9話 ハーレンの市場計画
ソルシダと話をした翌日には、簡易的な訓練場ができていた。
ちらっと覗いてみると、志願者が十人ほど集まり、その周りでは俺と同じ年頃の子どもたちが興味深そうに見学している。……悪くない。
このままいけば、きっと街にいい影響を与えてくれるだろう。
なぜ見に来たかと言うと、ハーレンが俺を呼んでいるとのことだった。まぁ、そのついでだ。
昨日ひと段落がついたと思ったが、やはり領主は一筋縄ではいかないようだ。
てか、なんで領主の俺が動いてんの?おかしくないか?
ハーレンの家に着いた。
「ごめんください、ルカです。」
出てこない…
何度、声をかけても出てこないから、扉を開けることにした。
すると、
目の前には、風呂上がりで色々と無防備なハーレンがいた。
「ちょっ……服を着てください!」
ハーレンが服を着替えながら話しかけてきた。
「フォル、おせ〜よ。風呂入っちまったじゃねぇか。」
「それで、用事ってなんなの?」
俺は話題を変えた。
「市場計画を立てたんだけど聞いてくれないか?」
ハーレンはそう言って、机の上に簡単な図を広げた。
「街の中央に広場、その周囲に露店。
日を決めて、人と物を集める。いわゆる定期市だ。
そして、そこの近くに店舗を作らせる。」
「それで?」
「そうすれば、今は点在している店が一か所に集めるそして、人も集まる。ルーペの流通も、少しはマシになるはずだ。」
……いや、ちょっと待て。
「商人同士の揉め事とかは?」
「そこなんだよ」ハーレンは頭をかいた。
「値段の言い争い、場所取り、詐欺まがいも出るかもしれねぇ。でも管理する人間がいない」
そのことを聞くと、俺の中で何かが引っかかった。
前世でゲームや本で見た仕組み。
商人や冒険者をまとめ、仕事を仲介し、規則を作る場所。
ーーそうだ、ギルドだ!
「ギルドを作るのはどうだ?」
「・・・え?」「・・・ん?」
2人の間の時が止まった。
「ギルドだろ?聞いたことねぇな。店の名前か?」
「違う違う。仕組みの話だ」
俺は机の図を指でなぞりながら続ける。
「簡単に言えばな、商人や職人をまとめて管理する組織だ」
「まとめる?」
「今はさ、商人がそれぞれ勝手に商売してるでしょ?
値段も場所もルールもバラバラなら、そりゃ揉めるよ」
ハーレンは腕を組み、黙って聞いている。
「ギルドがあれば、
・市場のルールを決める
・場所を割り振る
・トラブルが起きたら仲裁する
・怪しい商売を締め出す
これを一か所で管理できる」
「……なるほどな」
「商人は安心して商売ができるし、街は流通が安定する。そして、税も取りやすくなる」
そこまで言ってから、俺は付け足した。
「あと、信用だ」
「信用?」
「ギルドに登録してる商人ってだけで、こいつはちゃんとした奴だって証明になる」
ハーレンは小さく笑った。
「それ、商人からしたら喉から手が出るほど欲しいな」
「だろ?だから強制じゃなくて、入りたい奴が入る。でも、入らないと不利になる。」
この世界で初めて、前世の記憶が役に立った。
これが、知識無双ってやつか。……悪くない。
「それはいいとして、誰が仕切るんだ?」
「いや、それをハーレンがやるんだよ。」
「……なるほどな……いいじゃねぇか。やってやるよ!」
こうして、街にもう一つ、成長の仕組みが生まれようとしていた。
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