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ユメソラ  作者: 里依紗
10/10

きゅう廻り 〜ルカ〜

 ……前の扉は閉ざされましたか。

 まぁいいです。彼女が来る予兆でしょうか?

 ここ最近、『わたくし』と『わたし』がブレてきています。

 つまりそれは……願いの終わりです。

 申し遅れました。

 わたくしの名前は……。

「『囚われの姫』様。

はじめまして。私は、ルカ=エステメルデと申します」

 その前に、彼が来てしまいました。

 今度は『囚われ』ですか。

 皮肉なモノですね。

「そうですか。

……何が目的なのです?」

「ハープを……」

 そして彼は同じ事を繰り返す。

 言っても分からないとっても、言葉が喉元まで出かけてしまいました。

 ……寸前で飲み込みましたが。

「嘘ですね。

本当の目的を申したらいかがですか?」

「……名を聞く事です」

 今回は随分と素直ですね。

 やはり、魂は覚えているのでしょうか?

 わたくしは嘘がきらいです。

 ああ、それは虚言でしたね。私自身が最大の嘘なのですから。

「あら、おかしな事を聞かれるのですね?

わたくしは『囚われの姫』です。

貴方がそう申されたのですから」

「そんな屁理屈に私が騙されるとでも?」

 少し怒っているのが、扉越しでも感じられました。

 怒っても何も始まらない。それが温厚な貴方の口癖でしたのに。

「屁理屈でもなんでもいいです。

わたくしは知らない方に名を教えません。

それに……名ならば『囚われの姫』でも十分でしょう。

随分と長い事そう呼ばれ続けていますから。

それこそ、真名にも勝るのではなくて?」

「真なる名に勝る名はありません。

それに、今ここで貴方と私が話している時点で、少なからずとも『えにし』は生まれていますでしょう?」

「……16年間で、一度しか呼ばれなかった名など、わたくしは覚えておりませんわ。

覚える間すら、与えられませんでしたから」

 シーンという沈黙がわたくし達を襲いました。

 でも、わたくし達は黙ったまま、扉越しのにらみ合いを続けます。

「それでも、」


 本当は言いたくないけれど、


「それでも知りたいというならば、」


 彼と彼女と貴方の為に。


「アルトリージェを殺しなさい」


 ……私は悪役となろう。

 でも、本当の本当は彼女が……。


 ふと、2つの足音が聞こえました。

 彼が去ったのでしょうか。

 もう一つは?

 ……わかりました。

「近づいてる……彼女が、近くに!!」


 そして私は次の扉を開ける。

 扉を開ける度に、彼の罪は多くなるけれど。

 それでも私は止まらない。

 彼を止めない限りは。


「もうすぐ大詰め。

わたくしとあなた。

だから、きっと……」

「太陽と月が近づいた。

……欠片はもうすぐ戻る」


——あ し お と だ ぁ れ ?——


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