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学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵物語〜Mild〜  作者: 笹岡 悠起
学園探偵の誕生秘話?
11/90

第11話 ガバメントは政治

 パパ活騒動の翌日。

 オークション最終日、終了一時間前。


 昨日は刹那(せつな)にとっても永遠(とわ)にとっても散々な一日であった。二人ともその顔にはまだ疲労が色濃く残っているが、そもそものきっかけとも言えるメインイベントは終わっていない。

 結局お金の工面は出来なかったが、オークションの行く末を見守る為、二人は永遠の部屋にいた。


 パソコン前を陣取り、キャスター椅子の上に胡座をかいてくるくると数回転した後、ピタリと止まりモニター画面を睨み付ける刹那。

「入札されるなー、されるなー」手を組んで祈りのポーズでぶつぶつと呟く。

 そのパソコンの持ち主の永遠はというと、自分のベッドに寝転がったままの姿勢でスマホから同じオークション画面をチェックしている。

「なー? このディティクティブってどういう意味なの?」

「もー、邪魔しないでよ。今、念波送ってるんだから。……て言うかこんな簡単な単語も知らないの? バッカねー」

「お前だって俺と大して成績変わんねーだろ。つか終了一時間前(この時点)で入札無いなら大丈夫だろ」

「永遠と一緒にしないでよ。ディティクティブは探偵、チーフは(警察)署長、パイソンは錦蛇、キャバルリーは騎兵隊、シビリアンは市民……、永遠(あんた)よりも沢山英単語知ってるわよ」

「なーんか片寄り感じるけどなぁ」

「……そっか探偵かぁ」刹那がぼそりと小声で呟く。

「なんか言ったか?」

「別にぃ。独り言」


 結局、オークションは入札数ゼロのまま終了し、また一週間後に終了予定で自動再出品された。値引きされての再出品を期待していた刹那はがっかりしたが、ポジティブに考えるなら足りない残り一万円分を工面する猶予が出来たとも言える。


 家に帰った刹那は先ほど閃いた小遣い稼ぎの為の厨二病的アイデアを実現するため、夜通し学園探偵業のビラを作り、一人早朝のコンビニへと向かった。そして財布にあった小銭を全投入してコピーを敢行。その足で朝一の校門へと向かいビラ配りを決行した。

 しかしいくら彼女が美少女とはいえ、無言で無愛想に配る謎のチラシを受け取ってくれるのは主に男子生徒のみ、それもオタク層・俗にいう陰キャと呼ばれるタイプばかり。女子も数人は受け取ってくれたが、上級カーストのギャル達、そして常にそのギャル達に取り入ろうというムーブで動く陽キャ男子たちは当然の如く刹那を無視。中には一旦受け取った後その場で捨てる者や、わざと見えるように紙飛行機にして投げ飛ばす者までいた。

 そして当然と言えば当然なのだが、彼女が用意したビラの半分ほどを配り終わった頃、刹那の事を良く思っていない女生徒からの通報により強面(こわもて)体育教師が彼女の首根っこを掴み職員室へと連行していった。

 この日の朝の珍事。ここまでが、これから刹那が巻き起こす様々な事件の始まり、最初の出来事だった。


——昼休み。

 永遠の提案で弁当は屋上で食べることが多くなった二人。

 クラスに馴染んでいない刹那はもとより、その刹那が永遠の教室に「お弁当食べるわよ!」とやってくるとクラス中の男子の殺気が永遠に向けられてしまうのだ。


「おまえ今朝どうしたんだよ? ギリギリまで待ってたら遅刻しそうになったじゃねーか」いつも刹那と一緒に登校している永遠は、今日もいつも通り自宅で刹那を待っていた。しかしあまりにも遅いので痺れを切らし呼び鈴を鳴らした所、出てきた父親に既にいないことを知らされた。

「じゃじゃーん! 見てよコレ。一昨日の私みたいに学園内でトラブルに巻き込まれる人って他にも出てくると思うのよ。そんな人たちの困り事を私()()が解決して、そんで依頼料も貰ってwin-winって素敵なアイデア思いついたのよ!」少しも悪びれた様子を見せず、四つに折りたたまれたチラシをスカートのポケットから取り出し永遠に渡す。

 受け取ったチラシはほんのり温かく汗で少しだけ湿って柔らかくて、緊張で開く手がやや震えた。しかし拡げたチラシから情緒も色気もない大きな見出しが目に飛び込んできた。

『学園内のトラブル、困り事、なんでもご相談承ります! スクールディティクティブ・刹那&永遠』

「いや、私()()って、何で俺の名前も入ってんの?」如何にも手作りといったビラを見て溜め息をつく。

「いーでしょ? どーせあんた暇なんだし。それに追跡とか尾行のミッションの時は相棒が必要じゃない」

「相ぼっ……。まぁいーけどよ、別にどーでも。んでもまだ一年はタンデム禁止だぜ」

 生まれたその時から続きいつまで続くかわからない刹那との関係性は已然として幼馴染みのまま。それが相棒に変わるのは果たして進展なのか、それとも後退なのか。

 心の一部がむず痒いような恥ずかしいような暖かいような、そんな気がした永遠はこみ上げてくる笑みが漏れてしまわないよう口元を引き締めた。

「だからさぁ、今日の放課後はチラシの回収付き合ってよね、相棒!」

「はぁ?」

 朝方、職員室にてこっぴどく叱られた刹那。彼女は責任を持って、配ったビラの全てを回収、廃棄する様に命じられた。そして永遠が回収作業を手伝わされることは暗黙の了解の様子。

鎌田(あの)先生厳しいって噂だけど、まぁよくそんだけで済んだな。場合によっちゃ反省文モンだろ。やっぱ女子には甘いのかねー」と軽い気持ちで言った永遠だったが、刹那の方はあからさまに嫌な顔をしている。

「あれ、なんかマズいこと言ったか俺?」

「あの先生、なーんか生理的に受け付けないのよね。長ーい説教の間中ずーっと私の胸ばっか見ててさ。いつか懲らしめてやるんだから!」

「いや、今回悪いのお前だろっ」

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