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卒業式

 TU大学の実技試験は学科試験の次の日ちょうど高校の卒業式予行の日だった。大学の2次試験が2日に渡る所は、卒業式の予行には出れない、今年はそんな忙しない2月だった。その日は目一杯走りバスケをし、自分を出す事に真剣だった。


 土日明けての3月1日、卒業式の日の朝、初めて皆は卒業アルバムを予行の日に渡され余白にメッセージを書きあっていた事を知った。俺は書いてあげる事は出来なかったけど、友人達は群がって書いてくれて嬉しかった。ふとこれを理由に3組の柿岡を訪ねてまた城内さんの姿を見てこようと思い立った。まだ式までに時間がある。


「あれ、お前今頃アルバムかよ〜」


「予行の日は実技だったんだ。仕方ないだろ。書いてくれよ。」


文句を言いながら書いてくれる柿岡から目を離して彼女の姿を探す。前の方の自分の席で静かに読書をしていた。もう見納めだ。そう思っていたら、書きおえた柿岡の盛大なため息に我に帰った。


「お前さ、そのままで良いの?俺、本当はこういうの嫌いなんだけどなー」


わけの分からない事を呟くと柿岡は突然、


「城内ーおーい安積に書いてやってー受験で今日アルバムもらったらしいからさー」


その大声に振り向いた彼女に向かって俺のアルバムをブンブンと柿岡は振って見せた。そしてびっくりして動きの止まった俺を尻目に奴は彼女の元にさっさとアルバムを持っていってしまった。彼女はちらっと俺を見遣ると幾分躊躇った(ためらった)ようだが、マジックをとって書き始めた。そんな姿も可愛い。


 柿岡は突っ立ったまま彼女を凝視している俺の元に戻ると俺の背中をかなり痛くたたきながら


「お礼ぐらい自分で言ってこいよ」


押し出してきた。そろそろと彼女の席に行くと書き終えたらしくマジックとアルバムを


「ハイっ」


と破壊力抜群の上目遣いで返してきた。


『1年4組の時はいろいろ助けてくれてありがとうございました。お互い頑張りましょうね。城内 比呂』


当たり障りない。当たり障りない。分かってる。でも、これが最後のチャンスだと思ってしまった。彼女はアルバムを持っていないから何かを書いて残す事もできない。ここでその辺の紙に書くのも変だし、でも俺の3年間を何かの形で渡したかった。


 切羽詰まった俺は第二ボタンをもぎ取り、びっくりしている彼女の手に握らせてお辞儀をして逃げた。実技試験最高得点の脚力で。

2月25日が国立大学前期試験日で、26日も東京大学とか実技がある所など2日に渡る試験を行う所は試験日。この年は27日、28日が土日で、3月1日を卒業式と決めている高校としては、大体の生徒が分かっていれば良いテイで26日に卒業式の予行をしてしまった。そんな感じです。卒業式アルバムは重いので、その日に配られてしまい、来れなかった安積くんは盛りだくさんな卒業式で。ここまで作中に入れ込むとしつこいかと。

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