化け物〜安積廣智目線
「みっともないとこ見せた。ごめん。」
俺に肩を掴まれて歩いてる形になってしまっている城内さんに謝った。由美さんの連絡はうけつけないようにしていたからかえって悪かったのだろうか。プライドの高い彼女が、別れたのに会いに来るともあんな事をしてくるとも思ってなかった。
病室に着くと、俺をベッドに座らせ向き直った城内さんは仕事の顔をしていた。
「安積さん。申し訳ありませんが、今回の件は家族と担当医、病院の方と共有させて頂きます。あの、はっきり言って危ないです。あの人。」
城内さんはすぐに動いたようだった。心配した両親が揃って見舞いに来て病院側と話し合って由美さんへの対応を考える事になった。必要に応じて弁護士、警察も視野に入れてると言われて驚いた。
大怪我、記憶障害、心因性失声症を患った俺へのハラスメントに当るそう判断された。
それから、城内さんはまた俺が話さなくなるんじゃないかと心配してなのか、度々同級生の体で話しかけてくれた。SNSも送ってくれた。
入院は延びてしまった。
「右手がない頭に傷のある化け物、加工をして映像に映れ」
それが四年付き合った彼女から今の俺へ対する率直な意見だというのはシミのように心に残った。そのシミがこれから外に出れば、どれだけの好奇の目を向けられ、非難されるであろうかという事を意識させた。覚悟が必要なのだと思った。それでも毎日を生きていくしかないのだから。




