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35 茶会当日


いよいよこの日がやってきた。

茶会──成功させなければ私の明るい夕食がやってこない。


午前中でサラサとエマを母へ紹介するとすごく喜んでくれた。


さっそく客間の装飾をはじめる。絨毯を新調し、壁にそれっぽい絵画を掛ける。飾り気のないテーブルに金糸の刺繍の入った白いテーブルクロスを敷き、その上に深い赤色のテーブルライナーを被せる。天井から吊り下げられた色見石で(とも)るランプや壁掛けランプを基部が真鍮製になっているお高いものに交換した。


午後になり、レオナード皇子やロニ、オポトがやってきた。


どんな人が来るのかと楽しみにしていた母親が固まったのを横目に皇子たちを客間へ案内した。


私とエマ、サラサで必ずひとりは話し相手として席へ座り、残りのふたりで準備していたものを次々と出していく。


まず、アミューズとして色んな美味しいものを食べてきただろう王族や上位貴族に満足してもらうために角煮を白玉で包んだものや魚の出し汁で作ったジュレといった和風テイストを取り入れた品に3人ともとても喜んでくれた。


スープはお吸い物にして、サンドイッチは普通に出す。ケーキスタンドの中段の温料理はかなり手の込んだものを準備した。


揚げだし豆腐……大豆を潰すところから始めて「にがり」が無いので代わりにマグネシウムをたっぷり含んだ天然塩を使い、豆腐を作った。前日から仕込みが必要で一番手がかかったが、揚げ出し豆腐もすごく喜んでくれた。


上段のスイーツは前の週に高級専門店から取り寄せたものをそのまま出したが、バケットのパンやスコーンは自分達でちゃんと準備した。


茶器は有名店の磁器で揃え、茶葉も大陸東方にある山脈から採れたものを使う。容れ方もかなり練習した。


会話も3人で相談しておいたので、客人であるレオナード皇子やロニ、オポトを退屈させなかったと思う。


よく蒸らした茶葉をこしながらベストドロップまでしっかりとって2杯目の紅茶にミルクを多めに入れる。


談笑していると、玄関の方が騒がしくなった。しばらくすると呼び止める母を振り切って父が入ってきた。


「やあ、君たち娘がいつも世話になってるね」

「お邪魔していますランバート卿」

「いやいやウチの娘もこんな好青年を連れてくるなんて年甲斐もなく興奮してるよ」


レオナード皇子が席を立つと他のふたりもそれに倣い、私の父親へ挨拶をする。父親はニコニコしているが、なんだか皇子が混じっているって気づいてなさそう。


「君たちは平民の子かな? なーに構わないよ。我が家も似たようなモンだ。ワーハッハッハッ」


父~ッ、お願いだからこれ以上余計なことを言わないで……。


「レオナード・デマンティウスと申します。お見知りおきを」

「ロニ・ゴットフリートです」

「オポト・カナカナです。皇子殿下の護衛をしています」

「レオナード君にロニ君、オポト君かぁ、いやーレオナード皇子みたいな名前……え……皇子殿下?」


父親はここでようやく私をみた。うなずいてあげる。


「ひゅぅぅ!」

「お父さまっ!?」


聞いたことのない変な悲鳴をあげて父がその場で失神してしまった。


 ✜


「皆さん、お騒がせしてすみません」

「ランバート卿は大丈夫でしたか?」

「ええ、シリカと奥の部屋へ寝かせてきました。」


母親が笑って客人と向き合う。


「あの人も嬉しかったんだと思います」


笑って話す母親はそっと私の方を眺める。


私は小さい頃からとにかく手のかからない子だった。同年代の子と仲良くなろうともせず、ひたすら難しい本を読み、魔法の鍛錬に励む日々。このまま誰とも仲良くなれず、婚期まで逃すような子になったらどうしようかと心配していたそうだ。


「私たち夫婦はこの子をちゃんと幸せにしてくれる方なら誰でも構わないのです」


平民でも異国の文化の違うひとでも構わない、笑顔が絶えない温かい家庭であればそれでいい。だけど幸せにできないひとであればお断りだと告げた。


「それがたとえ王族であっても、です」

「お母さま!」

「たとえばの話をしてるだけです。皇子殿下がそんな方にはこれっぽっちもみえませんから」


母親って強いな……私がもし前世で子どもが無事生まれて一緒に暮らせていたら母のように強い女性になれただろうか?


ロニが「俺も忘れてもらっては困りますよ? お母さま」と言って皆で笑っている。


アハハッ……ハ……冗談だよね?




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