17話 大工ギルド
噴水造りをしているうちに、俺はひとつの問題に気づいた。
この街には――仕事を頼む「仕組み」がない。
噴水と水路を作るのは、マルチェリオさんがいたから助かった。だけど市民はどうだろうか。
スキルを使ったとき、困っている人は確実にいた。
だが、現状は知人の紹介からでしか、大工に仕事を頼めていないだろう。しかも、その知人がいないとなったら…
それなら、発注する場を設けてはどうだろうか。
「大工ギルド」
そうと決まれば作ろうと思ったが、簡単にはいかない。
そう、統制をする人がいないのだ。
最初はハーレンにやらせようかと思ったが、それは申し訳ない。
その案を俺1人ではなかなかできないと思い、少しハーレンに相談することにした。
「ハーおじ、ルカだよ!」
勢いよく家の扉を開けたが、暗く、誰もいない。
商業ギルドにいるのだろうと思い開けると中は人で溢れていた。
「おっ」
思わず声が出た。
中にはおそらく二十五人ほどの人がいる。
商業ギルドの1階は居酒屋かつ、受付する場のようになっている。それにしても、朝からこんな賑わうなんて商業ギルドも大盛況だ。
話し声に耳を立ててみた。
「おい、あれ聞いたか、噴水ができたときに、祭りやるんだってな。」
「そうそう、屋台出していいみたいだぞ。これは職人の腕がなるぜ。」
ーーよし!しっかり祭りの広告は行き渡っているな!
そして、この会話の奥には書類を机に何枚も重ねて、大変そうにしているハーレンがいた。
日がちょうど一番強くなった頃、ようやくハーレンがひと段落ついたようだった。
ハーレンには申し訳ないけど、もう一度働いてもらおう。
「ハーおじ、こんにちは。」
「おお、フォル。商業ギルドの人数すごいだろ。マルチェリオさんに感謝だな。」
「そうだね。マルチェリオさんには祭りの時一番いいところをあげたいね。」
「それで、話があるんだけど…」
「確かに、自ら来るなんてどうしたんだ。」
「実は大工ギルドを作ろうと思ったんだ。」
「大工ギルドか。いいな、また商業ギルドみたいに作るのか?」
「大体は同じ感じかな。」
「だけど、それに発注するってのを付け足したイメージだ。」
「発注?」
ーー前世の冒険者ギルドの仕組みと同じでいいよな…
「そう、発注だ。今俺たちは職人さんたちに直接依頼するのが難しいだろ。それは市民も同じだ。だから、大工ギルドでその依頼をするってわけだ。」
「なるほど。だけど、商業ギルドみたいに一人一人相手していたらキリがなくないか?」
「そう。だから、掲示板に依頼したい内容を貼り付けて、それを大工が勝手に取っていくって感じだ。」
「おぉ、それいいな。まぁ、あまり変わんないんだな。」
ーー完全に冒険者ギルドのパクリだ。だけどこの世界では関係ない。ギルドはこの街にしか存在しないからな。
「なるほどな。とてもいいと思うぞ。だけど、誰がそれを管理するんだ?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた!商売ギルドの2階が空いてるよね?そこ…」と、話し始めると、
「ん?いや、空いていないぞ?」とハーレンは話を遮ってきた。
「そんなはずはないぞ、見てくるか。」
そう言い、歩こうとした。
「ちょちょ、フォル落ち着け。一旦座ろうな?な?」
明らかにハーレンは動揺していた。まるで俺を2階に上がらせないようにと。
どこか怪しかったので、俺はスキル【読心】を使った。
『2階は俺の秘密基地だ。どうにかして、フォルをここに留めないと……』
ーーあっ、こいつ完全にやってるわ。
俺はハーレンの掴む腕を振り解き、2階へ上がった。
するとそこには、女の子の写真が一枚だけ飾られていた。
「はーおじ、これはどう言うことかな?」
「ごめんよ。でも今、商業ギルドを一人で回してるだろ…だから、いっときの癒しが欲しかったんだ…」
この言葉に違和感があった。
ハーレンは従業員が欲しい。そして、女の子が欲しい…
「!」
「ギルド嬢を雇うことにしよう!」
「ん、ギルド嬢ってなんだ?お嬢様か?」
「いや、違う。ギルド嬢はギルドで受付とかして働いてくれる女の子のことだ。ギルド嬢がいれば役割は分散されて、女の子にも癒やされるだろ。」
ハーレンはこの言葉を聞いて、俺を女神のように見つめた。
ーーだが、本題は別だ。大工ギルドを作らないといけない。そうだ!ギルド嬢を雇う代わりにハーレンには大工ギルドの管理もしてもらおう!
「ハーレン、ギルド嬢を雇っていいから、大工ギルドの管理もしてくれないか?」
「ふっ、俺に任せろ。ギルド嬢とやらさえいれば、俺は24時間365日働ける気がするぞ!」
さっきまでの絶望はどこへやら、ハーレンは鼻息を荒くして拳を握りしめている。
ーー単純だ。単純すぎて、逆に利用しやすい。
「じゃあ、2階は大工ギルドの受付にするからね。秘密基地は撤去だよ」
「うっ…写真だけは返してくれ」
こうして、この街に冒険者......ではなく大工ギルドが誕生することになった。
3日後の祭りは、そのお披露目に絶好の場だ。
俺たちはその祭りに向けて、準備を進めるのであった。
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