第伍夜 炎を纏う走行痕
時刻は十八時頃、
空は段々と暗くなってきていた
時を同じくして、場所は逢魔病院前
バイクの走行音が響いたかと思えば、そこには炎の路があるだけであった
華奢な女子高生「ねぇ、聴いた事ある?炎を纏った走行痕のうわさ」
気だるそうな女子高生「なにそれ?私聴いたことないかも」
華奢な女子高生「えっとね、時間は大体十八時頃なんだけど、その時間になると決まってバイクの音が聴こえるらしいの」
気だるそうな女子高生「ただ単にバイク走ってるだけじゃなくて?」
華奢な女子高生「いやね?そう思って見に行ってもバイクはおろか、そこには人影すらもないんだって!
あるのは炎を纏った走行痕だけ!」
気だるそうな女子高生「なにそれ怖ぁ…」
華奢な女子高生「ね?怖くない!?」
逢魔病院にて妹の容態を確認しに来た禍刻は医師に話を聞いていた
禍刻「霊華の容態はどんな具合ですか?」
医師「まだなんとも…ただ、少なからず躰がモヤに覆われてきていますね」
禍刻「躰がモヤに!?」
医師「見てみますか?」
医師はそう言うと禍刻を霊華の下へと案内した
そこには、確かに微量ながら瘴気を纏った霊華の姿があった
禍刻「そんな…」
医師「このモヤなんですが、相当念の強い呪いの様なものではないかと」
禍刻「呪い…ですか」
禍刻がそう言った直後、病院内に響き渡る様にバイクの走行音が聴こえてきた
禍刻「バイク?」
医師「恐らくは今噂されているものかと」
禍刻「噂ですか?」
医師「聴いたことはないですか?大体今頃の時刻になると決まって聴こえてくる走行音の噂を」
禍刻「そんなものがあるんですね」
医師「えぇ、そこの赤鬼さんは何か勘づいているのでは?」
酒呑童子「あぁ、恐らく妖の仕業だろうな」
禍刻「なら!」
酒呑童子「あぁ、行くぞ禍刻!」
医師「やれやれ、相変わらず人遣いが荒いのは変わらないようですね酒呑童子様は…」
病院前に来た禍刻達は炎を纏った走行痕を発見した
その走行痕には微量の瘴気が混じっており、やはり妖の仕業だろうという結論に至った
禍刻「この瘴気は、やっぱり」
酒呑童子「だろうな、禍刻!この痕を辿るのだ!」
禍刻「おう!」
それから暫く走行痕を辿っていくと、逢魔町の外れにある小さな倉庫に辿り着いた
禍刻「ここは…」
酒呑童子「倉庫の様だな」
禍刻「ここは確かバイク専門店だった筈だが...」
酒呑童子「見る影もないな」
禍刻「いや、違うんだ。見てくれは倉庫だが、入口付近に小さく書いてあるんだよ。ほらな?」
禍刻が指を指した先には『逢魔二輪店』の文字が確かに書かれていた
酒呑童子「ならば、この倉庫の中に例のバイクがあるのか?」
禍刻「わからない。とりあえず入ってみようぜ?」
酒呑童子「そうだな」
二人は錆び付いた扉を潜り店の中へと入っていく
扉を潜ると多くのバイクが並んでいた
禍刻「おーい!!おっちゃん!いるかー?」
イカつい男「あ?誰だ!って禍刻じゃねぇか!
どうしたこんな時間に」
禍刻「いやぁ、ちょいと野暮用でな」
イカつい男「ほう?野暮用ねぇ…まさか例のバイクの噂か?」
禍刻「知ってんのかおっちゃん!」
イカつい男「知ってるも何も、あのバイクはウチの敷地内でウロチョロしてんのよ!」
禍刻「バイクがウロチョロしてる?どういう事だよそれ」
イカつい男「言葉の通りよ
最初は敷地内を二~三周するくらいだったんだがいつの間にか逢魔中を走り回るようになったみたいでよ」
禍刻「なるほどな、おっちゃん。そのバイクは今どこにあるんだ?」
イカつい男「あぁ、多分ソコで停車してんじゃねぇか?」
男が指を指した方向には確かにバイクが停車していた
禍刻「ありがとうおっちゃん」
イカつい男「おう!どんな用でも構わねぇからたまには顔見せに来いよ?禍刻」
禍刻「わかってるって!」
そう言って禍刻はバイクの下へと走り去っていく
その後、イカつい男は酒呑童子の方を向き語りかけた
イカつい男「お久しぶりですね。酒呑童子様」
酒呑童子「お前は…ぬらりひょんか?」
イカつい男「左様でございます。懐かしき気配が近づいて来たかと思えば、まさか酒呑童子様であったとは」
酒呑童子「結界の守護を命じていたはずだが、一体ここで何を」
イカつい男「結界の守護は続けておりますよ?ただ、守護だけでは暇なのでバイクの専門店でも立ち上げようかと思いましてね」
酒呑童子「なるほどな。まぁ好きにするといい」
イカつい男「此処では岩井翔と名乗っております。酒呑童子様、禍刻の事任せましたよ?」
酒呑童子「分かっておる!」
二人が話終えると禍刻が戻ってきた
禍刻「おい酒呑童子!何してんだよ!」
酒呑童子「すぐに行く!待っておれ」
岩井「では、また会える時をたのしみにしております」
酒呑童子「あぁ、またな」
酒呑童子が禍刻の下へ行くと、ソコには瘴気を纏ったバイクがあった
禍刻「どう思う?」
酒呑童子「あぁ、このバイクは妖だろうな」
禍刻「やっぱりか。炎を纏ったバイクってことは火車か?」
酒呑童子「だろうな。火車とは本来地獄への導き手のはずだが…この所業は一体…?」
酒呑童子がそう言った直後、瘴気を纏ったバイクは腕と脚に鎖が装着され躰を炎に包んだ鬼の様な見た目へと変化した
禍刻「これが、火車?」
酒呑童子「禍刻!離れろ!」
禍刻「えっ!?」
禍刻は酒呑童子のその一言で咄嗟にその場から飛び退いた
その直後、禍刻の立っていた場所から火柱が上がった
禍刻「なんだよこれ!?」
酒呑童子「恐らくヤツの力だなそんなことはいい!!今はヤツを止めるぞ!」
禍刻「だな、現世を乱す妖よ!その魂、浄化してやろう!」
禍刻がそう言うと、禍刻の腰に逢魔ドライバーが出現する
そして、逢魔ドライバーに禍魂を装填する
その途端に
《逢魔!定刻…鬼!!》
という音声が周囲に響き渡る
直後、おどろおどろしい待機音が響き渡る
禍刻が刀を抜刀すると同時に音は止まり、禍刻の躰は炎に包まれる
炎が晴れると、赤鬼の様な姿が現れる
禍刻「よし!これで!!」
酒呑童子「まて禍刻!このままではヤツに勝てぬ。ヤツは炎を操る。そして、今の我らの力も炎を操る」
禍刻「ならどうやって!?」
酒呑童子「やれやれ、もう忘れたのか?水虎の禍魂を」
禍刻「そうか!あれなら」
禍刻は水と刻まれた蒼い禍魂を取り出し、ドライバーの左側に装填すると、
《逢魔!鬼…水!!》
という音声が流れ
禍刻は水柱に包まれた
水柱が無くなると、その姿は体が蒼くなり、所々の装飾が翠へと変化していた
禍刻「よっしゃ!これなら!!」
美しく響く謎の声「段々と力が戻ってきた…この躰と融合できる日も近いか…」
次回 仮面ライダー逢魔ヶ
女子高生「ねぇ、実はさ、まだあるんよ!」
六華「そういえばあるんだよ!情報!!」
茨木童子「この音は…」
六華「これって…」
絶望の先に待つ未来は、終焉か安寧か




