報告に
第二ボタンを渡したので、俺的には3年の想いは遂げたと思った。幾分すっきりした感じで合格発表に挑み、喜びを高校に行って報告した。合格札にTU大学体育学科安積廣智と書き、合格者掲示板に掛けるついでに先に発表があったらしい彼女の合格も確認した。
彼女の自筆のその札を眺めながら彼女に会えた日は1日幸せだった、それが活力だったなと三年を噛み締めた。これからは会うのは難しいけど、近くだし、交流を持っている大学同士だからまた機会があるかもしれないしと未練がましく希望を持ってみた。いざ全然別の道を行くと思うと寂しかった。
他にも合格者札を持った生徒がちらほらと現れ始めたので、帰る事にした。
「安積だよな。」
男の声に呼びかけられて振り返った。俺とあまり身長が変わらなくて、名前は知らないが体育祭のリレーで対決したことがある足の速い奴だった気がした。
そいつは飴でも渡すかの様に俺に向かって手を伸ばしてきた。反射的に受け取る形で手を出すと俺の手のひらにボタンがコロンと落ちてきた。
「お前のだよ。城内がいらないって言ってたから俺が返してやるって受け取っておいた。」
あまりにびっくりした顔をしたんだろう。そりゃそうだ。無理矢理渡したとはいえ返されるという未来は予測していなかった。
「今日会えて良かったよ。俺が持ってても気持ち悪かったし。」
一言も返せず突っ立ってる俺を見て満足そうな笑みを浮かべたそいつは、背を向けると職員室の方へ行くのか、階段を登っていった。