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彼女の演奏

 音楽の授業で滝廉太郎の「花」の歌のテストをやることになった。


 そもそもこの高校の芸術科目は書道か音楽しか選択肢がなかった。小学校時代の習字道具何処にしまったっけ?音楽にしておくか。で選んだくらいだからさして歌も上手くなければ楽器の心得もない。


 先にテストを受けて帰ってきた青木が、


「マズイマズイ。伴奏が城内(きうち)さんだ!俺の音痴がバレたー」


頭を抱えて帰ってきた。今は赤坂がテスト中だ。


「伴奏、先生じゃなかったのか?」


「先生はじっくり聴いて点数付けてるー、城内さんピアノ上手いー。」


そうこうしているうちに俺の番になってテスト会場になっている音楽準備室に行くと、キーボードの前に城内さんが座っており音楽の先生が


「出席番号、名前をどうぞ」 


と言ってきた。


「3番、安積廣智あずみひろさとです。」


「じゃ、城内さん始めて」


滑らかに「花」の前奏がはじまった。



 俺は県民ならだれでも田舎だと知ってるような所に住んでいる。地元の中学校を出てバスの便が良かった(直通のバスがある。40分かかるけど…)県内有数の進学校のA1高校に通っていた。少年バスケチームにずっと属していたから、そこそこ強豪と言われているバスケ部に入部した。一年生に課される筋トレはキツかったけど、粗いプレイにも吹っ飛ばない三年生の身体をみると頑張るしかなかった。


 そんな俺にとって音楽は1番手を抜く授業で、それでもこのテストの時ばかりは練習しておくんだったと自分を恥じた。音を外し気味で歌詞もうろ覚えの俺の歌でも城内さんが手を抜かずに合わせて綺麗に弾いてくれたからだ。優しい伴奏だった。



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