『安積』「城内」〜城内比呂目線
『安積のスマホに書かれたセリフ』「城内のセリフ」になります。
安積さんの目力に負けて大人しく安積さんのお財布から、側の自販機で私用にミルクティーを彼には無糖コーヒーを買った。安積さんは股に缶コーヒーを挟むと器用に左手でプルタブを開けていた。右手の代わりに普段から足を多用しているのを見かけていたが、やはりだ。
話せないから人に頼むのが面倒くさくなって工夫する様になったみたいだ。彼は、小さいそのコーヒーを私より先に飲み終わるとゴミ箱に捨てに行きちびちびとミルクティーを味わっている私を見やり、隣に座った。そしてスマホを打ち始めた。
『目、泣いた?』
「これでも、頑張って誤魔化したんですよ。よく気づきましたね。安積さん。」
気づいてもスルーして欲しかったな。なんて言えなくてそんな風に返した。
『敬語、変な感じする。一応、元同級生』
「あ、同級生として話します?」
安積さんを見上げるとうなづいていた。ちょっと嬉しくなってしまって、慌てて手元のミルクティーへと視線を落とした。顔が赤くなってないか心配だ。同級生と安積さんが言ってきたのは初めてだった。あまりに気配が無いから私の存在は安積さんの記憶の彼方に飛んでいってしまったかと秘かに思っていたぐらいだ。ちょいちょいとスマホの角で手をつつかれ画面を見ると、
『俺も夢見が悪くて泣きすぎて目が腫れて、びっくりしたから。』
会話の続きがあった。安積さんの悪夢。それは睡眠薬を処方されるほどだったとカルテから推察された。
「泣いちゃうよね。」
思わず、そんな言葉が漏れた。
『子どもの頃、出先で泣くと母がよく自販機の紙パックジュース買ってくれた。』
安積さんの指が弾くリズムに覚えが。
「それは、もしやあのキャラものの音楽が流れる自販機?」
安積さんを思わず見上げるとニヤッとしていた。だから、無理矢理自販機で奢ってくれたんだなと思った。子ども扱いかと思わずプクッと頬を膨らましてるとスマホ画面には、
『それ、高校のにもあった。』
とあり、私の手元のミルクティー缶を安積さんのスマホは差していた。
「うん。結構人気だから無い時はカフェオレにしてた。」
『甘い。俺は甘いのだったら炭酸系。』
「運動部はスポーツドリンクかプロテインの2択のイメージがあるんだけど。」
『偏見。部活以外の時は普通。』
「硬式野球部とかはハンバーガー系を食べちゃダメだとか食事制限あったでしょ?バスケ部は無かったの?」
『ない。筋トレはキツイ。』
『無敵のマッスる』
「無敵のマッスルボディが統べる筋活部!」
それは高校で出す部活の紹介文でバスケ部の伝統別名だった。おかげで、バスケ部は筋骨隆々のイメージだった。案の定今でも安積さんはいわゆる細マッチョって感じだ。それより何より私はびっくりしたのだ。安積さんが打つのと私が言うのが被ったのが楽しかったのか安積さんが笑っていたのだ。
「安積さん、声出て笑ってるよ?」
そう、声を出して。