箱に閉まって深く深く沈めて
「気持ち悪い」
そう城内さんから言われたわけではない。でも、俺の中には俺の3年間の片想いは彼女にとって気持ち悪いものだったのだと心に冷たく氷の塊のように残った。
しばらくは青春だとか初恋だとか高校だとか彼女を連想するような言葉ひとつで心が冷えて固まってそれが広がっていくような凍えるような思いをした。
俺の中では、例えば嫌いな奴からボタンを渡されたとしても、困ったなとか言いながらそのボタンを閉まっておいてくれるような人であった。それも思い違いであったのかとか考え出すといろいろとしんどくてとうとう俺は全部箱に閉まって深く深く二度と浮かび上がってこないように沈める事にした。
俺の高校時代は勉強とバスケばかりしていた3年間に記憶の中で次第に塗り変えていった。
大学は大変だった。自分のバスケセンスに落ち込んだり、度々ケガにもおそわれた。バスケでヘトヘトな上に、教員養成の科目も履修して、バイトもして。
バイトは塾にした。バスケに関わって生きていきたい。俺が子どもの頃所属していたバスケチームの様な指導を学校でも受けさせてやりたい。そんな自分の能力と望みを考えると、教員になって指導をしていくという道が1番自然だった。教員採用試験に受かるためには壇上で1時間をまとめ上げる能力が必要だった。