旅立ちの町アクテス
「じゃ、無理はしない程度に頑張るよ。村ちょ…いや、じ…じいちゃん」
「ん?なんじゃ?ルウ」
村の人達は皆ルウガのことをルウと呼んでいた。
村長はルウガを、孫を見るような目付きで見つめた。
村長とルウガは、丸で家族のように生活してきたが、ルウガが村長を「じいちゃん」と呼んだのは今日が初めてだ。
「…って、呼んでも良い?」
「もちろん良いとも」
「い、い、今まで育ててくれて…ありがと」
「うむ」
恥ずかし気にお礼を言ったルウガに優しく微笑んでくれた村長につられ、ルウガもパッと笑顔になる。
「行ってきまーす!」
「気をつけてな~」
…***…
村を離れ、ルウガは道中しばしば現れる『モノノケ』と戦いながらアクテスへの道のりを進めていた。
モノノケとは、死んだ人の魂や悪意が実現化した魔獣であり、人々から生命エネルギー…すなわち『ミラ』を狙って襲う習性がある。
人々はミラがなければ生きていくことはできず、ミラを全て失えば命を失うこととなるのだ。
ミラをどう工夫して使うか、変換するか、使い方によってミラは絶大な力となる。
モノノケにはレベルがあり、合体した回数によってレベルがあがる。
レベルが低ければ低いほどモノノケは弱いが、合体すればかなりの強さになる。
他にモノノケにも種類があるのだが、それは次の機会に説明するとしよう。
「おっ、見えてきたー!あれが旅立ちの町アクテスか~…よーし!」
ルウガはわくわくしながら、お供と会う場所である時計台を勢い良く、
・・・・・
通り過ぎた。
「へへっ、お供なんか冗談じゃねぇっつ!?いってぇ~…」
勢いを付けすぎたせいか、前を歩っていた人にぶつかり、尻餅をついた。
相手が鎧を着ていたがために、鼻を押さえる。
「痛ぇなくそガキ…」
「謝りも無しかよ」
どうやら相手は二人組らしい。
鼻を押さえながら相手を見ると、いきなり胸倉を掴まれるルウガ。
「おーおー、無視ですか?」
「こいつレイヴンじゃね?この髪飾り」
「ほぉーう、じゃあぶつかった詫びにこれ貰おうぜ」
「はっ!?」
胸倉を掴む手を振りほどこうとするが、相手は大人。勝てる訳がない。
やっと貰えた髪飾りに容赦なく手を伸ばしてくる鎧男の顔を、ルウガは確認する。
どう考えても悪人面だ。
「(仕方ない…!こうなったら…)」
少し躊躇いながら、ルウガは体中に力を溜め、
金色の髪を、
黄金の瞳を、
全身を奮い立たせた…