岩間くんと夕食を〜城内比呂目線
岩間くんも私も車が大事な足だ。明日もお互い仕事だ。でも大学近くはつまらない。結局、大学時代岩間くんがバイトしていたスポーツ用品店の斜向かいの定食屋さんにお互い別々に自分の車で向かった。
夜はお酒もあるという事だが、そこはおすすめ魚定食とデザートにする。今日は金目鯛の煮付け!
「美味しい!!」
「だろ、バイトの時よく寄ったんだ。パンフ、ミネコ教授が受け取ってくれて助かったよ。俺未だに怖くて。ここ俺奢るからな。」
「ご馳走になります。」
「ん。」
あんまり2人きりでご飯を食べに行った事は無い。恩田さんとか大学の仲間とか一緒にならよく行くけど。ちょっと珍しい。岩間くんはお酒の席でも嗜む程度にしか飲まないでいつも隅で雰囲気壊さないようにニコニコ笑っているイメージだ。
私よりは食べるのが早くて、デザートをちまちま食べている私の斜向かいで烏龍茶を飲みながら、
「俺さ、実家出て一人暮らしする事になった。」
と報告してきた。岩間くんも私も中学は違うが実家から最寄りの高校、大学と進み岩間くんは親戚の会社で私は大学付属病院勤務だからずっと実家暮らしだ。
「それは、それは。自由の身におなりで。私はまだまだ実家だわ。」
「結婚して家を出てた兄貴が、子どもができて大変になったとか言って帰ってきたんだ。ゆくゆくは二世帯にリフォームするとかいって俺は出てけって言われた。」
私はまだ追い出されなくて良かったとか思いながらデザートの抹茶プリンを堪能していると、
「だから、城内、俺と一緒に住まない?」
爆弾が投下され、固まった。岩間くんを見るといたって平然としていらっしゃる。
「それは、ルームシェア的な?でも私まだ実家追い出されてないし。」
とりあえず勘違いはしないように返してみた。
「いや、同棲的な。結婚前提の付き合い的な。」
真面目な顔して答えてくる。こちらが慌てた。
「待って。待って。整理しよう。私と岩間くんはそういう感じでいたことは無かったよね?」
抹茶プリンはとりあえずおいておこう。
岩間くんはうなづくと
「残念ながら。城内は何言っても今までスルスル逃げるから。いまだってルームシェアとか。俺達一応お年頃の男女ね?」
なんか責められている。いや、しかし心当たりが全然無く。
「だからっていきなりの同棲はね?いや無いわ。無い。」
「今直ぐ、無いとか。とりあえず、俺と恋愛的に付き合うの考えてみて。即答で断るとかやめて。これでもここまで告るのに俺、5年くらいかけてる。」
そのセリフが1番恥ずかしかったのか岩間くんの顔が赤くなっていた。いや、なんか私も恥ずかしい。でも恋愛的と言われて私の中に浮かんできたのは何故か安積さんの声を出して笑ったあの顔だったのだ。