data.13/ 初めての努力
療法士さんが言っていた。
「リハビリを受けられるのは、診断日からおよそ百五十日間が目安」だって。
たった五ヶ月しかない。
その限られた時間の中で、私は車椅子での自立。凛は歩行補助具を使っての歩行を、目標に掲げていた。
当然、リハビリの内容もぐっと厳しくなった。痛みも、不快感も、日に日に増していく。でも私は、ほんのわずかだけど皮膚の感覚が戻ってきて、凛も立ち座りの訓練に真剣に取り組むようになっていた。
思い返せば、あの日――手紙を渡してから、私たちはよく喧嘩するようになった。
でも、それは不穏な空気じゃない。
ぶつかることでしか言えないことが増えただけ。素直になろうと決めたから、向き合うようになったから、そうなっただけだ。
小説を見せれば凛は容赦なくダメ出しをしてくるし、私は内心ムッとしながらも、それがちょっと嬉しかったりする。
価値観が違って、ぶつかるときもある。
でも、譲ったり、許したりしながら、私たちの関係は少しずつ変わっていった。
言葉にしなくても、きっと、ちゃんと伝わっていたと思う。
ただひとつ。
私が同性愛者だということだけは、まだ凛に言えていないことを除いて――。