女酔いの王奏蒼
クラティス王国…
そこは、世界一の経済力と国民支持を得ている大国だ。
だが、その王国までも、歪み始めていることに…
誰も気付いてはいなかった…
…***…
「うっわぁ~~!!すっげぇーデッケー!」
「お前、クラティス来るの初めて?」
「うんっ!じいちゃんから聞いてたけど、やっぱ実物はすげぇ!」
はしゃぎ興奮するルウガに、レオンは優しくほほ笑みを返した。
すると、慌てて隣を過ぎ去る者が多いことに気が付く。
「何かあったんですか?皆、慌てていますが…」
「知らないの!?今日ジパーグから国王様が来てるのよ!!」
「国王!?」
ジパーグといえば、トライアス大陸の東側にあるジァンヌ列島を制している、クラティスには劣るが国王の人気がとてつもない国だ。
「俺国王様に会いたいっ!会いに行こうよレオン」
「え?別にいいけど」
二人はその国王がいるという酒場へ向かった。
なぜ酒場?
と思いつつ、ルウガは期待を膨らませて行った。
国王といえば、なんか…かっこいくて誠実で凄い人なんだろうな…と妄想しながら、ルウガは酒場の戸を潜った。
が。
「きゃー!!奏蒼様ー!!」
「素敵~♪」
「まぁまぁレディー達、俺を取り合わないでくれ、平和的にやろうぜ?」
「「きゃあああー!!!かっこいい~!!!」」
「な…なんだ?」
酒場に入ると、女、女、また女。
女性達が一人の身なりの良い成年…奏蒼を囲んでいた。
まさにハーレム状態。
すると、奏蒼がこちらに気付いてやって来た。
「これは可愛らしいお嬢さん、お近づきの印に、口づけを」
と行ったかと思えば、ルウガの右手を取り、甲にキスをした。
これにはルウガもレオンも気が気ではなく、黙ってはいられない。
ルウガは呆然としていたが、事の大きさを思い出す。
「なっ…ななななななな、何すんだよ!!?」
「どうしたんだお嬢さん、そんなに慌てて」
「お、お、俺は男だっ!!」
「……え?」
「だからっ!俺はお・と・こ!!」
「う…嘘だー!!!」
「マジだよ!最悪だ…」
「(^_^;)」
「何いきなり顔文字使ってんだよ」
「ごめん」
ルウガは手の甲を服に擦りつけて今の一件を無くそうとした。
レオンはまじまじと奏蒼の顔を見つめた後、はっとしたような顔で叫び始めた。
「あー!もしかしてジパーグの《女酔いの王奏蒼》!?」
「そうだけど?俺が第18代目国王奏蒼だ!!」
「えぇえぇえーー!!?」