第弐夜 水面に映る陰
時は平安、都には数多くの魑魅魍魎が溢れかえっていた
その妖達の中心に、一際大きく、眩い光を発する者がいた
丸い太陽の様なその妖は、眼前の天使の様な者と睨み合っていた
しかし、いつしかその均衡が崩れ、現世から妖達が消え去ってしまった
時は流れ、現代の逢魔病院にて、刀を携えた青年は妹の容態を確認しに来ていた
医師「禍刻君…なんで刀なんて持ってるの?」
禍刻「あぁ、これは色々と理由がありましてね」
医師「その理由って、君の後ろにいる赤鬼の事かい?」
禍刻「えっ!?コイツのこと視えるんですか?」
医師「まぁね?」
禍刻「霊能者かなんかですか?」
医師「うーむ、なんと説明すればいいか...」
医師がそう言いかけた瞬間、病院の外から悲鳴が聴こえてくる
禍刻「悲鳴!?」
酒呑童子「禍刻、妖の気配だ」
禍刻「行こう!」
悲鳴の聴こえた場所に着くと、そこには大きな甲羅を背負い、嘴の生えた妖が女性の腕を掴みあげていた
禍刻「おい!そこの妖!!」
甲羅を背負った妖「!?」
酒呑童子「そいつを離してもらおうか?」
甲羅を背負った妖「…!!」
甲羅を背負った妖は暫く停止し、直後に襲いかかってきた
咄嗟に禍刻は刀で攻撃を抑える
酒呑童子「禍刻!禍魂を使うのだ!!」
禍刻「おっけー!!」
禍刻が逢魔ドライバーに禍魂を装填すると、謎の音声が周囲に響く
《逢魔!定刻…鬼!!》
音声の後におどろおどろしい待機音が止むことなく鳴り続ける
禍刻が刀を鞘から抜くと、禍刻の躰を炎が包み込み、同時に待機音も止まった
禍刻「よっしゃ!こっからはオレのターンだ!!」
甲羅を背負った妖「!!」
酒呑童子「禍刻!逃げたぞ!追え!!」
禍刻「承知!」
妖の逃げた先は大きな湖だった
湖の中に飛び込むと、妖は姿を消してしまった
禍刻「くそ!!どこ行きやがった!!」
酒呑童子「禍刻!気をつけろ!此処は奴の領域だ!」
酒呑童子が叫んだ直後水の中から甲羅を背負った妖が飛び出してきた
そして、禍刻に掴みかかり湖へと引きずり込もうとしだした
その直後、何処からともなく声が響く
少女の声「その人から離れなさい!」
若い女性の声で妖は一瞬停止してしまった
その隙を逃すまいと禍刻は刀を切り上げた
すると、妖から邪気が消え去り禍魂が転がり落ちた
禍刻「これは禍魂か?」
酒呑童子「そのようだな、やはり瘴気に蝕まれておったか」
妖は正気を取り戻し、禍刻に対して軽く礼をして湖へと消えてしまった
禍刻「今のって河童だよな?」
酒呑童子「そうだな、しかしアイツは河童とは別種だな」
禍刻「別種?」
酒呑童子「あぁ、水虎といって水を自在に操り、水中を我がものとする妖だ」
禍刻「なるほど水虎か、道理で河童に似てるわけだ」
禍刻がそう呟いた直後、近くの茂みから少女が飛び出してきた
少女「まーが兄!!」
禍刻「うわ!急になんだよ!!って、六華!?」
六華「禍兄大丈夫だった?」
禍刻「大丈夫だったけど、どうしてお前が此処に?」
六華「霊華が植物状態だって聞いて心配で見に来たら、さっきの河童みたいなやつに襲われたの」
禍刻「そうだったのか、お前こそ大丈夫なのか?」
六華「うん、大丈夫だよ」
禍刻「そうか、良かった。霊華の所へ行くなら一緒に行こうか?」
六華「いや、さっきお見舞いしてきたから大丈夫だよ」
禍刻「わかった、気をつけろよ」
六華「うん!じゃあね禍兄」
そう言うと、少女は走り去ってしまった
酒呑童子「嵐のような娘だな」
禍刻「確かにな…」
病院前の木の上には青い鬼の様な怪人が座り込んでいた
青い鬼は、少女を見つけて呟いた
青い鬼「漸く見つけました。我が主の手助けとなる存在を…」
青い鬼は、暫く苦笑した後姿を消してしまった
禍刻「しかし、この禍魂って水虎だろ?」
酒呑童子「あぁ、そうだな」
禍刻「水としか彫られてないけど、これを逢魔ドライバーに装填すれば水中を泳げるのかね?」
酒呑童子「だろうな、今度試してみるといいだろう」
禍刻「そうだな、今度試してみるか」
美しく響く謎の声「ふはははは!!いいぞ、もっと妖を倒し力をつけるのだ!さすれば我が魂とこの躰が融合できる!!」
次回 仮面ライダー逢魔ヶ
青い鬼「貴女、深い絶望を抱いていませんか?」
少女「信じて良いのね?」
青い鬼「交渉成立…」
少女「何?この姿…これが私?」
絶望の先に待つ未来は、終焉か安寧か




