応援しているからこそ馬鹿にする
ルウガはそのまま尻餅をついたが、立ち上がろうとはしなかった。
その態度に腹が立ったのか、青年は更にルウガに言い寄る。
「ったく、親の七光って良いよなぁー!何もしなくても有名になんじゃん」
「親の七光?」
ここで初めて、レオンが口を開いた。
「そ。こいつの父親って、あの闇魔王シィーグスを倒したエレフなんだぜ?村の名前もエレフに変わったし、結構でかい事件だったしな」
「ふ~ん…」
「だから力もねぇこいつが棚に上げられるのが気に入らない。…おい」
声に反応して、ルウガの体がビクッとなる。
「止めちゃえよ。レイヴン。ほら、これで分かんねぇからっ!」
すると青年…ゼロは、手から魔法で地面を泥に変えるとルウガの頭にかけた。
金色の髪が鈍い土色に変わる…。
ルウガはそれでもじっと動かなかったが、食いしばった歯と握り締めて震える拳がレオンには見えていた。
「あーあ、大人しくなっちゃって…マジムカつく。そこのお供さんも止めときなよ。損するだけだから」
「!」
「……」
ルウガはレオンを見つめる。
その目は行かないで欲しい、と物語っていた。
少しの沈黙の後、再びゼロが口を開く。
「つかさ、お前レイヴン辞めるんだろ?髪止め取ってやるよ」
ゼロがルウガの頭に手を伸ばして髪止めに触れる。
すかさずレオンが止めようとした。
「止め「止めろ!!」
叫んだのは、レオンではなかった。
ゼロも相当驚いているが、叫んだ当の本人が一番驚いていた。
「あ…」
「てめぇ~!」
「そこまでだ。よせ」
レオンがゼロの手を掴んでルウガの前に立つ。
ゼロは顔をしかめて背を向け、ルウガ達がいたモルバナへの行路についた。
「ま、別にいいさ。ヘタレ坊ちゃんには興味ない。悔しかったら、強くなってみろや」
「ゼ…ゼロ!」
ルウガは勇気を振り絞ってゼロを呼んだ。
「お…俺、絶対…親の七光なんかに頼らないから!だから…これからも…レイヴンとして…行くから…!」
ゼロはルウガの言葉に直接返事はしなかったものの、風魔法《告言霊》で伝えた。
『泥はきちんと拭いて、レイヴンの名に塗るなよ!今度会ったら、その弱虫は直しておけ!』
これは直接言えなかったが、ゼロのルウガに対する優しさなのだろう。
「良かったなルウガ」
「うん!俺、昔とは違うってこと、きっとゼロに証明してみせるよ!」
もう見えかけているクラティスへと、一行は再び向かい始めた…