同級生柿岡の見舞い〜安積廣智目線
柿岡くんは3話と5話と6話に出てきます。
土日は城内さんは出勤しない。リハビリメニューを自分でこなしてあと何回彼女に会えるだろうと考えたりする。
新聞にも取り上げられた事故だけど、俺の状態を心配した家族が入院先などを秘密にしたからあまりお見舞いなどはない。SNSも家族以外をブロックするなど随分と人を絶った生活をしてきた。
そろそろそんな訳にもいかないかと数日前からポツポツと解除を始めた。すると、高校のバスケ部以来それなりに付き合いの続いている柿岡から派手に泣いているスタンプが入った。あっ面倒臭い。そう思ったけど既に遅しでとうとう現れてしまった。
「安積〜。俺、いつか見舞いにこれると思って千羽鶴折ってきた!」
いや、要らない。ともいえないし、柿岡と千羽鶴。この組み合わせにびっくりだ。
「ありがとう。お前が折り紙とか新鮮だ。」
「高校の時、先輩が怪我してバスケ部で千羽鶴折ったじゃん。あん時、俺、鶴折れなくて席近くの女子に教わったんだぜ。それ以来得意よ。」
久しぶりの柿岡は記憶通りの童顔のままだが、どことなくやっぱり老けていて笑えた。
「しばらくブロックしてて悪かったな。いろいろ面倒だったんだ。」
一応謝っておく。
「俺はお前の弟から説明されてたから、俺の仲間内にはそれとなく伝えた。皆心配はしてるけど、そっとしておくのが大事なのもわかってるから。千羽鶴、実は俺1人で作った訳じゃ無いんだぜ。細田とか、バスケ部連中の想いも入ってて重いぜ。」
少し寒い被せをしてくる所はいつもの柿岡らしかった。もうほとんど社会人になったバスケ部連中が千羽鶴を折ってるとか想像すると、一瞬でもいらないと思って悪かったなとちょっと反省した。
「記憶が混乱してるって聞いて、俺との始まりも全部忘れてるかもって思って俺と安積のアルバムを作ったんだ。で、送信してやろうと思ったんだけど、解説もいるかと思って。」
所々気持ち悪い感じのセリフが混ざっているが、柿岡は至ってノーマルで彼女持ちだ。
促されてスマホを見ると大量に写真が入ったアルバムが贈られていた。
「で、おすすめが」
1枚につきやたらに丁寧な解説が始まった。記憶は大分落ち着いたと告げるべきかと思いつつ、柿岡目線の解説も面白かった。
「これ、高三の時の体育祭な。俺のクラスとお前のクラスのバスケの試合の写真。ほらっ、ここに俺を応援している可愛い城内が」
高校時代の城内さんだった。長めのポニーテールとクラスTシャツ姿が可愛い。城内さんがいるから頑張りすぎて柿岡のチームを負かせてしまってかえって城内さんは喜ばないっていう。カッコいい所を見せたくても同じクラスじゃないと難しいんだよな。
「そういやさ、この病院って城内の大学のだろ?いたりする?」
隠すわけにもいかないからうなづくと、
「え?俺、今日会えたりする?あいつクラスの同窓会にも姿現せねーし、写真撮ってクラスSNSに回したろうか」
柿岡が急に身だしなみを整え始めるから
「今日は休みみたいだよ。写真可哀想だろ?彼女写真うつるの嫌いじゃなかった?」
とやんわりと嗜めた。するとちょっとため息を柿岡がこぼしながら言った。
「もしかして、相変わらず、後方支援してんの?大学ん時の彼女とは別れたって弟くんが心配してた。俺はもう、よくわからないんだけどさ。正解は。ただ、まあ、俺は城内と同じクラスだったからの情報網があるから、教えとくけどさ。」
前置き長く、もったいぶって柿岡は続けた。
「城内、大学時代彼氏いなかったらしいぜ。お前知らないかもしれないけど、俺と城内と同じクラスの硬式野球部のデカい岩間。奴が城内と同じ大学の理学療法士科にいてずっとボディーガードしてたんだって。岩間倒さないと城内と付き合えない的な。城内は天然のまま岩間と付き合うわけでもなく、ずーっと清らかに保存されて、仕事漬けって噂だよ。」
そう聞いてもしかしてと思った。この前病院で城内さんがハイタッチしていた男は。
「柿岡、岩間の写真ってある?顔とか特徴知りたいんだけど。」




