誤りと無茶という失敗
「(なんだ…?団員がやられてんのに、なんで焦らないんだ?)」
ルウガは双硫剣を振るいながら疑問を抱えた。
相手はどんどん減っている。だが相手が死んだわけではない。
ブラッター団の戦法に裏があることに、ルウガは気付かなかった。
レイヴンの体力を削り、疲れさせた所でとどめをさす。
これがブラッター団の戦法だ。
つまり、ルウガはまんまと相手の策略にはまっていたと言うことだった。
頭以外の全ての団員達を倒し終わり、ルウガは肩で息を吸いながら頭に剣を向けた。
「はぁー…あんたが…最後だ…」
「はっ、甘いな」
「は…?」
「お前が体力を失い疲れさせるためのこいつらって気付かないバカだっつー意味だよ!!」
「なっ!?」
「こいつでとどめだ!出てこいモノノケぇ!!」
頭が呼ぶと、奥の方にいた巨大な何かがこちらに近づいて来る。
ズシン…ズシン…
足音が塔全体に響く。
かなりの大きさだ。
ようやく見えたソレは、モノノケが何体も合体したとしか考えられないほどでかかった。
「レ…レベル10!?」
「そうだ。こいつのレベルが上がったらよ、塔にいたモノノケは全員逃げちった」
だからモノノケがいなかったのか…。
ルウガは塔でのことを納得した。
「行けっ!!」
「ヴォオォオーー!!!」
けたたましい泣き声が部屋に響き、オークに近いモノノケがこちらに走ってきた。
スピードが速い。
避けるのは間に合わない。
ルウガは腹を決め、全身の力とミラを一気に解き放った。
「レイヴ化ぁあー!!」
ルウガの髪がゾワッという音を立てて鮮やかな赤色に変わり、瞳は深紅へと変わる。
そして体の周りに金色のベールのようなものがルウガを包み込む。
これは肉体の防御にもなる有り難いものだ。
モノノケの突進を軽々と受け止めると、ルウガは足を中心に二つの剣でモノノケ切り刻んでいく。
連続的にダメージをくらい、モノノケは雄叫びを上げて逃げようとするが、ルウガはそれを許さず足に強いダメージを与える。
モノノケがよろめき始め、ルウガは最後の一撃として剣をモノノケの頭部へと狙いを定め構える。
頭は既に顔を青くしていた。
「これでしまいだぁ-…!!?」
突然ルウガの叫びが途切れる。
叫びだけではない。
レイヴ化もとけてしまった。
「かッ…は……い…いきが……」
発作だった。
今ルウガを襲っているのは、しばらく起きなかった発作だった。