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席替えとお弁当がうどん

「三ヶ月に一度しか席替えをしない。」と担任が宣言しているうちのクラスでも、夏休み明けにようやく席替えが行われて、俺は城内さんの斜め後ろになった。


 休み時間になると彼女はよく昼寝をしていた。目を閉じると長いまつ毛が色白の顔に影を作り無防備な寝顔がよく見えた。先生が教室に入って来ても気づかない時など起こすべきか勝手に悩み、彼女の笑顔をみると幸せな気持ちになった。


 九月中頃に体育祭となった。A1高校の体育祭は親が来るような中学までのとは違って平日2日に渡って球技や綱引き、リレー、大縄跳び、玉入れなどをクラス対抗で戦うものだった。もちろん、俺はバスケに出場して学年優勝をもぎとった。


「バスケをしている姿がカッコ良い。」


俺のそんな噂がちらほら流れはじめて女子にやたら話しかけられるようになった。カッコ良いと城内さんも思ってくれてたら頑張った甲斐があったのだけど。


 体育祭が済むと秋の新人戦が始まった。公欠が出始め空席ができるようになり誰が何部かそれで分かったりして。俺の前と横はバトミントン部だったらしく、一緒に空席となった。すると、英語のグループ学習の時などは城内さんと2人きりになった。


 城内さんは英語は苦手だといい、語彙力不足を機転で乗り切ってる感じが意外でからかうとフグみたいに頬が膨らんだりするのまで可愛かった。余った時間は提出課題の下書きプリントの余白で、英語絵まじり筆雑談をして遊んでいた。普段は静かな彼女が授業だとこんなに打ち解けてくれるとは、驚きだった。


 台風が来て雨が降って彼女が、五日学校を休んだ。土日を挟んで一週間振りに登校してきた彼女は咳をしているしお弁当はスープジャーにうどんだ。体育も見学していた。まだ本調子じゃ無いのに登校してきた様子だった。部活は流石に休んで下校しているようだ。そんな状態が更に1週間も続いたと思ったらおかしな事が始まった。


 休み時間になると、彼女の周りに吹奏楽部員達が集まり、ずっと部活の話をするのだ。最初は休んでいる彼女を心配して集まっているのかと様子を教えているのかと呑気にそう思ってた。ところが、トイレに行って戻ると隣のクラスの女子までいて、席が占拠されてしまった。どうしようかと思っていたら、楽しくなったのか彼女達の声が大きくなって否が応でも耳に入った内容にびっくりした。


「いいなー辞められる人は。私も辞めたい。」


「2週間も部活休んでるかと思ったら辞めてたの?」


「後に残った人がどんなに大変か分かってるのかしら?まあ、戻って来られてもね、困るけど。」


「腕痛めたとか、過敏性腸症候群?喘息とか病名並べりゃいいとか思ってんだ。仮病でしょ。」


「あー私も辞めたい!いいなー辞めれて!大変だからなー吹部」


その輪の中で城内さんは小さくなって俯いていた。彼女に話しかけるのではなく、彼女の悪口をずっと周りで言っているのだ。頭の中で何か切れた音がした。


「うっさいな!そんなに辞めたいなら、お前ら全員さっさと辞めちまえ!やってること最低だ!二度とここに来んな!」


大声でその場にいた女子達に怒鳴り散らしていた。多分睨んでもいたと思う。体調崩して部活に行けなくなった子になんて事してんだ。腹が立って仕方なかった。申し訳ないが吹奏楽部のような文化部は部活でケガをするなんて事は稀ではないか?バスケ部なんかしょちゅうだ。痛いファウルを受ける時もある。下手すると骨折するし靭帯を痛めるのもキツい。俺は前歯が俺の歯じゃない。


 自分の身体が言う事きかなくて練習も試合も出来ない辛さを知らないんだろうなというそんな思いと城内さんに対する酷い態度に激怒してしまったのだ。


 吹奏楽部女子達は急に黙ると蜘蛛の子を散らすように去っていった。それから俺の周りに来る事は無かったから城内さんが俺の近くに座っているうちは大丈夫な様だった。彼女のお弁当はずっとうどんだった。やはり体調不良により吹奏楽部を退部した事や、先輩からパワハラやいじめを受けていた事が原因だとか噂できいて居た堪れなかった。




 

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