第7話
俊介は思わず叫んでしまった。そして慌てて、敦史に電話をかけた。敦史はすぐに出た。
「あ、俺。俺だけど」
公園に敦史を呼び出し、俊介は苛つきながら待っていた。そこに淳史がやってきた。
「おう」
のんびりした敦史に、ムカついた。
「電話がかからないんだよ」
「え、なんの?」
「チェンジだよ。家族チェンジ」
「ああ、それか」
「早くチェンジしないと、俺殺されちまう」
「大げさだなー」
「マジだよ。さっきガタイ良すぎる父親に殴られたし、ギャルの妹は足で蹴ってくるし、今度の家族は最悪だよ」
「最悪ねー」
淳史が笑いだした。
「淳史?」
「それ、全部、お前が元の家族にやってたことじゃん」
どうして今こんな事を敦史に言われるのか、俊介は不思議だった。
淳史が真顔で言った。
「もうお前はチェンジ出来ないよ」
「どういう事だよ」
「この家族チェンジ法案は、実は、子供からチェンジは出来ないんだよ。その権利を持ってるのは大人だけ」
「嘘だ。俺が電話をかけて、何度もチェンジしたじゃないか」
「ああ、あの電話受けてたの、ごめん、俺」
「お前が?」
「そう。俺。俺声優になれるかもな」
「ふざけんなよ、お前がなんで?」
「俺さ、美香ちゃんと付き合ってんだ」
「美香と?」
「ずっと、美香ちゃんから相談されててさ」
「じゃあ、家族チェンジ法案って、お前らの嘘なのか?」
「いや、あれはホント。実際、今の世の中、お前みたいに家族を大事にしない、ゴキブリみたいな輩が増えてきてるからさ」
「お前何言ってんの?全然わかんないんだけど」
「頭悪いな。お前はずっと、自分が家族を変えてると思ってただろ」
「ああ」
「そうじゃなくて、実際はお前が変えられてたんだよ」
「俺が?変えられてた?」
「そう、お前がチェンジされてたの」
「俺がチェンジされてた……」
「俺がやってたのは、お前がチェンジ出来ると思い込んでたから、お前の電話を受けて、了解しましたーって言ってただけ」
俊介はわかったようなわかっていないような、よくわからない気分になっていた。
ただ一つだけわかったのは、自分がチェンジされていたということだけ。
「理解した?」
敦史が、俊介の顔を覗き込んできた。
「俺の元の家族はどこにいるんだよ」
「知りたい?」
「頼む。教えてくれ。俺は、俺の家族に謝りたい。家族を取り戻したい」
俊介は、真剣な表情で淳史を見つめた。
「わかったよ」
「ありがとう」
やはり持つべきものは友達だと、俊介は敦史に向かって深々と頭を下げた。
そんな俊介を、淳史がじっと見つめていた。
その表情からは、何も読み取ることが出来なかった。
つづく