表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユメソラ  作者: 里依紗
2/10

ひと廻り 〜一度目の改変〜 

「どうしてわたくしはお外へ行ってはいけないのですか?」

 少女は答えを分かっていながらも侍女へ問いを投げかけた。

「外は危険なのです」

 それ一言で、侍女は何も言わない。

 聞き分けのいい少女は「そう……」と呟いただけであった。

「では、わたくしはこれで」

 侍女はそういって退室した。

 少女は独り、部屋に居る。

「誰も本当の理由を言えない。

それは分かっているけれど……。

もうすぐ、折り返しの地点。

……アナタは空を知っていますか?」

 少女はリボンを付けた大きめな熊のぬいぐるみへ問う。

 当然ながら、熊は何も答えない。

「……この世界は狂っています。

あの日から、ぐるぐると回っているだけ。

皆の顔さえもろくにわからない。

わたくしが特殊なだけ、そう申してしまえば簡単ですが、ね。

顔がハッキリと見えるのは皇族の方や主な重臣ぐらい……

何時まで廻れば、『ソラ』と対面が果たせるのでしょうか」

 熊のぬいぐるみからは、当然応えは帰って来ない。

「ふふっ、アルトに言っても分からないですよね。

けれど、ずっと後にはアナタが居るのですから。

アルトリージェ……未来を拓く者」

 少女はいとおしそうに熊のぬいぐるみを見つめた。

「あなたの仲間は2人の子。

1人は裏切ってしまうけれど、それは仕方ないのです。

彼も、苦渋の決断だったでしょう。

わたくしが居なければ……彼が裏切る事も無かったでしょうね。

けれど、わたくしは……『ソラ』が見たいのです——」

 少女は天井を見上げる。

 そこは何も無く、壁本来の真っ白なところ。

 そして、少女の頬に、透明なしずくが一滴流れた……。

「でも、ここから離れてもいい結果はうまれない。

この『ルール』から脱するにはアナタの現界が最低条件。

まだ、脱するときではないのです。

時が、満ちれば……」

 少女は熊のぬいぐるみを強く抱きしめた。

 ふいに、扉が叩かれる。

「はい、どうぞ」

 少女の声により、侍女が入ってくる。

「姫様、お食事の時間でございます」

 侍女はワゴンを部屋の中に入れた。

 少女はワゴンで食事の用意をする侍女をじっと見つめている。

「……姫様、用意ができました」

「……はい」

 少女は質素な椅子へ座る。

「また、か……」

 そう呟いてから、少女は料理を口に運んだ。

「っつ……」

 ほんの少しだけ、うめき声をあげた。

 少女は一時間かけ、料理を食べ終えた。

 何かが気に喰わなかったのか、侍女は小さく舌打ちをし、片付けをして去っていった。

 完全に侍女が居なくなったのを見た少女は床に膝をつく。

「ぅぐ、ゴホッ、ゴホッ……」

 少女はその場に崩れ落ちた。

「……さようなら、アルト。

これは一度目の、改……変……」

 熊のぬいぐるみの方を向いて少女は言うが、声が届いたかは定かではない。



——一 つ 目 の 欠 片——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ