 目 の 欠 片ー—

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