第8話
俊介は、夜道を必死で走っていた。
――俺は、俺の家族を取り戻す。
俊介は、由美子と美香、啓介の顔を思い出しながら走った。
敦史に教えてもらった住所に着くと、そこには新築の家が建っていた。
俊介は、家を見つめた。
ここに俺の家族がいるのか。
俊介は震える手で、インターホンを押した。しかし、応答がなかった。俊介がもう一度インターホンを押そうとすると、家の中から笑い声が聞こえてきた。
俊介は門を入り、庭にまわった。
庭も植木が綺麗に手入れされていて、何もかもが新しかった。俊介ははやる気持ちを抑え、家の中をそっと覗いた。
――いた。
そこには、懐かしい面々が揃っていた。
「母さん、父さん、美香」
俊介が窓を叩こうとした時、美香が誰かを呼んだ。
「お兄ちゃん、こっちこっち」
一瞬、俊介は自分が呼ばれたのかと思ったが、美香の視線は自分には向いていなかった。
美香に呼ばれて現れたのは、俊介と同年齢に見える男だった。背が高く、顔も整っていた。
俊介は、その若い男が俊介2だと気づいた。
「美香、今度、勉強見てやるよ」
「えー。本当?お兄ちゃん、頭いいから助かる」
「さすが俊ちゃん。優しいんだから」
「本当にいい息子だ」
呆然と見ていた俊介だったが、ハッと我に返り、
「みんな騙されてる。あんたたちの息子は俺なんだ」
俊介は必死で窓を叩いた。
由美子と美香、啓介と俊介2が、庭にいる俊介を見た。
「俺だよ、俊介だよ。本物の俊介だよ。あんたたちの家族は俺なんだよ」
俊介は、必死で窓を叩き続けた。
しかし、誰もこの窓を開けて、俊介を家に入れてはくれなかった。
そして、四人の表情は、無表情だった。まるで俊介が見えてないかのようだった。
俊介2が立ち上がり、窓に近づいてきた。
俊介は、俊介2に向かって叫んだ。
「俺の家族を返せ」
俊介は、俊介2を睨み付けた。
すると俊介2は、俊介を見て嫌な笑いを浮かべたあと、カーテンを閉めた。
俊介は絶望し、その場に崩れ落ちた。
つづく