16話 フィオナさんとの出会い
噴水も完成して、ひと安心した。
ただ、ふと思う。
警備隊ができて、治安は良くなった。
商業ギルドもできて、経済も回り始めた。
だけど、病院がなくないか?
怪我をした人や、病気の人はどうしているんだろう。
そもそも、この世界に病院という概念はあるのか?
いや、異世界といえば、ポーション…?
まあ、とりあえず街の人に聞いてみよう。
「すいません!」
「ああ、これは領主様。どうなされましたか?」
「この街の人って、怪我したらどうしてるの?」
「ああ、それでしたら広場の近くにポーションを売っている店がありますよ」
ーー本当にポーションがあるのか!
さすが異世界だ。
「ありがとうございます!」
俺は言われたとおり、広場へ向かった。
広場の端に、小さな店があった。
看板には「薬草店」と書かれている。
――ここだな!
「こんにちは!ここでポーションを売ってるって聞いたんですけど…」
「あら、領主様!ちょっとお待ちください」
店主は、20代後半くらいの美しい女性だった。
どこか、マルチェリオさんと似た雰囲気がある。
「私はフィオナと申します。以後お見知り置きを。」
「よろしく!フィオナさん」
フィオナさんは、棚から小瓶を取り出して見せてくれた。
「ポーションは、赤が濃いほど効果が高いんですよ」
確かに、色の濃さが違う。
青から順に赤くなっている。
ーーこの街で、ポーションを見かけないな…
「この街で、ポーションを作れる人は他にもいるんですか?」
「実は、ポーションを作れる人は稀なんです。だから、この街では私だけで…」
ーーそうなんだ…
フィオナさんは少し困ったように笑った。
「そういえば、材料はどうしてるんですか?」
「隣の街、ハイゼル領に薬草を買いに行っています。昨日もちょうど行ってきました」
ハイゼル領。
俺も一度行ったことがある。
あの街は川もあって、土壌も豊かだ。
確かに薬草を育てるにはいい場所だろう。
だけど、ここから馬車で半日かかる。
「ハイゼル領まで、かなり時間がかかりますよね?なのに、この街を助けてくれるのはなんでなんですか?」
フィオナさんは少し目を伏せた。
「………祖父の遺言なんです。『この街のみんなを助けろ』と」
なるほど、この人は信頼できる。
【読心】を使うまでもない。
だけど、薬草を買いに行くのは大変すぎる。
俺の【農業】で、何とかできないだろうか。
「すみません。その薬草を見せていただけませんか?」
「あっ、はい!」
フィオナさんは、小さな麻袋から薬草を取り出した。
この世界の薬草は、前世では見たことのないものだった。
だから、「私が作りましょうか?」なんて、気軽には言えない。
でも――もし、これを育てることができれば。
「あの、この薬草を一つもらえないでしょうか?」
「……」
少し沈黙が続いた。
――そうだよな。薬草は貴重だ。
おそらく彼女は葛藤しているのだろう。
薬草はこの街の人のためのもの。
でも、この人は領主様。
どうしよう……と。
無理には言わない。
そう言おうとしたとき、
「一つだけなら、どうぞ」
フィオナさんは、小さく笑って薬草を差し出した。
正直、もらえると思っていなかった。
「ありがとうございます!」
もらったからには、絶対に育ててみせる。
「この恩は、必ず返します!」
俺は薬草を大切に受け取り、店を後にした。
【農業】のスキルを使って、この薬草を育てる。
そうすれば、フィオナさんも遠くまで行かなくて済む。
そして、この街の人々も、もっと安心して暮らせるはずだ。
ーーよし、やってやる!
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