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初恋のお姉さんの背中に飛び乗る話

作者: あおい
掲載日:2025/08/17

ここは河川敷のそばにある歩道。

僕の隣をジャージを着た女性がランニングしながら通過していく。

その女性は、少し先にある交差点で一時停止し、車が通過するのを待つために足踏みしていた。


僕はその女性に追いつくと、後ろから女性に乗っかってみる。

「えっ!?」

「お久しぶりです。先輩」

「え、、」

「あなたは友永さんですよね。」

「えっ!なんで、知ってるの?」


先輩は混乱に混乱を重ねる。

旗から見たらヤバイやつだし、実際ヤバイやつなんだけど、

優しい先輩は僕をふるい落とさずただ硬直していた。


先輩が知らないのは無理ないだろう。

僕は数ある後輩のうちの、ほんの一人だったわけだし、実際ほとんど接点もなかった。

まして、6年ぶりなのだから、覚えていたら驚きだ。

でも僕は覚えている。

だってこの人が僕の初恋の人だったから。


「あの降りてくれませんか?」

先輩は肩に乗っかっている僕を降ろしたいみたい。

「嫌です。おんぶしながら走ってください」

「えええええ」

「それか思い出してくれたら降りても良いですよ。」

先輩は深いため息をつくと、そのままランニングを再開した。


先輩は女性にしてはそこそこ身長があるので、乗っかるにはちょうど良い体だったりする。

先輩の肌はスベスベしていて、どこか甘い香りがする。その香りを嗅いでいるだけで幸せになってくる。

ポニーテールにまとめられた先輩の髪が揺れて、僕の顔にあたると、

それもまた良い。

「先輩。足治ったみたいですね。」

「えっ......うん。」


僕が陸上部に入った年から、陸上部は一層厳しい風潮に変わったらしい。

その結果、先輩は練習についていけず、怪我をして部活を休みがちになっていた。

また、僕も厳しい陸上部にはついていけずに、半年を待たずに辞めてしまった。


だから、先輩が僕を見ていた回数は、きっと10回もいかないだろう。

だから、覚えているわけないだろう。


まあだからこそ、こんな強硬な手段を取ってみようと思えたりする。


部活の見学に来た時から、僕は先輩に惚れていた。

そして先輩の体に密着したいという邪な思考が、心の中を右往左往していた。

もちろんそんなことが在学中にできるわけもなくて、僕は先輩に一度も話しかけることがなかったけど。

でも、今日先輩の姿を見かけたとき。

僕は千載一遇のチャンスに賭けてみることにした。


先輩の背中に乗っておんぶされる。


この夢は、僕の小さいころからの憧れだった。

いつか好きな人ができたときは、おんぶしてもらおうと。

僕は男なのに、女性におんぶしてもらいたいと思ってしまう人間だった。

きっとこんな感情、世間的には理解されないだろう。

でも、僕はそんな感情をずっと抱えてきた。


そして、それが現実になった。

「先輩。僕先輩のこと好きだったんですよ」

「えっ!」


先輩が驚いたように振り向く。

ポニーテールも揺れて、さらに良い香りがする。

あの匂いを僕は一生忘れないだろう。

そんなことを考えていると、先輩はまた前を向いてしまった。

でも、首の部分が赤くなっているので照れているのかもしれない。

先輩可愛いな。それにいい匂いだ。

もうこのまま時が止まってしまえばいいのに・・・。


「ねえ!今なんて言ったの?」

「聞こえてたんじゃないですか。」

「もう一回言ってよ!」


先輩はまた僕の方に向くと、顔を横に向けながら言う。

僕は先輩の耳元で囁くように言った。

「先輩のこと好きだったんですよ。」


先輩は驚いて、バランスを崩して倒れそうになったがなんとか体制を立て直す。

そしてまた前を向いてしまった。

もう首だけでなく耳まで真っ赤だ。

そんな可愛い先輩をもっと困らせたくなってきたので、僕はさらに追い打ちをかけることにする。


「僕は今でも先輩のこと、好きですよ。」

先輩はもう首だけでなく全身を赤くして、僕を落としそうになってきたが、何とか立て直してランニングを続ける。


「先輩!大丈夫ですかー」

僕のからかいに耐えられなくなったのか、先輩はさらにスピードをあげて走り始めた。

あ、これはちょっとやばいかも・・・。

そんなことを考えていると、先輩が突然倒れた。そして僕をおんぶしたままその場に倒れこむ。


「先輩!」

僕が声をかけるも返事がない。よく見ると、先輩は息も絶え絶えだった。

「先輩!」

僕は慌てて先輩のもとに駆け寄った。



◇◇◇◇◇

「うう・・・」

目を覚ますと、そこには緑があった。

どうやら私はベンチの上で寝ていたみたいだ。

でも頭の方には柔らかい枕のようなものがある。

枕なんて持っていただろうか。


でも、これはとても心地が良いので、もう少しこのままでいようと思う。

私は目を瞑り、頭を柔らかく包んでいるものに対して頬ずりをした。

なんかサラサラしているし、すべすべだ。もしかして人の太ももとか?


そう思って私が目を開けるとそこには彼がいた。彼はなぜか私を見下ろしながら本を読んでいる。

私の枕は彼の太股だったみたいだ。


「あ!先輩目が覚めましたか?」

どうやら私は倒れたあと、彼に膝枕をされていたらしい。


「あの、ごめんね」

「いえ、いいんです。それより大丈夫ですか?いきなり倒れるんでびっくりしましたよ」


そういえばさっきまでランニングをしていた気がするのだけど・・・。どうして私はベンチで寝ているのだろう。


「先輩覚えてないんですか?」

彼は少し驚いたように言う。

そして私を起こしてから説明してくれた。


あの後私が倒れて、彼が近くの公園まで運んで、看病してくれたらしい。

私の体調が戻るまで、彼はずっとそばにいてくれたらしい。


「ありがとう」

私がお礼を言うと、彼はそっと微笑んだ。

その顔触れは、見覚えがないような、あるような、、本当にどこであったんだろう。

私がボケーッと彼の顔を眺めていると、彼はハッとして立ち上がった。


「じゃあそろそろ帰りますね。先輩も気を付けて帰ってください」

そう言って彼は走りだそうとするが、私は思わず彼の服の裾を摑んでしまう。

「待ってください!」

「どうしました?」

「あの、名前を教えてください!」

「・・・小枝ですよ。」


小枝、、確か、中学生の陸上部で聞いたような覚えがある。

2こ下の後輩。私は序盤しか部活に出てなかったけど、何度か見たことがある。

ああそうか、あの子だったのか。


「ああ、思い出したよ。中学校の部活で一緒だったね」

「でも君、こんなに積極的な性格だったんだね。」

「すみません。でもどうしても先輩と話したくて、、」

「うん、大丈夫だよ。それでどうしたの?」

彼はまた私の隣に座りなおして、少し照れたように言う。


「..また言わせる気ですか?」

「うん。言って欲しいな」

「先輩、好きです。僕と付き合ってください。」


私は彼を見つめ返して答える。

「いいよ」

「えっ、まじですか。」

「突然先輩の背中に乗っかってくるような男ですよ?もともと親しくもなかったのに。」


「うん。私も君のことずっと好きだったから。」

彼は私の言葉に顔を赤くした。そして私に抱き着いてくる。

「先輩!」

「ちょっと痛いよ」

私が笑いながら言うと、彼もまた笑う。


...私も君のことずっと好きだったなんて、嘘だけどね。

当時は全然意識してなかったわけだし。

でも、今は本当に君が好き。

だから、もう少しだけこのままでいさせてね。


「先輩、そろそろ帰りましょうか」

彼は私から体を離すと立ち上がる。

私の体も彼に倣って立ち上がろうとするが、足元がおぼつかないことに気づいた。どうやらまだ本調子じゃないみたいだ。

そんな私に気づいたのか、彼が手を差し出してくれるのでそれを掴むことにする。

そして私はベンチから立ち上がり歩き出そうとするのだが、少しよろめいてしまう。

そんな私を彼が支えてくれると、私はまた彼に体を近づける。


「ねえ、家まで送ってくれる?」

「えっ、でも大丈夫ですか?結構距離ありますよ」

「うん。大丈夫。今は君と一緒にいたいから・・・」

彼は照れたような表情をしたあと、優しく笑って言ってくれた。

「もちろんいいですよ」

私達は手を繫いで河川敷を歩き出すのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇

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