第6話
俊介は、慌てて周りを見回した。
「泥棒?」
その時、部屋に入ってきた女の子が、俊介の背中にドンっとぶつかった。
その女の子は、異様な程化粧が濃かった。
――こいつは美香3だな。新しいタイプの妹か。化粧濃いいけど、結構可愛いじゃん。
俊介が、美香3に笑いかけようとした時、「邪魔」と怒鳴りつけられた。美香3は、思いっきり俊介を突き飛ばした。
「どれ着ようかなー」と言いながら、美香の服を自分の身体に合わせては投げていた。
「なに、これ。ダサい服ばっかじゃん」
「美香……なんだよね?」
「当たり前じゃん。馬鹿じゃね」
「ギャルだ」
「ちげーよ。ギャルはもう死語だっつうの」
「そ、そうなのか……ってそんなことより、部屋片付けろよ」
「あんた片付けといて」
「あんたって、俺はお前の兄貴なんだぞ」
美香3が、俊介のお尻を足で蹴った。俊介は前につんのめり、あと少しで転んでしまうところだった。
「痛い」
美香3が鼻で笑い、お尻を振りながら、部屋から出ていってしまった。
俊介は、散らかった部屋の真ん中で、呆然と立ち尽くしていた。
「チェンジだ!チェンジしてやる」
俊介が携帯をかけようとしていると、分厚い男の手が伸びてきて、俊介の携帯を取り上げた。
驚いて俊介が見上げると、大柄で体格のいい男が立っていた。
俊介はびびりながらも、果敢に言った。
「お前、誰だよ」
そう言った瞬間、俊介は男に殴られ吹っ飛んだ。
「何すんだよ」
「お前とは何だ。父親に向かって」
「父親……」
俊介は男を見上げながら、啓介3だと思った。
――最悪だ。勘弁してくれよ。こんなガタイの良すぎる父親いらねーし。だいたいさっきのケバい女もいらねーし。俺の理想からどんどん離れていってる。これじゃあ、元の家族が一番マシじゃないか。
啓介3が、鼻息荒く俊介を威嚇してきた。
「悪かったって。だから、携帯返してくれよ」
「お前は謝り方も知らないのか」
「……ごめんなさい」
「そうだ。それでいい」
啓介3が、俊介に携帯を返した。俊介は携帯を握りしめ、恨みがましい目で啓介3を見た。
やっとの思いで自分の部屋に戻った俊介は、殴られた場所を鏡で写し見た。痣になっている。
「覚えてろよ。絶対チェンジしてやるからな」
俊介は、昨夜かけた電話番号に電話をかけた。
『この電話は、ただいま使われておりません』
という機械音が流れてきた。
俊介は驚いて、もう一度電話をかけ直した。
しかし、もう一度同じ機械音が流れてくるだけだった。
「どういうことだよ!」
つづく