バカでも苦手なもの
「あっっつーい!!」
あの後ルウガとレオンは、偽レオンをボコボコにしてモルバナを後にし、トライアス大陸一…いや、世界で一番大きい国のクラティス王国へと向かっている道中だった…のだが。
クラティス王国の周辺は不思議な気楼に包まれており、気候の変化がかなり激しい。
そのため、今は真夏の砂漠並の暑さになっていた。
「暑い暑い暑い暑い暑すぎ!もー無理!足疲れた暑いおぶってレオン~!」
「おぃおぃレイヴン様が何言ってんだよ…。第一、お前がクラティス王国に行きたいって言い出したんだろ?」
「うー…」
ルウガは呻いた後、突然地面にバタリと力なく倒れ込んだ。
そのまま音沙汰が無かったので、案の定レオンは
「まさか…」
と言葉を漏らしてすぐさま駆け寄る。
「おい!また発作が起きたのか!?」
声をかけた瞬間、ルウガは顔を上げてにへら笑いでレオンに言った。
「騙されたー!バッカが見る~♪」
「なっ…このバカ!」
「レオンがバカだよ~」
「………」
それを聞かされるや否や、レオンは厳めしい顔をし、腕を組んで足を鳴らす。
ルウガは慌ててその場に座り直し、素直に謝罪する。
「ごっごめんレオン!悪気は無かったよ!ほら、ちょっと調子に乗っちゃったて言うか…」
弁解していると、レオンの手がルウガの手を引いた。
「あ、許して「どけっ!!」
怒鳴られレオンが片手でルウガの体を浮かせて自分の隣へ動かす。
するとルウガがいた元の場所には大穴が開き、蟻地獄が出来上がっていた。
中心を見ると、モノノケの姿がある。こいつの仕業だ。
「砂漠の食人花メンクイバだ。入ったら最後、骨の随まで食われちまう」
「そうなん…だっ!?」
「ルウガ!!」
台詞を言い終わる前に、ルウガの足にはメンクイバから伸ばされた触手が巻き付き、空中で捕らえられてしまった。
「ちょっ…レオン!俺今ヤバい?」
「気を付けろ!メンクイバの触手には痺れがある!」
「あ…うゎ…」
ルウガの耳にはレオンの言葉は入っていない。
ルウガは小さいレオンと遠い景色と地面がぶれて見えている。
大人しいルウガは様子が明らかにおかしい。
「どうした!?」
「レ…レオン、俺…高所恐怖症なんだ…うぇ…」
「はぁ!?」
なぜ高所恐怖症なのか。
それは、ルウガがまだ5歳の頃に起きた、ある事件を境目になった…。