追憶の水晶
「何で…助けてくれたの?俺…あんな…」
「仕事だ仕事。約束だしな。死んでもらっちゃ困るの!」
レオンは軽くルウガの頭を叩き、奥へと向かう。
それを見て慌てて起き上がるルウガ。
「ど、どこ行くんだよ?」
「待ってろ!すぐ戻ってくる」
そう言ってレオンが暗闇に消えたのを確認すると、ルウガは先程の事を思い出し始める。
しばらく起きなかった発作が起きた。
極度な力とミラの使いすぎと疲れがそうさせたのだろうが、ルウガには恐怖が植え付けられてしまった。
幼い頃に何回か体験して以来起きていなかったせいもあり、あの苦しさがかなりの恐怖になったのだ。
息ができない
武器も持てない
動けない
喋れない
怖い…怖かった…
もしレオンが来てくれてなかったら確実に死んでいた。
発作があんなに苦しかったなんて信じられない。
あれがまた起きるなんて考えたくもない。
怖い…
怖いよ…
…誰か…
「…ぃ!おい!しっかりしろ!!まだ発作があるのか!?」
「…レオン…」
いつの間にか帰って来ていたのだろう。
ルウガは涙目でレオンを見上げる。
「…泣いてんのか?」
「な…泣いてないよ…」
「…泣いてんだろ…」
「泣いてなんか…ないってば…」
否定する度に涙がポロポロ落ちる。
こすってもこすっても涙は止まらずにルウガの頬を伝っていく。
「どうしたんだよ?」
「……発作が…怖かった…また来るのが怖い…」
「そっか…」
そう言った瞬間に、レオンが持っていた何かが光り始める。
「?」
「あぁ、これは『追憶の水晶』この塔の名前の由来にもなったアイテムだな。過去を知ることができるんだ」
二人で水晶を覗き込むと、そこには二人組のレイヴンがいた。
「あ!父ちゃん!!」
「え!?お前の親父?」
「うんっ。会った事はないけど、写真で見た!」
{あーあー、テストテスト}
{止めてくださいよ、さっさと行きましょうよ!}
{うるせぃ!ちょっと黙ってろ}
「父ちゃん、なんか見た目通りって感じ」
「だな」
{あー、これから話すことは一般の人様には関係ないが、悪く思わないでくれ}
{謝るくらいならしなきゃいいのに…}
{ルウガ、お前は無事に生まれてきたか?}
「おっ俺!?」
「どうやらお前宛てのようだなルウガ」
{ルウガって名前は俺が決めた。気に入ってくれてると信じている。お前も最上階までこれたか…流石俺の息子だな}
「父ちゃん…」