困った時は〜城内比呂目線
流石に1人では抱えこめなくなり進退窮まった。大学からの友人で同じ作業療法士の桜野麻希ちゃんに相談をすることにした。私の安積さんへの感情はなんなのかとか岩間くんはどうしようとか彼女なら良いアドバイスをしてくれると期待して。
「あのさ、比呂ちゃん。土曜日の朝のファーストフードで社会人が恋バナって変じゃない?」
麻希ちゃんはポテトを食べながら場所に文句を言った。
「いや、待ち合わせ場所にしただけで、久しぶり〜ここのポテトが食べたいって麻希ちゃんが」
反論しないと。
「まあ、朝ってのもなー。午後から買い物したかったのよ。私。比呂ちゃんに服選んで貰おうかなって。人選ミスだわ。簡単な選択もできないなんて。」
コーラをズビズビ飲みながら、ぶつぶつと文句を言っている。
「あのね、要はゴツ間かそのボタン男かどっちを選択するかって話でしょ?」
「あのね、麻希ちゃん、ゴツ間って?てか選ぶって言うか。」
確かに岩間くんは大きいけど、そのあだ名は初耳だ。
「あのゴツ間、比呂ちゃん狙いだったかー。盲点だったわ。あのね、ゴツ間、ああ見えて女子人気高かったのよ。すぐ脱ぐから、アレだけど、あの筋肉に触りたい、抱かれたいって女子がね、いるわけよ。看護学科なんて男子少なかったから、理学を漁るわけよ。顔は平凡なゴツ間でもあの筋肉でね、目がキラキラーって。」
またここでポテトをもぐもぐと麻希ちゃんは食べる。そっか岩間くん人気だったか。顔と性格が無害だったから気付かなかった。
「勤務先の叔父さんが経営してる会社もそこそこ有名だし、有望株よ。それが、手も握ってない相手に同棲だの結婚だの、それはびっくり。でも比呂ちゃんならアリかー仕方ない。」
私ならアリってそりゃ、鈍いみたいですがね。
「かたや、ボタン男。患者って事は麻痺?事故?病気?あんたが選ばれたとすると義肢がらみか音楽療法が必要な病みの方?」
「守秘義務だから私は何も言って無いー」
さぐりが的確すぎてドキッとした。
「比呂ちゃん義肢装具学得意だったじゃない。義肢装具士に方向転換しちゃうかもって思ったもん。音楽療法サークルに入ってたし。卒論だってさー。ま、それは置いといて。ボタン男は仕事復帰もいつになるかわからないでしょうし、作業療法士に否定的な家族?腹立つ。」
ポテトをいじめながら麻希ちゃんは
「別れたかどうか不明の彼女がいる。そりゃ、ボタンをくれた時は比呂ちゃんが好きだったかもしれないけど、その後彼女作ってるし今はあんたを好きかは分からないじゃない?どうしてボタン男が気になっちゃうかなー比呂ちゃん。」
ハァ〜と盛大にため息をついた。
「患者さんが自分のリハビリで回復に向かう、手応えがある時はそりゃ嬉しいけど、だからって気になってたら身体いくらあっても足りないわよ。ま、私は高齢者系だからあり得ないけど。」
そしてポテトを食べ終わりコーラを飲むと、麻希ちゃんは付け足した。
「ボタン男の写真見たい。ない?」
スマホの奥の奥にある高1の文化祭での集合写真の安積さんを見せると麻希ちゃんは
「ちっちゃくて見づらい。やーこれ比呂ちゃん?隣に立ってんじゃん。でも他の男子に比べれば良い男の片鱗が。ってこれしか無いの?何年前よ。」
と突っ込み、
「これさ、天秤にかけてどっちが安全かしらなんて考えたらゴツ間よ。だけど、比呂ちゃん、気になってしかたないんでしょ、ボタン男が。そしたら自分が納得できるまで想ってみるしかないじゃん。でも略奪はだめよ、彼女いたら切り替えていこう!」
って言ってくれた。
「岩間くんはどうしたら良い?」
「話すしかないでしょ。気になる人がいるって。で、ギクシャクしたって仕方ないじゃない。比呂ちゃんに二股は無理よ。大体、ゴツ間も覚悟の上で動いたはずよ。」
少しほっとしてポテトを食べ始めた。気づくと店内には家族連れが増え始めていた。お昼が近づいてきたようだ。
「麻希ちゃん、服見て少しお腹減らしてから遅めにランチしようか。」
「だね。比呂ちゃんも大人の色気的な服買ってボタン男に見せてやったら?あ、彼女はどうなったか分かってからだからね。」
「患者さんだから会う時は大体ユニホームだよ。」
安積さんに私の色気なんか通用するか甚だ疑問だ。かなりモテてきただろうし。
「え〜じゃあ、髪飾りとか。アイメイクとか。仕事中でもわかる変化を目指そう!」
麻希ちゃんはポジティブだ。