第5話
翌日、俊介が学校に行くと、敦史が駆け寄ってきた。
「新しい家族、どうだった?」
「あれ、全然ダメ。使えない」
「そっか。それは残念だったな」
「大丈夫。もうチェンジしたから」
何か言いたげな敦史の表情が気になり、俊介は問いかけようとした。その時チャイムが鳴り、敦史が自分の席に戻っていってしまった。俊介は、あとで聞けばいいかと思い、前を向いた。
教師が入ってきたが、表情が暗かった。
「皆さんに、悲しいお知らせがあります」
俊介は、教師の方を見た。
「同じクラスの金継守くんが、昨夜、自宅で自殺したそうです」
女子たちの悲鳴が、教室に響き渡った。
生徒たちは、動揺を隠せなかった。教室の中がざわついていた。俊介も驚いていた。
教師が話を続けた。
「遺書が残されており、チェンジによる自殺だそうです。何度も何度も家族が変わってしまう変化に耐えられない、と書いてあったそうです」
暗い教室の中に、俊介が入ってくる。
金継守が首を吊ろうとしていた。守の足元には、椅子が置いてあった。
「やめろ」
俊介が、守に駆け寄った。
守は恐ろしいものでも見たような表情で、
「お前なんかいらない。お前なんかいらない。お前なんかいらない」
とブツブツ呟き続けていた。
俊介は怖くなって「何言ってんだよ」と怒鳴るように言った。
その時、守が大きく目を見開き、叫んだ。
「チェンジ!」
守が、足下にある椅子を蹴った。
暗闇の中、守の身体がゆらゆらと揺れている。
俊介は、悲鳴を上げた。
そこで目が覚めた。
気づくと、教室の中だった。いつの間にか寝てしまっていたようだった。
「工藤くん、大丈夫?」
教師が声をかけてきた。
「……大丈夫です。すみません」
俊介は、額を流れる汗を手で拭った。
敦史がそんな俊介を、じっと見ていた。
長い一日が終わり、俊介は敦史と一緒に家に向かって歩いていた。
「だいたい金継の奴、変化に耐えられないってさ、自分が家族変えてんのに。それで自殺するって意味不明だよな」
俊介はずっと持っていた疑問を、敦史にぶつけた。
「罪の意識ってやつじゃないかな」
「なんだよ、それ?」
「何回もチェンジされて、自殺する人も多いらしいからさ」
俊介は、昨日の由美子1の言葉を思い出した。
『実はあたし、あなたで三人目なのよ。もうこれ以上、家族を失いたくないの。だから仲良くしましょうね』
そういえば似たようなことを言っていた。
「そんなの、チェンジされる自分が悪いんじゃん」
「まあ……な」
「今日はどんな家族が俺を待ってんのかなぁ。楽しみ楽しみ」
俊介は、守の一件は忘れることにした。
家に帰ると、家の中が泥棒に入られたように乱れていた。
つづく