《レイヴン》とは
ここはトライアス大陸の北に聳える山、グラッカ。その渓谷にあるエレフ村には、勇者になるべく血と体を受け継いだ貴族がいた。
彼等は《レイヴン》と呼ばれ、普通の人間よりも強固な肉体や力、能力を持ち、更に最大限力を放出する《レイヴ化》を行う事が出来る。
そして、その力をレイヴンは、いわゆる《勇者》として活躍させる道を選んだ。
人々に希望を与え、災害や危険から守る事を使命とし、レイヴンは数少ない希少貴族となりながらも、世に名を残し続けていた…。
…***…
~エレフ村~
「村長!俺十二歳!!レイヴンの証くれよ~!」
「どわった!!」
只今の時刻は朝の五時。
普通ならまだ寝ている時間だろうが、少年ー…ルウガは寝ていた老人の玄関で叫んだ。
単なる押しかけ迷惑としか言えない。
「朝の五時に来る奴がおるか!バカタレが…」
「村長ー、俺一刻も早く立派なレイヴンに成りたいんだよ~」
ルウガは縋るような目つきで村長を見つめた。
それを制すように、村長は手を上げて話し始める。
「分かっとる、お主はもうレイヴンとして十分な素質を持っている。」
「!それじゃあ…」
「だがのぅ…出来れば行かせたくないじゃよ…」
「なんでよ!?」
何回も同じ言葉を言い聞かされ続けて早二年。
本当ならレイヴンと名乗り始め、レイヴンになるための修行に出て良いのは十歳。
だがルウガが旅立つのが遅れているのは、村長がいつまでたっても、レイヴンの証である《竜の髪止め》を渡してくれないからだ。
十一歳になったら、十二歳になったら…歳を重ねろと渋り続ける村長に、ルウガは痺れをきらしていた。
「だーかーら~!!なぁーんで俺は行っちゃ駄目なの!?」
「うむぅ…理由はなくは無いが…言えん」
「も~~!」
朝っぱらからイライラして犬歯を剥き出しにしているルウガに、村長は家を壊されては参ると思い、仕方なく…本当に仕方なく、竜の髪止めを取り出した。
「そ、そ、村長!!ありが「待てぃ!まだやるとは言っておらん。条件を了承したらじゃ」
「条件て?」
「オホンッ!…《お供》をつけること、それが条件じゃ」
「お・と・も~!?」
信じられない条件に、ルウガは思わず素っ頓狂な声を上げた。
お供をつけたレイヴンなど、丸っきりの未熟者ですと言っているようなものだ。
強くかっこいいレイヴンを目指しているルウガにとって、お供をつける事自体嫌だった。
だが……
「うー…分かったよ」