24 別荘襲撃
レッドホーネット……ハチ型の魔物で山奥の森にでも行かないと遭遇しないようなレアモンスターがなぜこんな人里に現れたのか?
レストランの厨房へ避難するよう指示を受けたが、ガラスを割って1匹のレッドホーネットが厨房へと突撃して奥の方で悲鳴が聞こえる。
「ちょっと様子をみてくる。サラサ、お店に光の結界を張れる?」
「うん、任せて」
厨房に入ったレッドホーネットに対応しようとミラノとウェイクが向かった。こんな狭いところで襲われたら大きな魔法が使えないので危ない。
外の状況を確認してみないことにはどう対処していいかわからない。エマの制止を振り切り外へ飛び出した。皆、建物のなかに避難しているので人通りはない。
「まったくお転婆なお嬢さんだな」
「まあそこがシリカの魅力なんだけどね」
私の背中を追ってきた者がいた。ロニが溜息をつき、レオナード皇子がニコリと笑顔をみせた。
まあこのふたりなら何とかなるだろう。
私はその辺を飛び回るレッドホーネットを水魔法で撃ち落としながら、より多くいる方向へと走る。正面は私の魔法で葬り、左右や後方はレオナード皇子とロニに任せる。
レオナード皇子は銃光剣と磁気盾という何でも斬れる剣とあらゆるものを防ぐ盾を具現化する魔法に特化していて、魔法闘技大会では反則級に指定されて使用を封じられているそうだ。実戦で目の当たりにすると反則に指定された理由にうなずける。
ロニ・ゴッドフリートはゲームのなかでもっともバランスの取れた高パフォーマンスのキャラで有名だった。
土、岩属性の魔法が得意で鉄壁の守備を誇る上に攻撃力の高い中距離魔法を持っている。その上、近接戦闘もできるので、ひとりで何役もこなせるオールマイティーなスペックを備えている。
頼んでもないのに死角を上手く岩魔法で潰してくれるので、私は前方の敵の撃破に集中できた。
もしかして、もしかするかも……。
レッドホーネットの多い方向へ進んでいるとエマの別荘……私達の滞在している建物に集まっていた。
この数は私の魔法では捌ききれない。いつも背負っているバックパックの中にいるブリキの人形……賢者アールグレイに一斉掃討可能な魔法をお願いした。
動く鉄の沼から鉄騎鳥──かつて幻獣種ニオギ・ヒュドラの数多の首を根こそぎ吹き飛ばしたアールグレイのオリジナル魔法が発動する。
弾丸よりも速く飛翔する鉄の鳥が数百羽、空を射抜くと周囲に動く魔物は消え、大量の黄色の色見石が地面に散らばっていた。
この分だと中にひとり留守番していたキャムは……。
別荘の内部に入ると中央の天井の無い部分の魔法の障壁が壊れて動かなくなっていた。ど真ん中にレッドホーネットの女王蜂とみられる個体が残っていたので、レオナード皇子とロニが連携して撃破した。
キャムの姿を探す。クズで救いようのない人間だが、こんな形で死んでもらっては困る。部屋の扉は開け放たれていて、中で倒れているキャムをみつけた。
✜
「なんとか間に合いました」
十数分後、サラサの光魔法でキャムのカラダの毒を完全に消し去り、衰弱した体力を回復させる魔法で処置し、一命を取り留めた。
サラサが別荘へ到着するまでの間、私が持っている毒消し草を使ったが、効果が不十分だったがなんとか時間稼ぎはできた。
私たち魔法高等学院の生徒は入学式の翌日に対毒、対麻痺の集団接種を受けていたので抗体を獲得していたのも大きかったと思う。毒にはいろんな種類があるが、ブレンドされたワクチンなのでけっして無駄ではなかった。一般のひとがレッドホーネットの毒針に刺されたらおそらく数分も持たなかったかもしれない。
幸いラトエの街で他に毒針に刺されたひとはいなかった。少し意図的な動きを感じたが、まさか魔物が自分達の意思で行動したとは考えにくいので突発的な魔物の襲来ということで片付きそうだ。




